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現代語俳句への旅 30 ~故郷ほたる籠~


「故郷ほたる籠」
~現代語俳句集~

桃いちりん鳶舞う空に晴ればれと

ゆく川のさいごはひかりはるの海

藤垂れてむらさきのそらしろい空

せんねんのなかのことしの白藤よ

くっきりと富士がみえた日四月尽

かたらうかコーヒー店で尽きる春

はるがらがらごっとん自動販売機

飛ぶひかりふたつでひとつ蝶の恋

たんぽぽが現代らしく咲く日なた

老画家にえがくしあわせひとり静

八十八夜こころに故郷あってこそ

ビルひとつそびえ立たせて新緑よ

ゆめを追うらくご家たちよ白扇子

遠空よゆけどもゆけどもむぎの秋

はるかさよ会ったすべての人が虹


あがるたび時代がかわる鯉のぼり

五月来るおくれて雲もつぎつぎに

若草か野はらから立ちあがるひと

へいわ通りひろびろとあれ風薫る

麦藁帽子かぶるあなたもきっと海

踏切りがかんかん鳴って夏になれ

たましいのみなしごひとり吹流し

世のなかは握りつぶせずビール缶

ゴールデンウィーク長風呂何日目

歳月はスマートフォンのなかに夏

香水よだれもかれもがゆめときえ

かたつむり己つらぬくためすすむ

雲の峰こどくとカップラーメンと

最後には泣かせてしまう母の日よ

いまにしておもえば故郷ほたる籠

ビアガーデン酒もあかりも金色に


いえの灯をけしてねむるか銀河系



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