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ショートショート【葬儀】
道端にカラスが脚を天に向けて倒れている。
確かめずともそれが死んでいる事が分かり、よく見れば黒い虫が集って目をほじくっている。
頭上には無数のカラスが渦を作り、死を悼む様に鳴き声をあげている。
「うわぁすげぇや」
すぐ脇に建つアパートの2階から笑いながら男が顔を出し、空を見上げて言った。
次の瞬間、その男目掛けて黒い竜巻が根を下ろした。
松茸狩り【不思議な話】
「美味し〜い!」
山の麓にある隠れ家的小料理屋で、松茸尽くしのコース料理を食べていた。
日に数客しか取らないというが、これだけの贅沢な料理ならばそれも頷ける。
たまにはと思って奮発し、片道2時間の道のりをやってきたのだ。これくらいあってもらわねば。
食べ終わる頃店主が席にやってきたので、一頻り褒めちぎって世間話をした所、気を良くしたのかこんな提案をしてきた。
「こんなド田舎ですし、お客様もそんなに
山に埋まっていた物【怪談】
作業員全員が土の詰まった筒を見て固まっている。
地質調査の為に訪れたこの山地で、通常通りのボーリングを行った際に異変は起きた。
土の詰まったパイプを外し中身を確認した所、地面から数メートル下の部分で人骨が発見した。人骨が見つかるのは別段珍しい事では無い。
問題なのは、それが1番上の人骨から約2メートルおきに3箇所、綺麗に頭蓋骨のみが入っていたからだ。
つまり、体の向きはどうあれ、全く同じ位置に人
クリスマスと夢の後ー真澄編ー
「……これは不味いわね」
項垂れる男を目の前にして、私はそう呟いた。
この悲壮感溢れる男の名前は「江藤真澄(ますみ)」。29歳、独身、彼女無し、至って普通のサラリーマンである。項垂れ、溜息をつき、デパートの商戦に上手いことほだされ、来たるクリスマスを孤独に迎えようとしているのだった。
私は真澄の幼馴染であり、家も隣で、それはまぁ仲良しだった。家族ぐるみでの付き合いもあったし、恋の悩みを相談す