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俳句 まとめ記事 一覧

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俳句作品のまとめの記事を集めています
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#現代詩

現代語俳句への旅 39 〜灯していても〜

現代語俳句への旅 39 〜灯していても〜


「 灯していても 」
~現代語俳句集~

大宇宙をものおもいして灯の秋よ

まんてんの星きよめるか虫のこえ

つぎの代つぎの代へとばった飛ぶ

さきもりのすがたをいまに草の花

あかとんぼダムの放流とどろくか

そのむねに手をあててみよ秋彼岸

見つめればだんだん観えて名月よ

あかるさよ世捨てびとらも月見酒

ちんもくをもって真向かう台風よ

嶺揺れるかえで紅葉のそのおくで



デパートが

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現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜

現代語俳句への旅 38 〜百年のこと〜


「 百年のこと 」
~現代語俳句集~

また一人あかるみに出て十五夜よ

手かざしてぬける改札きょうの月

ひとの世を知ってしみじみ名月よ

柿食べてにっぽんがあるむねの奥

秋すずめとんとんとんと跳ねて空

旅びとが吹きゆくかぎり草絮とぶ

とかいとはなんの栄華ぞ銀杏ちる

船に風まったくもってさわやかよ

はるかさよ飛鳥寺まであきのそら

じぶんへのいのりしすかに星月夜



なが生きの幸

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現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜

現代語俳句への旅 36 〜天球儀〜


「 天球儀 」
~現代語俳句集~

これ以上踏みいらず山ほととぎす

目つむってしずかな光ひぐらしよ

はるばると呼びあうことよ秋風鈴

あれからのこれからの鐘へいわ祭

年々よ身にしみてくるへいわの鐘

たましいが呼びあってこそ迎え盆

せんそうもえきびょうも越え盆踊

鳥わたる見えるかぎりの山河越え

京よりも奈良のふかさよあきの色

星あかりたたずむ橋の名もしらず

かがやいていのちの故郷

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現代語俳句への旅 35 〜かえってこない雲〜

現代語俳句への旅 35 〜かえってこない雲〜


「 かえってこない雲 」
~現代語俳句集~

しずかさをひびかせている風鈴よ

この世から消えてもきえず京の虹

いまの世の後ろすがたよ奈良団扇

目をつむっても瑠璃光寺蝉しぐれ

人として梅雨のなかゆく熊野古道

草笛は吹いてこそ野は晴れてこそ

富士の嶺はるかにひいてゆく汗よ

故郷までつらなって山ほととぎす

そのはてに都市いくつもよ夏の河

平およぎ海をひらいてゆくことよ

夜釣りして月

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現代語俳句への旅 34 〜いつからとなく〜

現代語俳句への旅 34 〜いつからとなく〜


「 いつからとなく 」
~現代語俳句集~

みな都市を育ててばかり夏の灯よ

まどあけてまっただなかへ天の河

柔らかにふれればともる夏の灯よ

盛りつける手ゆびやわらか冷素麺

おとこらに飲みほすちから生麦酒

ふるさととほろぶかくごの白団扇

遠ぞらよわすれた日々は蝉しぐれ

嶺いつかながし去るのが梅雨の河

ぜんいんの人生が夏ロックフェス

えいえんに明日あるような夏浜よ



とびうお

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現代語俳句への旅 33 ~夏こえゆく~

現代語俳句への旅 33 ~夏こえゆく~


「夏こえゆく」
~現代語俳句集~

ライオンがふと立ちあがる大夕焼

あおぎみるひとのかずだけ夏の月

大阪は灯でできているすずしさよ

咲いた幸せ散った幸せかきつばた

聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ

アイスコーヒー氷残してまた街へ

くりかえすせんそうへいわ噴水よ

いのるひと虹でゆるしてきた地球

墓だけを地球にのこすすずしさよ

縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ

たなばたよ恋でさかえて

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現代語俳句への旅 32 ~おなじ時代を〜

現代語俳句への旅 32 ~おなじ時代を〜


「 おなじ時代を 」
~現代語俳句集~

都市のゆたかさ村のゆたかさ夏祭

ひとびとがうつくしいのは祭の夜

はるかさよいまじんせいの夕涼み

生きてふとたどりつくのが冷や奴

那智の滝天地のものということか

草笛よあしたへつづくじんるい史

飛びたっておもたい尻のこがね虫

ハンモックわかる地球の大きさが

ハンモック歳月というわすれもの

ダイバーとひとつになった海は夏

カクテルに沈んだ

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現代語俳句への旅 31 ~寝静まるころ~

現代語俳句への旅 31 ~寝静まるころ~


「 寝静まるころ 」
~現代語俳句集~

えいえんにときがとまった故宮春

淋しさの行きつくところ奈良よ春

野にふたりだまっていても風薫る

富士の山すえひろがりの涼しさよ

にっぽんよとおくしずかな夏の音

ぼんやりとちきゅうを思う水中花

ハブラシがまだいっぽんの恋よ夏

あたらしい鼻歌がでてシャワー後

扇風機羽根うしなったげんだいよ

生涯に別れがいくつかき氷

咲くいえにやがて婚ある

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現代語俳句への旅 30 ~故郷ほたる籠~

現代語俳句への旅 30 ~故郷ほたる籠~


「故郷ほたる籠」
~現代語俳句集~

桃いちりん鳶舞う空に晴ればれと

ゆく川のさいごはひかりはるの海

藤垂れてむらさきのそらしろい空

せんねんのなかのことしの白藤よ

くっきりと富士がみえた日四月尽

かたらうかコーヒー店で尽きる春

はるがらがらごっとん自動販売機

飛ぶひかりふたつでひとつ蝶の恋

たんぽぽが現代らしく咲く日なた

老画家にえがくしあわせひとり静

八十八夜こころに故郷

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