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今の自分から20代の自分に贈る、知っておきたかったビジネス・キャリアの教科書【6つの思考】

こんにちは、
マーケティングリサーチャーの出下(イデシタ)です。

この度、15年勤めたマクロミルを退職することになりました。
そして新しいチャレンジをするために転職いたします。

ですので今回の投稿が、マクロミル社員としての最後の投稿になります。

15年というととても長いように感じますが、20代からがむしゃらにずっと走り続けてきた、とても濃密であり、自身のキャリアを形成してこれたとても貴重な15年だったと思います。

まず僕の新しいチャレンジを応援して送り出してくれた、役員はじめ本部長や部長、一緒に仕事をした営業やリサーチャーなどの同僚やメンバーの皆さんに感謝を伝えたいと思います。
本当にありがとうございました。


▎今回のコンテンツ

マクロミルとしての最後の投稿をどうしようか、とても悩んだのですが、
テクニカルなスキルでもなく、リサーチの知見でもありません。

自身が20代から社会人のコアとなる期間をマクロミルというとても素晴らしい同僚やメンバーと共にで過ごした社会人経験の中で、もし20代~30代前半の自分に対して、ビジネスやキャリアにおける大切な思考を伝えることがもしできたのならば、いったいどのようなメッセージや言葉を贈るのか、ということを、自身の体験や経験を振り返って書いてみようと思います。

僕は決して要領の良い方ではなかったですし、どちらかといえば馬鹿正直に、真面目に、そして愚直に今ある目の前の仕事をなりふり構わず全力で猪突猛進していた若手だったと思います。
時に自身ではまったく気付かずに体を酷使して、結果として無理をしていた時期もありました。

自身が今の歳になったからこそ感じている、これから書くビジネス・キャリアの思考を若いころにもしも誰かに
・アドバイスされたり
・教えてもらってたり
・知っていたら
もっと違った、もっと高い視点と思考でビジネスというもの、キャリアというものに向き合えたのではなかろうか、と感じている次第です。

なかなか、こういったことを面と向かって話してくれる上司や先輩、というものはあまりいないと思います。
だから、あえて自身に向けたメッセージという形で伝えていきたいと思います。

これを読んでくれている、20代や30代前半の方にも、もしかしたら僕が知りたかったものがあてはまるものになるかもしれません。
自身のビジネス・キャリア志向において何かの後押しやきっかけ、アドバイスになれば幸いです。

それでは、早速いってみましょう。
これらのメッセージは、どこのチャプターから読んでいただいても、それぞれのストーリーは独立しているので、興味のあるところ、気になるところ、読んでみたいところから読み進めてもらって大丈夫です!


▎自律したシゴトをすること、人になること

20代の僕は、自身の仕事に対してどう捉えれば良いのか、とても苦しんでいたと記憶しています。
そのヒントを以下に伝えていきたいと思います。

多くのリーダーやマネジメント、組織では、「自立」をよく口にします。
ですが、「自立」を促すことはあっても、「自立」がどういう状態であるのか、その先にある「自律」を育むことがどういうことなのか明確に捉え発信していることは多くありません。

自立・自律とは、についてGlobisの記事に以下のようなものがあります。
ここに3つの演算式があります。

出典:村山昇「キャリアウェルネス」

最初の「5+3=」は「閉じた質問」と呼ばれるものです。
これは誰が答えても「8」、それしか答えようがないので閉じています。

2番目の「○+○=8」は「開いた質問」です。
与えられた右辺の「8」に対し、人によって「3、5」と答えたり「2、6」と答えたり。左辺の組み合わせは無限にあります。

3番目の「○+○=○」は、右辺も左辺も無限に考えられるので、
これは「開ききった質問」です。

この3つの演算式を普段の仕事に当てはめてみます。

・5+3=■
「閉じた業務」=答えがある作業を着実にやる

職場では「5+3はいくつ?」「3+4はいくつ?」「2+9はいくつ? きちんと計算して答えを出しなさい」のような業務があります。
定型業務と言われる仕事がそのひとつです。

求められる答えがあらかじめ決まっていて、任される者はその作業を処理する能力をきちんと覚えなくてはなりません。
この種の仕事は誰がやっても同じ答えになりますから、いわば「閉じた業務」です。

「閉じた業務」において創造性はあまり必要ありません。
とにかく正確に、効率よく、根気を持って1つ1つこなしていくのが「よい作業者」です。
そうして「この作業はもうあなたに任せても大丈夫ですね」と言われるようになる。これが仕事をするうえでの「自立」。

・○+○=8
「開いた業務」=答えは無限にあり、それを自分でつくり出す

次に、上司から「○+○=8」を考えてほしいと頼まれる仕事があります。
右辺の「8」は与えられた目標と捉えてください。
その目標に対し、どうやれば達成できるかを考える仕事です。

「8」を成り立たせる左辺の組み合わせは色々あり、それを自分なりに根拠をもって創造します、これは「半分開いた業務」です。
この種の仕事では、それを行う人のやり方や創意工夫によって個性が出ます。これができる状態を「半自律」とみます。

・○+○=○
そして最後に「○+○=○」の仕事です。

まず右辺の設定。
自分の担当仕事において、あるいは自分のキャリアにおいて課題は何か、挑戦すべきことは何か、どんな目標を定めるのがよいかを考える。

次に左辺。
課題を解決し、挑戦を乗り越え、目標を達成するための方法・プロセスは何が適当かを考え、その実行。

そのように右辺も左辺も完全に「開ききった業務」を自分で取り仕切ることができるようになる、これこそが「自律」の仕事です。

自律の仕事には、創造性はもちろん、時代をみる目や課題を発見する力、目標を設定するセンスや意志、そして必要に応じてプロセスを修正していく柔軟性や機動力が必要になります。

出典:村山昇「キャリアウェルネス」

仕事を得て、生計を立てていくために、まずもって「自立」は大事です。
そのために、一人前以上に業務をこなせる知識・技能を身につけること。

しかし、そこで安住していては長きキャリアの航海を渡っていくことは難しいです。
なぜならそういった「閉じた業務」を真面目にこなす人は世の中にたくさんいますし、機械やAI(人工知能)に置き換わる時代がきているからです。

先ほどの、「5+3=(自立的)」のフェーズに留まる人は代替されるリスクがある人材です。
また「○+○=8(半自律的)」のフェーズの仕事をする人もやはり半分受け身です。

すなわち目標や課題が組織や上司から振られるのを持っている状態です。
完全なる自律とは「○+○=○(自律的)フェーズ」の人です。

右辺、左辺の両方をつくり出せる人は、代替のきかない「人財」です。
そしておそらく両辺を自分でつくり出すと、おのずとその仕事は「自分ごと」となり、志事的・ミッション的な性質を帯びてきます。

そういった自律の仕事を積み重ねていくと、自然にキャリアは切り拓かれてきます。
自律的挑戦を重ねていけば想定外にキャリアは発展していきます、必ず。
何年か経って振り返れば、納得のいく、いやそれ以上に想定外に発展を遂げる職業人生になっているはずです。

出典:村山昇「キャリアウェルネス」

どうか、自律したシゴトをするようにしていってください。
いずれあなたのチームが、あなたの組織が、あなた自身が大きく成長し、キャリアを大きく広げてくれるはずです。


▎努力の方向性を見失わないこと

あなたは「努力すれば成果が出るのか」と悩んでいた時期があったかと思います。
なぜ報われないか、と嘆いたときもあったと記憶しています。

その問いに対する答えは、「YES」でもあり「NO」でもあります。

ただ今の僕だから言えるのですが、僕の経験則から努力は必ずしも報われるわけではないということです。
努力と成果は必ずしも比例しないとも言えます。
特に求める成果が高ければ高いほど、努力との相関は無くなります。
目指すべき成果が高ければ、努力だけでは片づけられません。

「1の努力をしたら1の成果に繋がってほしい」、というのは期待値としてあるわけですが、ハードルが高ければ高いほど、「1の努力をしても成果は0」、「2の努力をしても成果は0」だってあります。
ある意味無駄のように思える瞬間は必ず訪れます。

しかし、努力は不要だということでは決してありません。
なぜならば、努力というのは、成果を出すための入場チケットのようなものであり、必要条件の一つだからです。
多くの努力をしている人は必ずこの入場チケットを持っています。

そこがスタート地点です。

努力をしなければ、その土俵にすら立てないことを意味しています。
その上で、高いハードルを越えようとする場合、問われるのは「努力の有無」ではなく、「努力の質」であり、そして「継続」です。

ゴールを見据え、何をすべきかを逆算で考えてから、制約条件を踏まえてやるべきことを見定める。

そのようにして考えられたことをやり切って、初めて成果に近づく努力となりえるのだと思います。

元P&Gのトップマーケターで、現在株式会社刀の代表・森岡毅さんが残した言葉で以下のような考えがあります。

森岡さんは学生時代、数学が得意科目だったこともあり、数学の考え方をビジネスやマーケティングに応用して、森岡さん独自の数式や方程式を用いて、これまでに数々の成果を残してきました。

彼は、


上手くいかないときや理不尽だなと思うことは誰にでもあると思う。

上手くいかない、
理不尽な世界で必死にもがいて少しでも良くなるために努力する。

努力しても改善出来ない時に意識するべきことが「定数と変数」。

「定数」とは、決まった数のことで、変化しない数字。
「変数」とは、その値が一定ではない数字。

その上で、
定数は「自分の力ではどうしようもない事」
変数は「どうにかしなくてはいけない事」

この定数と変数を見極めて、「変数」を動かすこと。

つまり、自分の力でどうにかできることに対して人生の時間とエネルギーを使うことが大切である点です。

定数に時間とエネルギーを浪費すると、自分でコントロールできるところに時間の集中がいかない。
要領がよくない方は、どうしようもない所、つまり定数に取り組んでいる。

と言っています。

このように、努力はすればするほど良い、ということではなく、その努力というものには質というものが存在し、それが必要であり、ゴールに向かう際、その努力の方向性を見失わないでほしいと考えています。

そして、コントロールできること、コントロールできないこと、といった制約条件を踏まえたうえで、コントロール出来ることにだけフォーカスして、全力で数多くの打席に立ち、経験を積んで結果を出していく、ということがとても大切なのではないでしょうか。

努力といっても、何も考えない量だけの繰り返しではなく、意味のある正しい努力が必要。
努力の質を上げ継続させる、これをできるだけ若いうちから理解して、絶え間ない努力を重ねていってほしいと心から願っています。

そして、努力においてもう1つ大切な側面があります。
それは、努力が「本来想定しなかった別の成果を連れてくる」、ということです。
それは「セレンディピティ」と言い換えることもできると思います。
まさに「努力は運を支配する」考えです。

少しだけ話はそれますが、僕も好きな考え方ですが、
スティーブ・ジョブスが言った、「Connecting the Dots」という考えがあります。



「Connecting the Dots」

将来を見据えて、点(出来事)と点(出来事)を結びつけることはできません。後で振り返って見たときにしか、点と点を結びつけることはできないのです。

だから、あなたが方は、とにかく点と点が将来、結びつくことを信じなくてはなりません。

自分の直観、運命、人生、カルマ、たとえそれが何であれ、信じなくてはならないのです。

なぜなら、点と点が将来結びつき、道を切り開くと信じることは、自分の心に従う自信をあなたにもたらすからです。

たとえそのせいで、あなたが多くの人が通る道から外れるとしても、それこそが大きな違いをもたらすのです。

Steve Jobs 2005年スタンフォード大学卒業式辞から

これは色々な思考につながっていると思います。
例えば彼が聴講生として受けたカリグラフィーの授業のおかげで、マックにスタイリッシュな要素を取り入れることができたという経験。

このジョブスの考え方には、僕も大いに共感します。
形を変えて、時を超えて、別の成果を連れてくるのです。

そういう意味では、「努力は裏切らない」という言葉は正しい。
だからこそ私たちは、そういう「努力のパワー」を信じて励むのだと思います。

その時点では、もしかしたら無駄だと思うようなことも、後々の人生において、ある時ぱっと点(出来事や努力)と点(出来事や努力)がつながることがあったりします。

これは最短のルートで将来を見据えてできるようなことではなく、後で振り返ってみてはじめてそれがつながっていたのだな、ということに気づくのです。

頭ではわかってはいても、困難な出来事や努力を求められることに直面すると、それが将来に結び付くことをなかなか信じられなかったりします。
「それ、意味ありますか?」というやつです。

出来事と出来事が将来結びつくと信じることは自信につながります。
その自信こそが、道を切り開く原動力になるのです。

だから、先に述べたように、コントロールできる努力を惜しまずにすることも必要ですし、もしそうでない努力を強いられることがあったとしても、

自身を信じてその努力を惜しまないことも僕は必要だと思っています。

日々の仕事の中で、これは果たして何の意味があるのか、と思うようなことも多々あると思いますが、自身で信じること、何かこれは努力しておくべきなのではないか、と言葉では言い表すことができない直感が働いた時には、手間と時間を惜しまずに取り組むことをおススメします。

もしかしたらそうすることで、いつか、点と点が繋がり線となり、そしてその線と線がつながり面となり、いずれ大きな面は自身を覆いつくし、気づくと自身のとてつもない力となっている、ということを信じる力も同時に求められるのではないだろうか、と思っています。


▎仕事に「意味づけ」をすることの大切さ

あなたは仕事を「こなす・さばく」と効率性と作業として捉えていた時期がありましたね。
無機質でロジカル武装をして、他社/他者よりも一段階も二段階も高い階層でスピードと効率性、思考のフルスピードで仕事をしていたと記憶しています。その時のモチベーションは決して高くはなかったと思います。

日々仕事をしていると、「仕事に対するモチベーションが湧かない」、という悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

例えば、「頑張っているのに上司から評価されない」「報酬が見合ってない」といったことが悩みの中心であるケースなどがありますね。

この手のことがモチベーション不全の最大の理由になってしまう場合は、
暗黙の前提があります。

「モチベーションは外から与えてもらうものだ」というものです。

たとえば報酬や評価といった第三者による人為的な動機は「外発的動機」と呼ばれますが、これがモチベーションの中心になると不満ばかりが溜まります。

世の中は自分のために動いているわけではありませんから、
欲求が一時的に満たされても長続きしないのです。

したがって、モチベーションを維持していくためには、「外発的動機」の対極にある「内発的動機」に着眼する必要があります。

内発的動機とは、自分の内側から純粋に湧き上がってくるモチベーションのことです。
報酬などを抜きにして、シンプルに「やりたいからやる」ということです。

例えば「良い評価を得るため」だったり、「上司から認められたい」というのが主な理由であればそれは「外発的動機」です。

ですが「未知の世界が知りたいから」という理由であれば、「内発的動機」となります。

もちろん、ここで言いたいのは「やりたい仕事をやれ」という単純なメッセージではありません。
そうなれば理想ですが、そういう「内発的動機」が沸き起こってくる仕事に巡り会えない、という人も多いでしょう。

ここで言いたいのは、「内発的動機」が起きるように仕事の見方を変えてみよう、仕事に「意味づけ」を与えてみよう、ということです。

マクロミルの創業者でネットリサーチの生みの親 杉本哲哉さんが、10年以上前のいつかの全体会議で以下のように語ったのが、今でも僕の脳裏に鮮明に焼き付いています。


「ビジネスの中で好きでやりたいことができている人というのはこの世の中でほんのひと握り。

そんな奴はそうそういないよ。

多くの人は、何かの縁で与えられた、今ある場所で必死に仕事をしがむしゃらになって泥臭い仕事をしていく。

そこで結果を残して好きになっていくことだって大切」

これもある意味、今の仕事に対して意味づけを行うこと、その努力をせよ、ということにつながるとても記憶に残る言葉でした。

その言葉を聞くまでは、「業務をこなす・捌く」という意識が強かったような気がしています。

特にマクロミルは多くのクライアントを抱え、一人当たりが持つ業務量も、おそらく他社が追随できないような業務量を、他社よりも一段階も二段階も高い階層でスピードと効率性、思考のフルスピードで仕事をしている文化は多少なりともあります。

現に当時、感情を押し殺して、できるだけロボットのように、ロジカルシンキングを駆使しながら、心を持たないような仕事の仕方をしていた、と今振り返ってみても、そう思います。

自分の業務の足枷になるようなもの、直線的に評価を得るのに邪魔をするものはすべて切り捨てる、といったような同僚や他の部署との仕事というよりは一人殻にこもり、黙々と仕事をしていました。

ですが、自身の仕事を改めて振り返ってみた時、僕の仕事は一つでも企業のマーケティングなどの担当者が意思決定を下すために、リサーチ課題や内容を整理し、的確な意思決定が出来るよう支援すること、
そのためにリサーチの実査や設計は極めて重要な業務の一つであること、
そのためこの業務はクライアントの戦略や施策実行が上手くいくか行かないか、を左右するような重要なミッションを帯びているのだ、と。

またリサーチを実施する際、どうしてもロジカルに心理を解明したがりますが、人間というものはそこまで合理的に出来ている生き物ではないので、より深い人間理解が必要とされる。
リサーチの結果がすべて正しい、ということではないこと、そのためにリサーチ結果と人間の心理や行動経済学などの観点から、この調査のデータはどう解釈すればいいのだろうか、示唆出しをすればいいのだろうか、と。

ある時点から意志を持って仕事をするような仕方に大きくシフトするようになった、と感じました。

そうなってから、「自分は今まで仕事の意味を理解していなかったのではないか」とすら思えてきました。

そういう意識が浮かんできた瞬間に、仕事の中身も報酬も変わっていないのに、モチベーションの悩みは吹き飛んでいました。

これこそが「意味づけ」の力なのかもしれません。

つまらない仕事であっても、つまらなくしているのは自分なのであり、「意味づけ」ひとつで仕事に対する見方はどうにでも変わる、ということなのです。

もちろん「外発的動機」も大事ですが、長く続く社会人人生を生きていくためには、このような形で「内発的動機」を起動させることの方が大切です。

上司が認めてくれないから、とか、報酬がいまいちだから、といったような「外発的動機」が理由で仕事を変えたところで、また結局同じサイクルに陥りかねません。

仕事の意味というのは他人に与えてもらうものではなく、自分自身が与えるものです。

モチベーションが上がらずに苦しんでいるのであれば、ぜひ「意味」を精一杯与えてみてください。そこに道は見つかるかもしれません。



▎コンフォートゾーンから抜け出し成長する

長く一つの会社や同じ組織にずっといると、居心地の良いゾーンに達することがあります。
かくいうあなたも確か、一時期そこにどっぷりと浸かっていた時期があったと記憶しています。

コンフォートゾーンとは、文字通り「居心地のいい場所」という意味です。

人というものは、居心地のいい場所に居続けると成長しません。

決して一つの会社に長く務めることが悪いだの、同じ組織にいることが悪いだの、同じ仕事をずっとしているのが悪いだの、ということを言いたいのではありません。

コンフォートゾーンについて、元GEのノエル・ティシー氏によって整理されたコンセプトで、以下のような概念があります。

私たちがビジネスをして行く上で3つのゾーンがあると言われています。

  • コンフォートゾーン

  • ラーニングゾーン

  • パニックゾーン

元GEクロトンビル・リーダーシップセンターディレクター・ノール・M・ティシー
提唱フレームワーク

コンフォートゾーンにいると、自分が今持っているスキルセットで手の内に諸事を収めることができ、あまり汗をかく必要がありません。
むしろ、皆にちやほやされたり、尊敬されたりすることもあるでしょう。

ラーニングゾーンは、コンフォートゾーンから一歩出たところに広がっています。要するに、未知の領域です。
自分の今までのスキルセットがあまり通用しないため、冷や汗をかいて、いろいろなことを探していかなければなりません。

パニックゾーンは、ラーニングゾーンよりさらに外側に出たところに位置します。今までのスキルセットが通用しないばかりか、そこで何が起きているのかもよく分かりません。

自分のコントロール外の世界で、ややもすると精神的な不調をきたしかねないゾーンです。

この3つの領域のうち、僕たちビジネスパーソンが成長していくためには、ラーニングゾーンに常に身を置いておくべきだと思います。

コンフォートゾーンでは自身をより高めていくこと、さらに成長していくこと、にはとても適した環境ではないのです。

新しいスキルセットが必要とされないばかりか、自分の目と鼻の利くところで諸事を片づけることができてしまうためです。

一方でパニックゾーンでも、ポジティブな学びを得ることはできません。ストレスのために胃が痛くなって精神的に疲れてしまうなど、生産的な学習を生まない環境であるためです。

そしてここで最も大切なのは、
自身が今どのゾーンにいるのかを確かめることです。

その方法としては、相対的な比較によって自身のことを評価していく必要があります。

具体的には、自分が抱いている「あるべき姿」、「過去の自分」、「他者」の側面から現在の自分を比較します。
これらと比べて、今自分がコンフォートゾーンにいるのかどうかを判断していくのです。

あるべき自分のバーが低かったり、過去に十分な経験を積んでいなかったり、周りのメンバーにあまり恵まれていなかったりすると、「それなりに汗をかいている」という理由で、自分はラーニングゾーンにいると安易に判断してしまいがちです。

チャレンジを続けている人や、自分のスキルセットをどんどん刷新しながら頑張っている人が近くにいると、「自分はコンフォートゾーンにいるかもしれない」と考えると思います。

そのような視点を経て、今自身でどういう環境に身を置くかということが、重要なのです。

そして、このコンフォートゾーンというのは、自身の体験からですが、年齢を重ねれば重ねるほど、身を置きたくなるとても居心地の良い場所であり、そこに甘えてしまう怖さをはらんでいます。

中堅といわれるビジネスパーソンにとって、その居心地の良い場所に浸りやすいということです。

かくいう自分もそうだと言えました、とにかく楽なんです。

ですが一歩引いて自身を俯瞰してみると、コンフォートゾーンは決して長続きするものではないと感じることがあります。

ですので、特に若いことから、コンフォートゾーンに身を置くことだけを考えて仕事をしないよう、自身で心掛けてきましたし、これからも常にチャレンジしていきたいと心から思っています。

そのために常に自身の環境を俯瞰し、ラーニングゾーンに身を置くことを心掛け、成長していくことを忘れないようにしています。

どうか、若いビジネスパーソンも常にラーニングゾーンで、自らの価値を磨いてほしいと心から思います。

そして、ラーニングゾーンで学びをしたものをインプットのみで終わらせず、しっかりとアウトプットしていく(若手に教えていく、伝えていく)ことでより確信として身についていくことも忘れないでおいてほしいと思います。

「知っている」と「経験した」では、天と地ほどの差があることを理解しておくべきで、年齢を重ねていくと、さほど経験もしていない人がただ単に知っているだけ、なのにあたかも自身は多くを経験してきたような言動に出るような、悲しい大人になってほしくない、と少しでも願っています。


▎優れたリーダーはどうやって行動を促すか

どのように部下をまとめ、導けばよいのか、これからリーダー(マネジメント)に進む人、今そのポジションにいる人もいると思います。
ぼく自身はマネジメント職には進んでいませんが、それでもメンバーの技術指導やスキル向上において、メンバーを見ていました。
そこで人をどのように導いていけばいいのか、ということに頭を悩ませていた時期がありましたね。

多くの会社では「上司はいるけれどリーダーはいない」という人もいます。
僕の考えるリーダーの本質とは、「人を奮い立たせ導くこと」だと思います。

日本のリーダーによく見られる失敗例として、「なんでも自分でやってしまう」ことが挙げられます。

「部下をチェスの駒のように扱っている、または、あのスタッフには任せられない、それだけの力量がない」という認識を持って接していたりすると、部下に仕事を振ることができず、結果として「自分でやってしまったほうが早い」と思ってしまいます。

恐らく、メンバーの時はとても仕事ができる人だった人がリーダーになると、そういう傾向が強い気がします。

ですが、必ずしも、「仕事ができる人」=「人を奮い立たせ導くことができる人」ではありません。

「WHYから始めよ」の著者で、国連、アメリカ連邦議会、米陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊、ディズニー、アメリカン航空など多数の企業で組織コンサルタントをしているサイモン・シネック(Simon Sinek)は、リーダーのあるべき姿として、以下のように語っています。


物事がうまくいかなかったときに、
それをどう説明しますか?

あるいは常識を全てひっくり返すようなことを誰かが成し遂げた時に、それをどう説明しますか?

例えば、どうしてアップルはあれほど革新的なのか。

でもコンピューターの会社には変わりありません。
ではなぜアップルには他と違う何かがあるように見えるのか。
それは何か特別な要因が働いています。

私はある発見をしました。
この発見により世界がどう動いているのか、
見方がすっかり変わりました。

そればかりか世界に対する接し方も大きく変わりました。

明らかになったことはあるパターンです。

わかったのは、偉大で人を動かす指導者や組織は全て考え、行動し、伝える仕方が全く同じなのです。

そしてそのやり方は、他の人たちとは正反対なのです。
それを定式化したのは以下です。

サイモン・シネック提唱 「ゴールデンサークル」モデル


まず、人の思考は「ゴールデンサークル」という3つの円のフレームによって階層をわけることができます。

この小さなアイディアである組織やリーダーがなぜ他にはない力を得るのか説明できます。

用語を簡単に説明します。

What:世の中の誰にせよ、どの組織にせよ、自分たちが何をしているかは誰でも100%わかっています。

How:どうやるかをわかっている人もいます。差別化する提案価値や固有プロセスとか独自のセールスポイントと呼ばれるかもしれません。

Why:でも「なぜやっているのか」がわかっている人や組織は非常に少ないのです。

「利益」は「なぜ」の答えではありません、
それは結果です。
「なぜ」というときには目的を問うています。

何のために?何を信じているのか?その組織の存在する理由は何か?なぜそれが大事なのか?

実際のところ、
多くの人の伝えるやり方は、外から中に向かいます、
明確なものから曖昧なものに向かうのです。

多くの人は、
What(何をするのか) → How(どうやるのか) という順序で物事を考え、Why(なぜやるのか)を知らないケースが多いのです。

伝える際にも、What → How という内容のみを伝えています。

優れたリーダーはその真逆で中から外に向かいます。

Why(なぜやるのか) → How(どうやるのか) → What(何をするのか) という方向で考え伝えています。

多くの企業が伝えている情報
多くの企業がマーケティングの際に伝えている情報を考えてみると、

・我々のコンピュータは素晴らしいです。
・そして美しいデザインで簡単に使えユーザーフレンドリーです。
・ひとついかがですか?

顧客にこのように伝えています。
こう聞いてどう思いますか?これでは心は動かされません。

■Appleが伝える情報
一方、Appleが伝えている情報は、

・我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています。
・違う考え方に価値があると信じています。
・私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使えて親しみやすい製品です。
・こうして素晴らしいコンピュータができあがりました。

このようなものです。いかがですか?
この違いは、伝える情報の順番を逆(なぜやるか→どうやるのか→なにをするのか)にしただけです。
それなのに、こうまでも印象が違うのは、なぜか。

それは、
人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるからです。

自分が提供するものを必要とする人とビジネスをするのではなく、
自分の信じることを信じる人とビジネスするのを目標とすべきなのです。

一番肝心なのは、
ただの心理的なものではなく、いち意見ではなく、
全ては生物学の原理に基づいている事です。
心理学ではなく生物学です。

ヒトの脳の断面図を上から見ると脳は3つの主要な部位に分かれています。
それはゴールデンサークルと対応しています。

大脳新皮質は「何を」のレベルに対応します。
新皮質は合理的・分析的な思考と言語とを司ります。

内側の二つの大脳辺緑系に対応し感情・信頼・忠誠心などを司ります。

またヒトの行動を司り、全ての意思決定を行いますが言語能力はありません、
言い換えれば、外(What→How)から中(Why)へのコミュニケーションを行っている時、確かに大量の複雑な情報を処理できます。

機能やメリットや事実や数値などです、しかし行動につながりません。

中(Why)から外(How→What)へのコミュニケーションを行っている時には行動を制御する脳の部分と直接コミュニケーションすることが出来ます。

言語や行為によって理由付けは後からすることができます。
直感的な決定はここから生まれます。

時には誰かにあらゆる事実やデータを伝えても、
「細かい事実はわかったけど、どうも納得感が得られない」と言われる事があります、どうしてここで「感」なのでしょうか。

理由は、脳の意思決定をする部位は言葉を扱えないからです。
すべては大脳辺緑系(Whyと対になる部分)で起きています。
辺緑系は意思決定を司り、言語を担当しません。

人々は「なぜやっているのか」に反応するのに、なぜやっているのか自分でわかっていなければ何か買うにせよ、人を動かすにせよ、みんなを惹きつけられるわけがありません。

さらにはあなたがしていることに忠誠心を持って、加わりたいなどと思わせられるわけがないのです。

単に仕事を求めている人を雇うのではなく、自分の信念を信じてくれる人を雇う事を目指すべきです。

仕事ができるというだけの理由で採用した人はお金のために働くでしょう。

しかしあなたの信念を信じてくれる人を雇えば、その人は血と汗と涙を流して働くのです。

人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。

リーダーと導く人は違います。
リーダーというのは権威や権力の座にある人です。
でも導く人というのは、皆を動かします。

個人であれ組織であれ僕たちが導く人に従うのは、
そうしなければならないからではなく、そうしたいからです。
導く人に従うのは彼らのためでなく、自分自身のためです。

そして「なぜ」から始める人が、まわりの人を動かしさらに周りを動かす人を見出せる力を持つのです。

Simon Sinek TED

人を導くことができるリーダーであるために、リーダーは「インスパイア型リーダー」であるべきだと思います。

リーダーは人を奮い立たせる存在であり、人を奮い立たせることに向けてすべての行動を選択する必要があります

奮い立つというのは、本人の内側から情熱が立ち昇り、行動へのエネルギーが充満してくることである。それは、決してアメやムチによって引き起こせるものではありません。

人を奮い立たせるために最も大事なのが、「なぜ」を伝えることであり、リーダー自身が、自分はなぜ(この組織やチームを)こうしたいのか、なぜそうする必要があるのか、という目的の共有なくして人を先導することはできないのです。

どうか、リーダーを目指す方、今リーダーで人を導いていく方は、あなた自身のWhyをしっかりと伝えて人を動かしていってください。

人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのですから。


▎物事の捉え方で人生は変わる

あなたはとてもネガティブで慎重であるがために、つい「できない理由」や「難しいとあきらめる言い訳」を探していた時がありましたね。
そして、もしその困難や問題を乗り越えようと努力するときに、そのことばかりに囚われて手一杯になり、そこから抜け出せなかった苦い経験があることも知っています。

人は物事をどのように捉えるのか、
これはビジネスではとても大切な要素の一つです。

「WHYから始めよ」の著者で、国連、アメリカ連邦議会、米陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊、ディズニー、アメリカン航空など多数の企業で組織コンサルタントをしているサイモン・シネック(Simon Sinek)は、物事の捉え方について以下のように語っています。


人間の脳というのは、否定形の指示を処理できません。

例えば、こうです。

”ゾウを思い浮かべないで”

と言われたら、どうでしょう。
あなたは真っ先にゾウを思い浮かべてしまったのではないでしょうか。


人間は自分自身の脳に「○○するな」という指示は送れません。
我々の脳は「するな」と言われると、むしろ強く意識してしまいます。

例えばスキーも同じです。
たくさんの木の間を滑っていくとしましょう。
「木に当たらないように、木に当たらないように、木に当たらないように」
すると、何が起きるでしょうか。
木しか見てない、木しか見えていないんです。

あなたは思うでしょう、
「こんな沢山木がある中をはたしていったいどうやって進むんだ」、と。

反対に、
「通れる道を探す、通れる道を探す、通れる道を探す」
そう考えると、通るべき道が見えてきます。

あなたにとっても同じです。
障害物に目を向けると、見えるのは障害物だけです。

道について考えれば、見えてくるのは、あなたが進むべき道だけです。
すべてはあなたが決めていることなんです。
視点次第で、あなたの人生は変えられる。

また同時に困難や障害物だけに視点を合わせてばかりいると、手一杯になって他の物事を見ることができなくなってそれ以外のものが抜け落ちてしまいます

そして人は不思議なもので、そのことだけを考えてばかりいると、ネガティブなことに囚われてしまい、そこから抜け出せなくなって、いつしかできない理由を探すことが当たり前の人間になってしまいます。

結果として、チャレンジすることを恐れ、出来ない理由を探し続け、どうしたらできるかという思考を放棄することに慣れていってしまいます。

ですから、もしそういった場面に直面したら、出来ない理由ばかり探さずに、どうしたらできるだろうか、という視点で物事に臨むクセづけをしていってみてください。

自ずとできる方法を探す思考に切り替わり、物事を一歩も二歩も先に進めることができるはずです。

気付けばその先には自身を一段階も二段階も成長させてくれる力がついているはずです。

そういう心と気持ちを持った大人になっていってほしいと心から願います。

物事は捉え方次第で、いくらでも変えることはできるのですから。


▎最後に

最後に。

どうか、ココロとカラダを大切に健康に。
自身が思っているほど人のココロとカラダというのは強くできていません。

若い頃のムリの一つや二つはしておくべき、という考えは否定はしません。ただ寝ないでも平気、と思っていてそういった行動をしていると、いつか歳を重ねるとボディーブローのように蓄積して、結果として体にガタが来ます。
その時に必ず「あの時にもっと体を労わってあげればよかった」、「あの時に無理をしなければよかった」と思うはずです。

「努力をすること」と、「ムリをすること」は決して同義ではありません。
努力を惜しまず、真面目に取り組み、曲がったことが大嫌いで、これと思ったことに自らを省みずムリをする人も多いと思います。

まわりを気にして、何かに追われるよう、焦りや成長していないのではないか、という不安があることはわかっています。

ただ、一つ確かなことは、度を越したムリを自身に強いなくても、ビジネスパーソンだけにとどまらず、人としての成長はできます。

ビジネスでもそうだし、何をするにも、カラダとココロは資本です。
「健康であること」が当たり前のように思わないでほしいと思います。

ココロとカラダを健康に、健やかに、大切にするために、
人生で大切なことは、

  • 度を越したムリをしないこと

  • 人に認められるために頑張らないこと

  • 他人と比べずに、過去の自分と比べること

  • 他人と同様に自分にも優しくなること

  • 辛かったりしんどかったら、一度距離をおくこと

  • 人の期待に過度に応えないこと

  • 有限の目標だけでなく、無限の目標を持つこと

  • 困っている人を助けること

  • 求めるのではなく、与えること

  • 失敗をすること

  • 失敗を恐れず挑戦し続けること

  • 物事を深刻に考えないこと

  • ズルをしないこと

  • 環境を選ぶこと

  • 出会う人を選ぶこと

  • 自分の機嫌は自分でとること

  • あるがままの自分を受け入れること

  • 自分の人生をしっかりと考えること

  • 親友や戦友を見つけること

  • 自分の安心できる場所を持つこと

  • 当たり前の日々が送れることが一番大切であること

  • しっかりと食べ、よく寝て、よくカラダを動かすこと

  • 前向きな気持ちを持つこと

  • 誠実でいること

  • よく笑うこと

  • 感謝すること

  • 幸せを探すのではなく、幸せは既に身近にあると自覚すること

だいたいのことはここに集約されます。
ビジネスでもプライベートでも、上にあるようなことを意識しながら生きていくだけで、心が軽くなることもあります。

どうかそのようなビジネス思考を持って、これからのキャリアを歩んでいってほしいな、と思います。

長くなりましたが、ここらへんで終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。

次のチャレンジは、事業会社サイドで新たなキャリアを歩んでいくことになります。
どうか、皆さんの耳にも風の噂が届くような活躍が出来るよう、精進していきたいと思います。


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