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深読み

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少し考えた時の記録です。回顧、反省なども。 他には、クリヤヨーガやヴェーダに関する書籍の読書記録も。
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#インド

深読み:インドの怖い女神

深読み:インドの怖い女神

インドには恐るべき女神カーリーがいます。ある説によれば、女神ドゥルガーがアスラの軍と戦ったとき、怒りによって黒く染まった女神の額から出現し、アスラを殺戮したとされます。勝利に酔ったカーリーが踊り始めると、そのあまりの激しさに大地が粉々に砕けそうだったので、夫のシヴァ神がその足元に横たわり、衝撃を弱めました。横たわるシヴァの腹を踏みつけて、ペロリと長い舌を出したカーリーの姿を絵や像が、インドでは見ら

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深読み:屋台彫刻と神話

深読み:屋台彫刻と神話

播州の秋祭りで練り出される屋台は、「動く芸術品」と言えるほどに、各部の装飾や彫刻には日本の伝統工芸の技がふんだんに盛り込まれています。例えば、屋台の屋根の頭頂部の擬宝珠(ぎぼし)のすぐ下の露盤(ろばん)彫刻や、屋根下の東西南北4面ある狭間(さま)彫刻などです。

狭間には、江戸後期から現在まで受け継がれる名だたる彫刻師たちによって様々なモチーフが採用されています。例えば、日本書紀・古事記から源平合

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深読み:始まりがあるものには終わりがある

深読み:始まりがあるものには終わりがある

映画としては、もはや古典かもしれませんが、『マトリックス』3部作の完結編をふと思い出しました。第3部は、難解で、後味の悪い終わり方をするので、評価がわかれる内容でしょうか。クライマックスのシーンで、宿敵エージェント・スミスを倒した(自滅させた)必殺技(言葉)が、これだからです。

「始まりがあるものには終わりがある」……いま、私は何と言った?

スミス自らの口から、こぼれ落ちるように出ました。

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深読み:個人の魂と宇宙

深読み:個人の魂と宇宙

ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」において、ワーグナーは真実の愛は、死によってはじめて完成するという深遠なテーマが扱われています。イゾルデは最後に、「大宇宙へと溶け込む」と歌います。
インド哲学でも、個人の魂(アートマン)が宇宙の最高原理ブラフマンと合流することが説かれています。仏教では、「梵我一如」と訳されています。

ISOLDE
おだやかに、静かに
あの方が微笑む、
目をにこやかに

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深読み:音と耳

深読み:音と耳

アルジュナの第二の通過儀礼(イニシエーション)では、音と姿が深く関係しています。二度目の放浪の旅の途中、ユディシュティラは、インドラ神のもとで武器を獲得するように命じました。ヒマラヤの森の中に入った際に、アルジュナは、まず法螺貝と太鼓の音が天空に鳴り響きにより、神の存在を悟ります。その森で苦行を続けるアルジュナは、キラータの姿をしたシヴァを見ました。

ある研究者によれば、神々の出現と音との関

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深読み:空井戸と地下道

深読み:空井戸と地下道

村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」で、主人公24歳の青年トオルが、水の涸れた井戸を降りていくシーンがあります。トオルは深い井戸の底の暗闇の中で、突然失踪した妻のクミコとの出会いから結婚までのいきさつ、クミコが堕胎したときの奇妙な体験などを振り返ります。井戸の底では、記憶がこれまでにない力で様々なイメージを呼び起こしていきます。会社での些細なトラブルまで、まるでそれが今起こっていることであるかのよう

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