Knights of Odessa

東欧/旧ユーゴ/ロシア/サイレント映画愛好家。好きな女優は必ず寡作。筋金入りの非線形天邪鬼。2022年はハンガリー&ブルガリア&エストニアを中心的に。2020年代はカンヌ映画祭のコンペ作品をコンプするぞ! 依頼等はknightsofodessa0715 at gmail まで

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東欧/旧ユーゴ/ロシア/サイレント映画愛好家。好きな女優は必ず寡作。筋金入りの非線形天邪鬼。2022年はハンガリー&ブルガリア&エストニアを中心的に。2020年代はカンヌ映画祭のコンペ作品をコンプするぞ! 依頼等はknightsofodessa0715 at gmail まで

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  • 世界の(未)公開映画

    東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。

  • 新作映画2022

    2021年の新作ベスト選考に関わる作品をまとめています。新作の定義は、今年も2020/2021/2022年製作の作品で自分が未見の作品ということにしました。

  • 東欧/バルカン映画

    自身の映画記事のうち、東欧映画とバルカン映画に区分されるものをまとめています。

  • ベルリン国際映画祭コンペ選出作品たち

    カンヌ映画祭のコンペ制覇にあわせて、ベルリン映画祭のコンペもゆるゆると書いていきます。2020年から始まったエンカウンターズ部門の記事も入れます。

  • ロシア/カフカス/中央アジア映画

    執筆した映画記事のうち、ロシア/カフカス/中央アジア映画に区分されるものをまとめています。

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ハンガリー映画史① 黎明期(1896~1910)

ハンガリー映画といえばネメシュ・ラースロー『サンセット』が公開され、エニェディ・イルディコ『私の20世紀』やタル・ベーラ『サタンタンゴ』がリバイバル上映される今年は正にハンガリー映画イヤーと言えるかもしれない。 ハンガリーと世界映画史の関わりは一見謎に包まれている。ハンガリー映画で有名な作品は何かと言われると、ファーブリ・ゾルタンやヤンチョー・ミクロシュなどが挙げられるが、日本ではイマイチ知られていない。しかし、20世紀フォックスの創設者ウィリアム・フォックスも、パラマウン

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    • パトリック・タム『風にバラは散った』我が心は永遠の薔薇のように

      傑作。パトリック・タムの長編七作目。田舎でバーを経営するチャンには美しい一人娘ラップと彼女のことを好いているリックという男がいた。ある日、チャンは昔馴染みのマフィアに押し付けられた仕事に失敗してしまい、ラップは父親を助けるためにマフィアのボスの愛人となった。一方、フィリピンに逃されたリックは6年後、殺し屋となって香港に戻ってくる…という話。『名剣』のような息もつかせぬ展開や『愛殺』のような異常さは控えめだが、ジョイ・ウォンを中心に巻き起こるベタベタな恋愛と突発的な暴力の緩急が

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      • アナ・ローズ・ホルマー&サエラ・デイヴィス『God's Creatures』荒涼とした世界に、絶望を告げる風が吹く

        アナ・ローズ・ホルマー長編劇映画二作目。今回は前作『The Fits』の共同脚本家/編集者だったサエラ・デイヴィスとの共作であり、アクの強い監督のアク抜きが上手いA24製作配給作品となった。今回の舞台はアイルランド北西部沿岸の寂れた港町である。男たちはカキ養殖や鮭漁のため、すぐにでも転覆しそうな木造船に乗って海に出て、その間に女たちはアイリーン・オハラ監督の下、水産加工場のベルトコンベアで働いている。前作『The Fits』では不穏な空気が足元から這い上がってくるかのように、

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        • アナ・ローズ・ホルマー『The Fits』コミュニティセンターのダンスクラブで起こるアメリカ版"RAW"

          傑作。アナ・ローズ・ホルマー長編劇映画一作目。11歳の少女トニは、シンシナティにあるリンカーン・コミュニティ・センターのボクシングジムで、兄のジャーメインと練習している。ある日、体育館で女子ダンスクラブの練習風景を見たトニは、ダンスへの憧れを募らせ入部する。しかし、パンチのパートが明らかにガチすぎる以外、テンポもズレてるし、振り付けも間違えまくっている。そのため、ボクジング時代と同じく、様々な場所でダンスを練習することになる。まぁそこまでは想像の通りだが、本作品はそんなスポ根

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          Sulev Keedus『Georgica』エストニア、見捨てられた孤島で二人…

          Sulev Keedus長編二作目。2002年にエストニアの映画批評家が選んだエストニア映画TOP10で5位に輝いた一作で、独立後の作品では唯一のランクインとなる。題名はウェルギリウス『農耕詩』を指しているが、農業とは全く関係がない。ソ連の戦闘機が夜間射撃の練習に使う無人島に老人が一人で暮らしていた。アフリカで宣教師をしていた老人は、その思い出に囚われながら、昼間は不毛の大地に持ち込んだミツバチや"宣教師"と名付けた白馬の世話をし、夜間は爆撃機の演習結果を伝えて生活をしていた

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          アナ・リリー・アミールポアー『Mona Lisa and the Blood Moon』月が見守るニューオーリンズの夜

          2021年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。アナ・リリー・アミールポアーの長編三作目。怪しげな夜の沼地から真っ白な隔離病棟の房へと移ると、そこにはモナリザという名の若い女性が拘束具を付けた状態で床に座って前後に揺れている。そこにやって来た看護師を操って彼女は脱走する。相手を見つめることでその身体を乗っ取り、意のままに動かす超能力を持っているのだ。親切な若者たちにニューオーリンズの場所を教えてもらったモナは、彼らにもらった靴を履いて、真夜中の都市へと降り立つ。彼女は10歳の

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          ジョージ・ミラー『Three Thousand Years of Longing』物語と神秘の復権と神話の再創造

          ジョージ・ミラー長編最新作。A・S・バイアットの短編小説『The Djinn in the Nightingale's Eye』の映画化作品。主人公アリシアは人類全ての物語に共通する真理を見出そうとする物語論研究者である。彼女は公演でこう語る。気象データや天体の動きなどを知らない太古の人々は、全ての驚異と災害の背後にある未知の神秘に名前を付けた。しかし、今では物語は科学理論で塗り替えられ、未知の神秘はただのメタファー或いは漫画のキャラとして消費されるにすぎない存在となってしま

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          Virve Aruoja & Jaan Tooming『Colorful Dreams』エストニア、カティのワンダーランドを垣間見る

          圧倒的大傑作。東欧の子供映画を観よう!企画。小さなカティは、田舎の祖母の家で夏を過ごすことに。彼女の遊び相手は村の少年たち、動物、花、風、石など、田舎の世界全体であり、その中で彼女は太陽を呼び起こし、花畑で舞い踊り、羊を追い回し、網を掻い潜り、森を走り抜ける。発見のスリルに満ち溢れた魚眼ショット、矢継ぎ早な編集、神秘的で広大な自然をふんだんに盛り込んだ万華鏡のような白昼夢が、子供のとりとめもない思考さながらに展開されていく。こんなに終始遊びだけを映してカメラが暴れまくる映画が

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          ミヒャエル・コッホ『A Piece of Sky』スイス、変質していく男と支え続ける女

          傑作。2022年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。スイスの山村にて、マルコはアロイスの農場で働いている。彼は低地出身で、村人は部外者の彼を値踏みするように見ているが、寡黙で働き者のマルコはすぐに地元に馴染む。一方、アンナは小学校低学年くらいの娘ジュリアを育てるシングルマザーで、配達員やバーテンダーなどの仕事を掛け持ちして生活していた。二人は愛し合っていた。マルコはジュリアの良い父親でもあった。しかし結婚直後、マルコに悪性の脳腫瘍が発覚し、手術は成功するが明らかに変質してしまっ

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          Leida Laius & Arvo Iho『Games For Schoolchildren』エストニア、孤児院に生きる少年少女たち

          レイダ・ライウス長編五作目。東欧の子供映画を観よう!企画。2002年にエストニアの映画批評家が選んだエストニア映画TOP10で8位に輝いた一作。シルヴィア・ランナマー『継母』の映画化作品。1980年代後半、ソ連はペレストロイカの時代に入ったことで、映画監督たちはこぞって同時代のソ連社会の否定的な側面、売春や麻薬中毒や犯罪などを描き始めた。代表的な作品はセルゲイ・ソロヴィヨフ『アッサ』、キラ・ムラトワ『無気力症シンドローム』、パーヴェル・ルンギン『タクシー・ブルース』など。この

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          アレクサンドル・ソクーロフ『フェアリーテイル』自己陶酔と終わりなき怠惰の煉獄

          アレクサンドル・ソクーロフ最新作。これまで数多くの歴史上の人物を役者に演じさせることで映画に登場させてきたソクーロフが、とうとう本人の写真をディープフェイクで動かすことで、"本人"を登場させることとなった。いきなり登場するのは大量の花に囲まれた棺に横たわる有名なスターリンの写真で、彼は目を開き、もぞもぞと手を動かし、目覚めた世界のことではなく自分のことをモゴモゴと語る。それを近くで笑っているのがヒトラーで、スターリンの隣にはキリストが横たわり、それらをチャーチルやムッソリーニ

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          ジョナサン・デイヴィス『Topology of Sirens』音で空間を蘇らせ、空間で音を可視化する

          大傑作。ジョナサン・デイヴィス初長編作品。ロサンゼルス郊外、穏やかな自然に溢れた、まるで時間が止まったかのような地域にある亡き伯母の家に引っ越してきた音楽家のキャス。鍵のかかった押入れにしまってあったハーディガーディの中に謎のカセットテープを発見した彼女は、伯母が辿った音の探究の旅路を辿り直す。物質を起点に感情や時間などを辿り直すのはソフィア・ボーダノヴィッチのような手法だが、興味深いのは本作品は"音"についての映画であり、常になんらかの"音"が流れていることだ。ここでは会話

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          センベーヌ・ウスマン『Faat Kiné』セネガル、ある自由な女性についての物語

          大傑作。センベーヌ・ウスマン長編八作目。初長編『Black Girl』以降、セネガルにおける女性の声を過去/現在問わず拾い上げてきたセンベーヌの集大成のような作品。主人公キネは、未婚の母親という汚名に屈せず、家父長社会でキャリアを築き、今ではガソリンスタンドのマネージャーをしている。彼女の事務所にはひっきりになしに人が訪れる。足が悪いパテはスタンドの一同が金を集めて買ってあげた車椅子を無くしたと屈託のない笑顔で言い張り、花売りの友人は毎朝机上の花瓶を取り替えてくれて、ずっと両

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          Sofia Bohdanowicz他『A Woman Escapes』行為によって他者と繋がり記憶すること

          大傑作。立て続けに友人を二人亡くしたソフィア・ボーダノヴィッチはやり場のない喪失感を抱えていた。そんなとき、グッゲンハイム美術館で開催されていたヒルマ・アフ・クリント特集で彼女の絵画に出会い、記憶を記号や物質に結びつけることで悲しみを受容することができた。この過程は前作『Point and Line to Plane』として映像化され、彼らの記憶は永遠のものとなった。しかし、そこに更なる訃報が届く。長編二作目『Maison du Bonheur』の主人公だったジュリアーヌ・セ

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          カルラ・シモン『Alcarràs』スペイン、ある桃農家一族の肖像

          2022年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品、金熊賞受賞作。子供たちが原っぱに捨てられた車で宇宙船ごっこに興じている。車は長年の遊びの果てに秘密基地化しており、子供たちの重要な遊び道具だった。しかし、ふと目を離した隙にクレーンで撤去されてしまった。幸福と平穏は永続しない。一気に不穏な空気が立ち込める。先祖代々桃農園を経営するソレ家には危機が訪れていた。地主ピニョルがソレ家の土地にソーラーパネルを設置するため、一家に立ち退きを要求したのだ。土地の借用が口約束だったことを知った一家

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          Sofia Bohdanowiczとその短編作品の全て

          英語圏カナダ新世代の代表格として頻繁に名前を挙げられる監督としてソフィア・ボーダノヴィッチがいる。彼女の作品は物質から感情や歴史をたどる作品、そして映画作家にとっての映画を詩人にとっての詩作と対比させて映像表現を模索する作品などが興味深いが多く、私とては当代最高の監督の一人だと思っているのだが、如何せん短編作品が多く一つの記事にしにくい。ということで、ここでは彼女の短編作品について書いていこうと思う。 『Another Prayer』(2013)『An Evening』『A

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