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#176 「あるべき論」より「ラクしたい」がエライ!?

本社部門の業務改善を1年やってきて「あるべき論」より「ラクしたい」という気持ちの方がよっぽど改善につながるなぁ、と思ったのでメモ。


1、「あるべき論」は建前を使った言い訳。

「業務改善」と聞いてどのようなイメージを持ちますか?

おそらく、立場によってイメージは正反対で、言う立場ならポジティブに捉え、言われる立場であればネガティブ、で身構えるでしょう。
そりゃ、そうですよね。今がイケてない、と言われるわけですから。

ですから、基本的に業務改善を担当するというのは嫌われます

嫌われるのはまだいいのですが、入り口で身構えてファイティングポーズ取られてしまうと、その後に進めません…

営業から異動してきた身からすると人間の自然な心理から言って、こうなってしまうのは当然すぎるのですが、なぜか真正面からぶつかって入り口で小競り合いになる。まったく本題に入れない。

やっと、改善プロジェクトとして始まったとしても、今度は「あるべき論」で前に進まない。

なぜか?

まず、対象の部署の責任者からは立派な「あるべき論」が語られます。
次に、必ずセットで語られるのが、「でも、それをやるリソースがない。だからできない。やれというならリソースをくれ。」です。

つまり、「リソースくれるなんて無理でしょ?だからできないんだよ(だから今のままでいいんだ)。」と言いたいのです。


2、「ラクしたい」は本音

こういうときには複数対複数のMTGでは埒があきません。

いろいろな立場の方に個別に1対1でインタビューします。もちろん、堅苦しい形ではなく、「内緒でちょっと教えてください」です。

そこで何を聞くか、というと仕事上で「面倒なこと」、「大変なこと」、「困っていること」、です。要は愚痴を聞く、のです。

面白いもので、ちょっと水を向けると愚痴はたくさん出てきます。
コツは、「こんなことがあるらしいと聞いたのですが…」、という、すでに他の人が愚痴を話してくれている、という安心感を与える「振り」です。

さて、愚痴がひとしきり出た後で、「どうすればみんなラクになると思います?」と質問します。

ポイントは、「みんな」と「ラク」です。「あなた」がラクするのではなく、「みんな」が「ラク」になる=いいこと、ですから答えやすくなります。
 
それに愚痴を言った後ですから、それらを解決する方向での話が出てきます。

たしかに人数が足りない、とかリソース関係の話も出ますが、すぐにできるものも必ず出てきます。

それをすばやく実行してしまうことで、「変えられるんだ」「そんなことでいいんだ」という雰囲気に変わります。

こうなると、頑なだった管理職も意味が分かってきて、動いてくれます。
(動きたくなかったとしても、メンバーが突き上げてくれます)

そのうえで、「リソースは増やせないけど、みんながラクになるアイディアありますか?」と広く聞く。できれば、この段階ではその部署の中の人にその役割を担ってもらえるまで持っていけるとなお効果的です。

業務改善は「あるべき論」ではなく、「みんながラクになる」で進むのです。


3、まとめ

昨日、会社が溶ける時代だ、という投稿をしました。
なのにまだ会社の業務改善のこと?と思われるかもしれません。

でも、溶けた後を究極の効率化が進んだ状態とすると、いまはまだまだ不効率がたくさんある、ということでもあります。

トヨタ流に言えば、濡れた雑巾、で、絞るまでもなく、持ち上げただけで水が落ちるような組織もあると思います。

なんでそんな組織が温存されているかといえば、会社全体としては他に頑張ってくれているところがあって、どんぶり勘定で存続している部署がある、ということです。

そんな余裕はずいぶん前からなくなっています。これまでもなんとか効率化しようとしてきました。

ところが、業務が高度化、細部化、サイロ化していると、いざ「業務改善」をしようとしても、その業務に精通した管理職たちが「あるべき論」をかざしてくる。対抗できずに、結果的に温存されてきた、という面もあります。

そんな組織への業務改善、「ラクしたい」に切り口を変えるだけで、濡れ雑巾を持ち上げることができるのです。

なんでもそうですが、理屈だけで人を動かすのは難しいものです。
「あるべき論」は理屈、「ラクしたい」は感情、という違いが結果の違いを生んだ、と言えます。

加えて、部署のメンバーから出てきたちょっとしたアイディアを実行に移すことで、「何を言っても変わらない」という思いが崩れた時のメンバーの気持ちの変化、行動の変化ということも大変大きな力になります。


最後までお読みいただきありがとうございます。

個人的な経験ですが、どこか参考にしていただけるところがあれば嬉しいです。

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