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ヴェイコ・オウンプー『Autumn Ball』エストニア、タリンの孤独な人たち

現代のエストニアはタリンに暮らす"何かが欠けた"人々の群像劇である。マティという若い作家は元妻に未練がましく付きまとい、小説も進まず、他の女性にもダル絡みするが尽く失敗する。アグスティという理髪師は退屈で孤独な独身生活も老境に差し掛かり、ロッタという少女と親しくなろうとするが、小児性愛者と勘違いされる。ロッタの母親ラウラは下らないソープオペラに号泣して許されない恋愛への憧れに身を焦がすが、酒飲み暴力元夫の呪縛から抜け出せずにいる。マウラーという建築家は人間についてという深遠なる謎に思い悩むが、横で苦しむ妻はほったらかしにしている。そして、テオというクローク係は併設する高級レストランに来る孤独な女性たちに惚れられるのだが、遊びとしてしか見られていないし過ごしてきた世界の違いから会話も噛み合わない。彼らは一様に孤独で、身の回りから断絶しており、誰かを求めているがそれが互いではないのだ。

そのぎこちなさともどかしさに切なくなるが、逆に彼らの話が全く交わらない分それぞれに掛けられる時間が減ることを意味していて、実に表面的で薄っぺらい映画になってしまっている。特にアグスティなんて合計5分くらいしか出てこないので全く必要ない。人間同士の薄っぺらい関係性を指摘するのに映画まで薄っぺらくする必要なないんじゃないか。

印象的なシーンとしてテオが"バルト諸国会議"なる怪しげな会合の食事会に参加した際、近付いてきた女性が西欧と東欧の関係性について指摘する場面がある。彼女は東欧が絶えずアイデンティティを模索し続けることをアイデンティティとするように西欧諸国が資金提供をすることについて、植民地主義そのものであるとしている。そして"バルト諸国"なんてもんなねぇ!と叫ぶのだ。その発言が回収されること無くただ言っただけになってるのは残念だが、普段"バルト三国"と言ってポーランドの東にあるちっこい国くらいの感覚で無意識に三国を同一視していることに対して"エストニアはエストニアだ"という反発だとすると申し訳なくなってくる。

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マティの元妻役で出演している Mirtel Pohla という女優が美しすぎるので鑑賞に至ったわけだが、女優で作品を選ぶと爆死すると10年前から知ってるのに未だにやってしまう。

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・作品データ

原題:Sügisball
上映時間:118分
監督:Veiko Õunpuu
製作:2007年(エストニア)

・評価:40点

・エストニア映画TOP10 その他の作品

1 . Arvo Kruusement『Spring』エストニア、真実を語りたがる悪党はいない (1969)
2 . Kaljo Kiisk『Madness』エストニア、精神病院にいる英国のスパイは誰だ? (1969)
3 . Peeter Simm『The Ideal Landscape』エストニア、種蒔きが…終わりません!! (1981)
4 . Grigori Kromanov『The Last Relic』ロビン・フッド、エストニアの大地を駆ける (1969)
5 . Sulev Keedus『Georgica』エストニア、見捨てられた孤島で二人… (1998)
6 . Kaljo Kiisk『The Adventurer / Happy-Go-Lucky』エストニア、世界の支配者ニペルナーディ (1983)
7 . Grigori Kromanov『Dead Mountaineer's Hotel』密室ホテル殺人事件、光と闇のSFノワール (1979)
8 . Leida Laius & Arvo Iho『Games For Schoolchildren』エストニア、孤児院に生きる少年少女たち (1985)
9 . Grigori Kromanov & Jüri Müür『The Misadventures of the New Satan』悪魔よ、人間が救済するに足る存在と証明せよ (1964)
10 . Olav Neuland『Nest of Winds』エストニア、世界に翻弄される農夫の絶望 (1979)

♪ その他のエストニア映画 ♪ (公開年順)
Leida Laius『The Milkman of Mäeküla』エストニア、欲に目が眩んだ男たちの末路 (1965)
Kaljo Kiisk『The Midday Ferry』ある日、燃え上がるフェリーにて (1967)
Veljo Käsper『Postmark from Vienna』エストニア、切手を巡る"真実"ゲーム (1968)
Leida Laius『Werewolf』エストニア、陽光の煌めきと幻惑の森 (1968)
Virve Aruoja & Jaan Tooming『Colorful Dreams』エストニア、カティのワンダーランドを垣間見る (1975)
Helle Karis-Murdmaa『Bumpy』エストニアの"ヘンゼルとグレーテル"は平和を訴える (1981)
Peeter Simm『Arabella, the Pirate's Daughter』海賊の娘、善悪を知る (1982)

ライナル・サルネ『Where Souls Go』エストニア、悪魔へのお願いを取り消したいんですが
ライナル・サルネ『The Idiot』全時代へ一般化されたエストニアの"白痴"
ライナル・サルネ『ノベンバー』現実と魔界が交錯するアニミズム的幻想世界
ヴェイコ・オウンプー『Autumn Ball』エストニア、タリンの孤独な人たち

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