物語3

銀色の天幕が張られオーロラが波打つ
北の最果てで狩人達が空に向かって矢を放つ
弦をはじく音に雪原で眠る狼が遠吠えを始める
矢じりの水晶が輝きながら 山や狼の頭上を
速度を早めて走っていく
空気が震え一番高い杉の木を越えて
矢じりがオーロラに近づくと キンと高い音を立てて
水晶が虹色の火花を散らす
放たれた矢が弧を描き流れ星となって天に吸い込まれていく

虹色の火花のかけらが凍った湖に落ちると
落ちたところの分厚い氷は溶け湖の下に沈んでいく
湖の底で眠っていた魚達がかけらを飲み込むと
虹色に光る魚の水晶ランタンができる
かけらの周りの光だけ飲み込んだ魚は
その日だけ飛び魚のように空を翔べるけど
大きな網を持った漁師に捕まることもある

翌朝虹色の魚の水晶ランタンが見つかると
村の子ども達が大人を呼んで 湖からランタンを吊り上げる
家に持ち帰ればガス燈を使わずともしばらくは明るさが持つ町で売れば結構な高値で売れるが
虹色の魚の水晶ランタンは珍しいので村の貴重な光源となる
ランタンの光が切れるのは次に虹色の魚が作られる頃で
光が終わるとただの魚の形の水晶となる
役目を終えた水晶は砕かれ 薪と一緒に釜戸に放られる
そうすれば火が長持ちすることを村人は知っている
最果てでの暮らしは ここを訪れた旅人しか知らない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?