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『信州の縄文時代が実はすごかったという本』●藤森英二著

本書はまず縄文時代を概観するが、焦点となるのは5500~4500年前の縄文中期、八ヶ岳を中心とした地域で隆盛を極めた井戸尻文化である。この地域では、前後の時期に比べて遺跡の数がずば抜けて多く、何よりも、蛇体把手土器や抽象文土器、顔面把手土器といった個性的で芸術作品と呼ぶにふさわしい土器群が溢れ出るように作られている。
本書では、それらの土器の文様や造形の詳細を写真で確認することができる。そして、この文化の隆盛を象徴するのが、1986年に出土した縄文のビーナスであり、2000年出土の仮面の女神である。現在国宝に指定されている土偶5点のうち2点が長野県茅野市から出土したこの両土偶である。後期になると、貝塚文化で知られる関東沿岸や、遮光器土偶や亀ヶ岡式土器で知られる東北地方が異彩を放つようになっていくが、縄文中期、確かに信州・八ヶ岳山麓が何か特別な場所であったことを、本書は教えてくれる。巻末には縄文遺跡や博物館を巡るトラベルマップが付されている。
◆2160円・200mm×210mm判・135頁・信濃毎日新聞社・長野・2017/3刊・ISBN9784784072996

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