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葬舞師と星の声を聴く楽師【完結】

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新連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』のマガジンです。中世西アジア風の架空世界を舞台にしたBL小説。伝統的な舞師と楽師の過去の因縁、ある宮廷舞師の思惑、国同士の勢力争い。様々な運…
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2022年6月の記事一覧

24 初舞台は異変のフラグ 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

24 初舞台は異変のフラグ 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
前話の振り返り、あらすじ、登場人物紹介、用語解説、などは 【読書ガイド】でご覧ください↓

前話

24 初舞台は異変の旗印

「市街だ」「郊外だ」
 ふたつの口から同じタイミングで違う言葉が飛び出した。
 ぐぬぬと肩に力を込める青年。譲ってたまるかと睨みつける男。
「通勤に便利な市街だ。俺は舞踊の仕事を三件もはしごしてるんだ。舞に集中するためにも絶対に

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推しのためなら【舞師と楽師/episode 19.5】

推しのためなら【舞師と楽師/episode 19.5】

【舞師と楽師/episode】は連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』のサイド・ストーリーです。
今回は15話で登場した相席の客夫婦を主役にした、20話直前のお話。

【登場人物】
相席妻:ダルワナールの追っかけ(強火)
相席夫:ダルワナールの追っかけ(中火)
ダルワナール:国内人気No.1の踊り娘
アシュディン:無職のため凹んでる舞師
ハーヴィド:ダルワナールの専属楽師



 闇夜に紛れるふた

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25 天才舞師のアナグラム 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

25 天才舞師のアナグラム 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

25 天才舞師のアナグラム

 〈不帰の輪を統べる葬舞〉では、アシュディンとハーヴィドがこれまで共演してきた中で、もっとも練磨された完成形に近い演舞が披露された。
 しかしその終幕を知らせる楽器の音が鳴った瞬間、アシュディンは不意に頭を押さえながら体勢を崩

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26 塗り替えられた伝統 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

26 塗り替えられた伝統 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

26 塗り替えられた伝統

「アシュディン。お前は〈ただの憑依〉と〈舞の占断〉の違いはどこにあると思う?」
 ハーヴィドに問われたアシュディンは、全くお手上げだという風に首を傾げた。
「それは舞占師と楽占師、双方の占断の〈一致〉だ。一致を必須条件にすること

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27 栄華と追放と愛と 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

27 栄華と追放と愛と 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

27 栄華と追放と愛と

 アシュディンは翌日から、エル・ハーヴィドの日記を少しずつ読んでいった。
 占断については受け入れ難いことばかりだった。帝国暦93年の台風による帝都浸水、的中。95年の虫害による飢饉、的中。96年の地震による地盤沈下、的中。大規模

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28 乾杯の音は夜毎鳴る 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

28 乾杯の音は夜毎鳴る 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

28 乾杯の音は夜毎鳴る

 アシュディンは楽師の気持ちを察していた。
《ハーヴィドは俺に気を遣って言わないけど、移動民族と楽器の始祖であるエル・ハーヴィドの運命を自分の使命として受け入れようとしている。もしかしたら出逢った時もファーマール帝国に向かってい

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29 クロスロードに笑う 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

29 クロスロードに笑う 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

29 紀行の交差点に笑う

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【エル・ハーヴィドの日記】

帝国暦97年10月14日
 愛するディ・シュアン。君はそろそろ目を覚ましただろうか? 俺はファーマールの国境付近でこれを書いている。終日独りだ。そのおかげで気付きも多

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マスターの退屈 【舞師と楽師/episode 23.5】

マスターの退屈 【舞師と楽師/episode 23.5】

【舞師と楽師/episode】は連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』のサイド・ストーリーです。
今回は〈葡萄の冠〉のマスターとカースィムが主人公。カースィム誘拐事件(21〜23話)とエルジヤド家の葬儀(24話)の間のお話です。

【登場人物】

マスター:酒場〈葡萄の冠〉の店主の男。トラブルを密かに面白がる節がある。

カースィム・エルジヤド:ラウダナ国の貴族の次男坊で本来は極度のアル中。好意を寄

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30 微睡の言葉はショートする(BL) 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

30 微睡の言葉はショートする(BL) 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

30 微睡の言葉は短絡する

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【エル・ハーヴィドの日記】

帝国暦100年7月6日
 親愛なるディ・シュアン。いまラウダナのずっと東にある村落にいる。あの盗賊もまだ一緒にいるぞ。予想は大外れだったな。
 そして俺の〈旅の楽団

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31 占師でも歴史家でもない 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

31 占師でも歴史家でもない 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

31 占師でも歴史家でもない

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【エル・ハーヴィドの日記】

帝国暦113年2月1日
 愛するディ・シュアン。トルシカはもう14歳だ。去年あたりからぐんぐん手足が伸びて、だいぶ生意気になってきやがったよ。
 どれ親の威厳とや

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32 なんべんでも鐘を鳴らせ 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

32 なんべんでも鐘を鳴らせ 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

32 なんべんでも鐘を鳴らせ

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【エル・ハーヴィドの日記】

帝国暦117年10月7日
 愛するディ・シュアン。俺が団を追放されてから20年の月日が経った。君は目を覚ましただろうか? 君が元気に舞っていることを今も遠くから願

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33 ここは俺たちの庭だ! 【帰還の章・最終話/葬舞師と星の声を聴く楽師】

33 ここは俺たちの庭だ! 【帰還の章・最終話/葬舞師と星の声を聴く楽師】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

33 ここは俺たちの庭だ!

 帝国暦265年6月28日、午前。雨は止んだが、まだ霧の晴れない帝都の大通りを、舞師と楽師は闊歩した。行く手にはファーマール帝国の宮廷。そのさらに奥には重々しく聳え立つ岩肌の山。
 宮廷の門が見えてきた辺りで、ハーヴィドはいよ

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帰還の章(24〜33話)振り返り【葬舞師と星の声を聴く楽師】

帰還の章(24〜33話)振り返り【葬舞師と星の声を聴く楽師】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』の第3章〈帰還〉の振り返り記事です。作品自体は長くてなかなか読めないという方に向けて書いています。サラッと見て頂けるだけでも嬉しいです!

本作には、同性愛の内容、過度ではないにせよ性的表現・暴力表現が含まれております。これらには差別・暴力を肯定し助長する意図は一切ございません。該当話ごとにネット小説レーティング同盟の定義に対照させたR指定をつけております。ご参

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34 皇帝陛下の観相学 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

34 皇帝陛下の観相学 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

34 皇帝陛下の観相学

「俺は、かつて帝国伝統舞楽団を追われた第5代正統楽師エル・ハーヴィドの末裔。ふたりの正統を前にして〈退け〉とは何たる無礼。追放は不当だ。ここは〈俺たちの庭〉だ!」
 ハーヴィドの雄叫びにナドゥア老師は一瞬たじろいだが、すぐさま己の

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