物語1

縦横無尽に横たわる 灰色のヘビ
その硬い背中には 草木も生えることなく
農夫達はヘビの背から逸れた大地に
畑を作ることを許されている
兵士たちは長い間ヘビを見下ろすように立ち
中には老いて傾いた者が一人、二人
それでも列を乱すことなく
銅褐色と銀色の甲冑の隊列は続く

山を掻き分け農夫達の村へ着くと
陽が昇ると同時に朝が始まり
朝露に濡れた桑の実を摘んではせっせとジャムを作る
赤いホーローいっぱいの実は砂糖で煮詰められ
その日一番の祈りと喜びを詰めて封をされる
全ての実が詰め終わると 小分けにした瓶は
町の市場に並べられる

隣町で仕入れた山盛りのいちごも
火をくべた釜戸で甘い匂いを放ち
換気窓から流れ出た香りは 近隣一帯を包み
人々は今夜いちごジャムの夢を見る

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