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現代語俳句への旅 33 ~夏こえゆく~


「夏こえゆく」
~現代語俳句集~

ライオンがふと立ちあがる大夕焼

あおぎみるひとのかずだけ夏の月

大阪は灯でできているすずしさよ

咲いた幸せ散った幸せかきつばた

聴くまではきこえず坂の蝉しぐれ

アイスコーヒー氷残してまた街へ

くりかえすせんそうへいわ噴水よ

いのるひと虹でゆるしてきた地球

墓だけを地球にのこすすずしさよ

縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ

たなばたよ恋でさかえてきた地球


とおい日がきこえるガラス風鈴よ

通天閣おおさかいちのすずしさよ

じんせいのかげとひかりの夏帽子

都市高くそだってゆくか五月晴れ

くさぶえよ万葉集のむかしから

ふるさともあたらしくなれ衣更え

地の声よ刈ってもかっても夏の草

リモコンで部屋あやつって晩涼よ

ひらくたびみずからが見え冷蔵庫

さいげつが麦酒樽からとくとくと

手花火よ一人きえまたひとり消え


超高層ビルのあおさよすずしさよ

関東よなんのいかりのかみなり雲

残るものだけがのこって都市は夏

ハードル走次つぎと夏こえゆくか

汗一人責められもせず責めもせず

サングラスはずした世界大夕映え

いちぞくのはじまりの家青すだれ

いちろうもじろうもねむる風鈴よ

あすからをなにもしらない鴉の子

たたずめば暮れ残るだけ夏至の橋

灯ともして夜を透きとおる熱帯魚


白鷺がいてしずかさよ隠岐のあめ

白鷺にさいげつというせせらぎよ

山中湖ボート漕ぐたびしんしんと

声にしてはてしなくなる五月晴れ

伊予簾あたらしいとはあおいこと

ゆうぜんと立つとおい日の羽抜鶏

カラオケよこの世静まる梅雨の夜

おくる手に薔薇の人また百合の人

だれしもがいっそうの舟あまの河

ほんとうののんびりがある納涼よ

花火師のゆめがあかるくひらく空


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