久賀池知明|怪談

初めまして、久賀池知明と申します。 創作怪談を主にアップしていきます。 更新頻度はそこ…

久賀池知明|怪談

初めまして、久賀池知明と申します。 創作怪談を主にアップしていきます。 更新頻度はそこまで高くありませんが、よろしくお願い致します。 盗作・転用などはおやめ下さい。写真は自前です 小説、演劇・朗読脚本の販売、ご依頼はこちら→ https://kugachi-99.booth.pm

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その息遣いを私は覚えている【前編】

ハッハッハッハッ…  枕元で聞こえる荒い息遣いが私の眠りを妨げる。  頭だけ動かして見ようとしても、そこには暗闇が広がるだけで何もいない。  1度母と一緒に寝て貰った事があったが、母には何も見えていないし聞こえてもいないようだった。無論、私にも姿は見えてはいない。幻聴だと思い込もうとしても、余りにはっきりとしたその音が私の心を大きく揺さぶり、震わせる。  聞こえなくなる様にと布団を頭から被ると、その上から私の頭を2本の腕が無造作に押え付ける。  そして布越しに ハッハッハッ

    • ムシ ムシ ムシ 第四話

      脅威の羽化  全世界の既知の総種数は約175万種で、このうち、哺乳類は約6,000種、鳥類は約9,000種、維管束植物(木や草、野菜などを思い浮かべて貰って差し支えない)約27万種。これに菌類などを合わせても、昆虫種の約95万種には遠く及ばない。更に言えば、アマゾンを筆頭に未開の地には未確認の生物が生息しているとされている。一部の科学者曰く 「地球上には凡そ2000万種の生物がおり、人間はその15パーセント程しか発見出来ていない。それらの多くは人知れず繁殖し、そして絶滅ある

      • 凄い今更ながら、昆虫じゃないのも昆虫って事にして話書いちゃってました💦 やっちまいましたね笑

        • 異形の匣庭 第二部⑫-3【怨故知新】

           テーブル、麦茶の注がれた湯呑みが二つ。  毎秒無音をかき消す秒針、時折唸る冷蔵庫と製氷機。  妻と母、あるいは既にこの世にいない人物の写真。  綺麗に整備されたアスファルトの歩道と目隠しの為に設置された生け垣の間に、エントランス前の噴水から続く水路がどこかの用水路まで続いている。用水路がほんのりと電球色に照らされ生け垣に反射し、ゆらゆらと生け垣の木々が揺れている様に見える。  首が痛くなる高さのシックな装いのマンションが僕を見下ろしていて、こんなに空は狭かったかなどと要ら

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        その息遣いを私は覚えている【前編】

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        • 長編
          35本
        • 中編
          22本
        • 個人的な事、その他雑記
          41本
        • ショートショート
          35本
        • 企画
          7本
        • 短編
          11本

        記事

          ムシ ムシ ムシ 第三話

          シンクロニシティ 渡り鳥は隊列を作り集団となって飛ぶ。先頭の鳥の羽ばたきが空気の渦を作り出し、後方の鳥達が少ない力で飛べる様になるからだ。列の順番を順繰り入れ替え飛ぶ事で、先頭の負担を減らし長距離を移動する。  飛行力学を本能的に理解し適用出来るのが、渡り鳥が群れである利点といえる。  逆に鷹や烏、カワセミ等は基本的に単独で行動する。勿論番いになれば別だが、それでも寿命までの大半は単独だ。  彼等に単独か群れかの傾向は主立ってある訳ではない。理由を付ければ「敵に狙われにくい」

          ムシ ムシ ムシ 第三話

          異形の匣庭 第二部⑫-2【怨故知新】

           一軒のアパートの前に立ち、終始何かを気にして辺りを見回している。  目の前をヘッドライトが横切ったのを確認して道路を渡り、1階中央の部屋に入っていく。  物が散乱した室内のどこからか饐えた匂いが漂っており、これだけの暑さの中クーラーも扇風機も無い故の蒸し暑さが臭さを増進させている。  廊下でそれらを纏いつつ一番奥へと向かい、ポケットから鍵を取り出して部屋の鍵を開ける。  年季の入った学習机の他には中身が殆ど無い収納ケースが1つと、乱雑に折り畳まれた布団が一式。  下着と草臥

          異形の匣庭 第二部⑫-2【怨故知新】

          ムシ ムシ ムシ 第二話

          適者生存 皆さんは進化についてきちんと理解出来ているだろうか。  キリンとヒトを例に挙げて整理しよう。  キリンと言えば首や脚部が長い動物であるが、この首や脚は高所の植物を食べようと使っている内に発達して伸びて今の形状になった。  と言うのは間違いである。1800年以前ではそちらの方が通説でこの説を【要不要説】と言い、ラマルクという動物哲学者が提言した。  簡単に言えば良く使う部位は発達し、使わない部位は退化していく理論である。もしこれをヒトに当てはめるとしたら尾てい骨がわか

          ムシ ムシ ムシ 第二話

          異形の匣庭 第二部⑫-1【怨故知新】

           車窓から見える景色が色濃い自然から暗闇、そしてまた自然に変わっていく。入れ替わる度に民家の数と新しい様式の物も連れ立って増え、途中の降車駅では縦に生え伸びたビルやマンションが軒を連ねていた。そのビル群の合間合間に中途半端に伸びた鉄骨と、赤と白に彩られた大型のクレーンが見え隠れするのを見て、弾けた泡をものともせず日本の近代化の波はまだまだ続くのだろうなと思わせた。 「はぁ……」 「…………」  右側の後頭部に鋭い視線を感じつつも、到底止められそうにない溜息を吐く。  あの一連

          異形の匣庭 第二部⑫-1【怨故知新】

          ムシ ムシ ムシ 第一話

          ※今作品には多種多様な昆虫が登場します。それに伴って昆虫の詳細な描写、また、残酷な表現が多く描写されます為、読まれる場合は注意をお願い致します。🐝 ※今作品に登場する地名、建物名などは実際の人物、団体等と一切関係はございません。🐞 ※あくまでフィクションとしてお楽しみください🦋 第一話 序章 石化した珊瑚、或いは長年の雨風によって風化した岩石にも似た大小様々な無数の穴。その穴の数よりも圧倒的に多い蛆虫が、その無数の穴を広げようと躍起になって口を動かしている。地面に近い部分に

          ムシ ムシ ムシ 第一話

          A家にて【怪談】

          大学構内にある食堂で、友人のAが突然 「うち、幽霊出るっぽいんだよね」 と訳の分からない事を言い出した。 幽霊だか妖怪だか、はたまたUFOだかの類いは全く信じていない私には、冗談の中でもかなりランクの低い冗談だとしか映らなかった。 「ふぅん」 と適当に相槌を打つと、Aは続けて 「それで最近凄く困ってて……全然夜眠れなくて」 などと付け加えた。顔を見れば確かに目の下に大きなくまが出来ているし、全体的に青白く、元気がないように思える。最近A宅付近で事件が起き、連日連夜マスコミが張

          A家にて【怪談】

          ある時から、自分が映っている写真全てに駕籠が映る様になった 誰に尋ねても分からず仕舞で、集合写真以外自分は映らないよう心掛けた 数年が過ぎたある日、ネット上で謎の駕籠が映る写真が大量に出回り始めた その全てに自分が映っており、幾つかは戸が開き巨大な毛むくじゃらの脚がはみ出していた

          ある時から、自分が映っている写真全てに駕籠が映る様になった 誰に尋ねても分からず仕舞で、集合写真以外自分は映らないよう心掛けた 数年が過ぎたある日、ネット上で謎の駕籠が映る写真が大量に出回り始めた その全てに自分が映っており、幾つかは戸が開き巨大な毛むくじゃらの脚がはみ出していた

          異形の匣庭 第二部⑪-4【囲われた火種】

          「その傷、見てもいい?」  鳴海は疲れや苛立った表情を抑え、改まった様に真面目表情を作って僕に聞いた。どこかで見た事があるその表情は、付喪神をお出迎えした時に見せた物と似ている。  熟れた手つきで包帯を外していき患部が露わになると、うわ、と小さく漏らした。 「うわって何うわって。そんなにやばそうなの?」 「ちょっと黙って」  毎回乱暴な言い方をどうにか出来ないものかと思いはするけど、たかが出会って数日の関係性であれこれ言うのも憚られる。凄く言いたいけど。 「これ、誰に……何に

          異形の匣庭 第二部⑪-4【囲われた火種】

          駅前の駐輪場の1番右の奥から3番目に、古びたスタンドが撤去される事なく残っている それに気付かず自転車を置き出庫すると、近い内に必ず走行中にチェーンが切れてしまうのだという ショップの店員は口を揃えて 「錆が原因」 と、そう言うらしい

          駅前の駐輪場の1番右の奥から3番目に、古びたスタンドが撤去される事なく残っている それに気付かず自転車を置き出庫すると、近い内に必ず走行中にチェーンが切れてしまうのだという ショップの店員は口を揃えて 「錆が原因」 と、そう言うらしい

          底抜けに元気の良い隣のパートのおばさんに秘訣を聞いてみたところ 「これよこれ。お腹も溜まるし良いわよぉ。後で作り方、教えてあげるわね」 と、色とりどりのサプリがみっちりと詰まった水筒を取り出して飲み始めた。

          底抜けに元気の良い隣のパートのおばさんに秘訣を聞いてみたところ 「これよこれ。お腹も溜まるし良いわよぉ。後で作り方、教えてあげるわね」 と、色とりどりのサプリがみっちりと詰まった水筒を取り出して飲み始めた。

          狭い歩道の先の方に人影が見え、ぶつからない様に右に寄った しかしその人影は左に動いた 仕方なく左に避けると、また私を追って右に動いてくる なんだか気持ち悪いな と、不審者かと訝しみつつも歩みを進める他ない 顔が見える位置まで近付いて、やっとその人影が私にそっくりだと気付いた

          狭い歩道の先の方に人影が見え、ぶつからない様に右に寄った しかしその人影は左に動いた 仕方なく左に避けると、また私を追って右に動いてくる なんだか気持ち悪いな と、不審者かと訝しみつつも歩みを進める他ない 顔が見える位置まで近付いて、やっとその人影が私にそっくりだと気付いた

          ある所に、肋骨が外側に突き出た奇形の子が産まれた その見た目と七つ目の子だった事から、七巻と揶揄され、一歩外に出れば石を投げられ、一つ上の姉以外からは見捨てられていた 七巻が死ぬ際 「姉の他、七代祟らるるべし」 と言い残した それからというもの、怪死する者が長く続いたのだという

          ある所に、肋骨が外側に突き出た奇形の子が産まれた その見た目と七つ目の子だった事から、七巻と揶揄され、一歩外に出れば石を投げられ、一つ上の姉以外からは見捨てられていた 七巻が死ぬ際 「姉の他、七代祟らるるべし」 と言い残した それからというもの、怪死する者が長く続いたのだという