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Binka Zhelyazkova & Hristo Ganev『Life Quietly Moves On...』ブルガリア、パルチザン神話の果てしなき重さ
人生ベスト。ビンカ・ジェリャズコヴァ(Binka Zhelyazkova)長編一作目。ブルガリア初の女性監督による長編映画。夫で長年の協力者だったフリスト・ガネフが共同監督している。彼は1924年生まれの元パルチザンという経歴の持ち主であり、青年時代にパルチザンに参加する視点人物の一人パヴレは彼の経験を基にしているのかもしれない。製作当時はポーランド(『灰とダイヤモンド』は1958年公開)やチェコ、ユーゴスラビア等でパルチザン映画が製作される前で(特にユーゴスラビアでは60年
アラン・キュニー『The Annunciation of Marie』"見えないこと"の反復の中にある"見えること"の神聖さについて
人生ベスト。俳優アラン・キュニーの残した最初で最後の長編作品。ポール・クローデル「マリアへのお告げ」の映画化作品。キュニーとクローデルは友人関係にあったらしく、晩年には彼の妹を題材にした『カミーユ・クローデル』で二人の父親ルイ=プロスペル・クローデル役を演じている。物語は原作と同じく主人公ヴィオレーヌが聖堂建築家のピエールと別れる場面から始まる。目を隠すように黒いハットを深々と被って馬に乗るピエールを正面から捉え、すると画面左下から両手の人差し指で作った十字が"止まって"とい
アレクサンドル・レクヴィアシュヴィリ『The 19th Century Georgian Chronicle』ジョージア、森の村を守るために
人生ベスト。アレクサンドル・レクヴィアシュヴィリ長編一作目。オタール・イオセリアーニやギオルギ・シェンゲラヤの監督デビュー作、そして『放浪の画家 ピロスマニ』で撮影監督を務めたレクヴィアシュヴィリが満を持して撮った一本。森の中にある村に青年が帰ってくる。行政による森の開拓が目前に迫り、村は青年に全てを託して送り出す。青年には病気の母親がいた。彼女は医者に"遠くの木を見ると心が落ち着くよ"と言われており、この言葉によって青年の中で森の存続と母親(の余命)が重ねられる。村は長年そ