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なみ
2021年7月12日 00:00
たどり着いたのは、大きなビルに挟まれた、ひなびた細いビルだった。「高田ビル」とレトロな字体の看板があった。「ここだね。」岩城が扉を開ける。浜口と南が後に続いた。「事務所は·····6階だね。」岩城が入ってすぐのエレベーターのボタンを押す。扉が開いた。6人乗りとあるが、3人でいっぱいだ。「6月22日給湯器のスイッチが入ったままでした。火災につながるので、退室前に必ず火元の確認をして下さい
2021年6月26日 09:45
ロープが張ってある石の門を通り抜け、林の中を下って行く。 家が現れ、女性が外で作業をしていた。「こんにちは、竹田さん。 急に言って、すみません。」「浜口さん、こんにちは。 全然かまわないですよ。」ジーンズに赤いTシャツ、グレーのショートカットの女性が、にこにこしながらこちらをじーと見つめる。「こちらがアイ設計所長の岩城さん。」「はじめまして。」「私はアイ設計の南と言います。
2021年5月29日 01:14
右へ左へハンドルをきり、坂道を進む。視界が開け、水平線が広がった。「気持ちいいね!」「うん。」父と2人でドライブなんて、何年ぶりだろう。もしかしたらはじめてかもしれない。ひさしぶりに実家に帰ってきてよかったと美紀は思う。10年前、「おまえ、これからどうするつもりなんだ?」大学卒業間近になっても、就職の決まらない美紀のところに、父から毎日電話がかかってきた。「····· ちゃんと
2020年11月20日 12:51
かみ合わない現場だった。ひとりひとりは、性格も穏やかで、知識もあり能力も高い。しかし、ちょっとした連絡事項が、全然、現場全体に伝わっていない。所長は、鋭い目つきで立っている。がっしりした体格。アメフトか何かしていたのだろう。大きな工事現場をまとめるには、あれくらいの迫力がないといけないのだろうか。ミカも、この工事現場に、監理として出入りしている。設計図どおりに施工されているか、鉄筋本数を