物語2

光の柱が立つ南の空の雲は
銀色のくじらが跳ねたような形を成し
鏡面の輝きの海は 空に続いていく
船乗り達は帆を張り 光の柱の梺まで船を走らせ銀色の魚を追う 海藻で編んだ網は潮に強く 流れ着いた小魚がかかるので
船乗り達は餌を持たずに漁に出る

東の大地では 緑の風が吹くと
村の外れで今朝生み落とされた卵が収穫され
大小様々な灰白色の卵は機械小屋に集められる
風熱で膨らんだ殻は飴細工のように薄く軽くなり
中身を取り出した後は気球を燃やす燃料となる

袋に詰めた枇杷の葉を持って西の村の外から来た籠売りに付いていくと 藁と紐でできた筵が敷いてある
一時ばかり座って枇杷を広げると 葉が乾く頃には水煙草や水差しを持った者達が集まり しげしげと葉を眺めては数枚あるいは袋の半分ごと買って行く

北にそびえ立つ展望台を目印に
光柱が当たる岩に生えるという光の穂を掲げると
光が共鳴して展望台から岬の灯台に光が送られる
灯台守は光がたまると夕べから夜にかけ純度の高い光で
海の一点を照らし また光の柱を作り出す
余った光は灰色のヘビを見下ろす甲冑に送られ
人々が休む頃に星と夜空を照らし続ける

一番鳥が鳴く頃 西の民達が起き出し
藁と紐でできた筵を東の機械小屋と必要な場所に敷き始める
日中の地熱を利用して風車が回り出すと
風熱で筵が温められていく
緑の大地が広がる東で風の気配を聞いた鳥達は
そわそわと卵を産む準備をする
鳥と大地の声を聞いた枇杷の葉が開き始めると
枇杷の香りに刺激され桑の実が熟すのだ

この村は循環して生きている

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