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地方・小情報誌【アクセス】新刊ダイジェスト等で紹介された書籍です。
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『連赤に問う 1972-2022』

『連赤に問う 1972-2022』

地方・小出版流通センター情報誌【アクセス】(2023年01月号発行分)
新刊ダイジェストより

『連赤に問う1972-2022』上毛新聞社編

 日本中を震撼させた連合赤軍事件からもう半世紀になる。半世紀という時間は長く、事件は風化し、連合赤軍という名すら知らない人たちも多いことだろう。連合赤軍は全共闘運動が行き詰りつつあった1971 年12月、先鋭化した共産主義者同盟赤軍派と日本共産党革命左派神

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『戦争とは何か』神山睦美著

『戦争とは何か』神山睦美著

※地方・小出版流通センター情報誌【アクセス2022年11月号】新刊ダイジェストより

 本書の刊行の直接のきっかけは、この2月(2022年)に始まったロシアによるウクライナ侵攻という事態であるには違いない。確かに本書第一部は「ウクライナ戦争をどうとらえるか」と題されており、著者によってSNSに投稿された「ウクライナ戦争への反対声明」が掲載されているし、また今回の侵攻についての歴史的背景への言及もあ

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『旅に唄あり』岡本おさみ著

『旅に唄あり』岡本おさみ著

「岡本おさみ」という作詞家さんをご存知でしょうか? フォークソング黎明期に放送作家から作詞家となり、森進一の襟裳岬、吉田拓郎の旅の宿など数々のヒット作を生んだ鳥取県米子出身の方です。2015年に心不全のため73歳で死去しています。今年、その生誕80年を迎えます。

45年前に70年代の放浪の旅で書き留めた「ことば」を紡ぎながら、名曲の誕生秘話を綴ったエッセイ「旅に唄あり」が出版されました。いまは品

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『メタファー思考は科学の母』●大嶋 仁著

『メタファー思考は科学の母』●大嶋 仁著

著者は歌はいのちの力であると言い、文学は個人の心や社会を育て人類を守るなどと言うが、本書は、情動教育が大切だといった類の素朴なエッセーではない。脳科学や精神分析の見解を引用しながら、対象を別のものに喩えたり、自己の身体感覚や生命感覚を世界に投影するアニミズム的と言ってもいいメタファー思考が、実は人の認知機能を支えており、「物語は脳に備わっている」ということを考察した科学的な論考の書である。本書で取

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イージス・アショアを追う

「イージス・アショアを追う」
定価 本体1,600 円+税
編著・秋田魁新報取材班
発行・秋田魁新報社
【刊行日】12月21日
【仕様】 A5判、並製本、300ページ

秋田魁新報は今年、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の防衛省報告書に誤りがあるのをスクープし、2019年度新聞協会賞を受賞しました。
2017年秋に突如浮上した配備計画に対し、記者たちは何を考え、どう向き合ってきたのか。

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『奄美三少年 ユタへの道』●円 聖修著

 奄美でユタとしての仕事をしながら、占い師等の顔も持つ著者による自伝的作品だが、著者と同じくシャーマン的な資質を持った友人二人との交流を中心に綴られている。

 その友人の一人「平少年」は高校時代、学校で神懸かりとなってしばしば周囲を驚かせた。ある時担任の教師が校長室に呼ばれ、少年を退学処分とするよう言われる。担任教師は「彼はこの土地に古くから伝わる神障(ざわ)りではないかと思うのです」と食い下が

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『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』●森田直樹著

最近の統計によると小・中学生の不登校の子どもたちは十万人を超えると言われている。不登校は大きな社会問題でありながら、これといった解決策がないのが現状という。香川県で教員生活を経たのち、スクールカウンセラーとして不登校児に接する著者の提唱する方法では、再登校率はほぼ100%だという。
その特徴は、不登校の原因探しをやめ、そのメカニズムを「子どもの心にあるコップの自信の水が枯渇した状態」とシンプルに捉

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『信州の縄文時代が実はすごかったという本』●藤森英二著

『信州の縄文時代が実はすごかったという本』●藤森英二著

本書はまず縄文時代を概観するが、焦点となるのは5500~4500年前の縄文中期、八ヶ岳を中心とした地域で隆盛を極めた井戸尻文化である。この地域では、前後の時期に比べて遺跡の数がずば抜けて多く、何よりも、蛇体把手土器や抽象文土器、顔面把手土器といった個性的で芸術作品と呼ぶにふさわしい土器群が溢れ出るように作られている。
本書では、それらの土器の文様や造形の詳細を写真で確認することができる。そして、こ

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『月と蛇と縄文人-シンボリズムとレトリックで読み解く神話的世界観』●大島直行著

 考古学の世界では、出土品などの分類が目的化し、その型式研究や編年研究が中心になっていると著者は言う。またマルクス主義の影響で、出土品の経済合理性や機能性にばかり目を奪われているとも。二十世紀最大の宗教学者と言われるルーマニアのミルチャ・エリアーデの宗教学的視点を導入したネリー・ナウマンの著作に出会った著者は、これまでとは大きく異なる視座から縄文研究に取り組むことになった。
 そして、土器や土偶か

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