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現代語俳句への旅 33 ~夏こえゆく~
「夏こえゆく」
~現代語俳句集~
ライオンがふと立ちあがる大夕焼
あおぎみるひとのかずだけ夏の月
大阪は灯でできているすずしさよ
咲いた幸せ散った幸せかきつばた
聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ
アイスコーヒー氷残してまた街へ
くりかえすせんそうへいわ噴水よ
いのるひと虹でゆるしてきた地球
墓だけを地球にのこすすずしさよ
縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ
たなばたよ恋でさかえてきた地球
◇
とおい日がきこえるガラス風鈴よ
通天閣おおさかいちのすずしさよ
じんせいのかげとひかりの夏帽子
都市高くそだってゆくか五月晴れ
くさぶえよ万葉集のむかしから
ふるさともあたらしくなれ衣更え
地の声よ刈ってもかっても夏の草
リモコンで部屋あやつって晩涼よ
ひらくたびみずからが見え冷蔵庫
さいげつが麦酒樽からとくとくと
手花火よ一人きえまたひとり消え
◇
超高層ビルのあおさよすずしさよ
関東よなんのいかりのかみなり雲
残るものだけがのこって都市は夏
ハードル走次つぎと夏こえゆくか
汗一人責められもせず責めもせず
サングラスはずした世界大夕映え
いちぞくのはじまりの家青すだれ
いちろうもじろうもねむる風鈴よ
あすからをなにもしらない鴉の子
たたずめば暮れ残るだけ夏至の橋
灯ともして夜を透きとおる熱帯魚
◇
白鷺がいてしずかさよ隠岐のあめ
白鷺にさいげつというせせらぎよ
山中湖ボート漕ぐたびしんしんと
声にしてはてしなくなる五月晴れ
伊予簾あたらしいとはあおいこと
ゆうぜんと立つとおい日の羽抜鶏
カラオケよこの世静まる梅雨の夜
おくる手に薔薇の人また百合の人
だれしもがいっそうの舟あまの河
ほんとうののんびりがある納涼よ
花火師のゆめがあかるくひらく空
いつも
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