KnightsofOdessa
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マルガレーテ・フォン・トロッタ『Ingeborg Bachmann – Journey into the Desert』謎多きインゲボルク・バッハマンを断片的に観察する
2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。マルガレーテ・フォン・トロッタ長編22作目、ベルリン映画祭のコンペは『Sheer Madness』以来40年ぶり二度目。ヴィッキー・クリープスに実在の人物を演じてもらおう系映画の第二弾(第一弾はマリー・クロイツァー『エリザベート 1878』、三銃士のアンヌ・ドートリッシュはノーカン)。40年前に撮っていたらバルバラ・スコヴァが主演だっただろう。物語は二人+一人の男と付き合っていたそれぞれの時期をバラバラに繋いだ構造を取っている。その
Iva Radivojević『When the Phone Rang』セルビア、"受話器を置いたとき私は独りだった"
大傑作。Iva Radivojević長編一作目。ユーゴスラビア内戦によって国外へ逃れた子供たちが大人になって故郷に戻り映画を作るというトレンドは以前紹介した通りだが、その多くが自らのアイデンティティの所在を探る作品だったことを鑑みると、本作品もその自己セラピー的な側面は変わらずとも手法としてはそこからは外れている。物語は1990年代初頭のセルビアのある街を舞台に、11歳の少女ラナの家に様々な人から掛かってくる電話を中心に置き、体系化されていない散発的な記憶の集合体を、"金曜
Heiny Srour『The Hour of Liberation Has Arrived』オマーン、ドファール反乱と女性の権利について
傑作。1974年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。同映画祭コンペ部門に選出された数少ないレバノン/オマーン映画の一つであり、数少ないドキュメンタリー作品であり、初のアラブ人女性監督の作品。ヘイニー・スロール(Heiny Srour)長編一作目。監督は本作品の大きな影響を与えた作品として『8 1/2』を挙げている。映画はドファール反乱を描いた作品であり、ドファール州の奥深くで撮影された世界唯一のドキュメントである。撮影隊はイギリス軍との戦闘地帯であるこの地域に到達するため、イギリ
サボー・イシュトヴァーン『25 Fireman's Street』ハンガリー、破壊されるマンションが見たカオス的走馬灯
傑作。サボー・イシュトヴァーン長編四作目。前年に撮った短編『A Dream of a House』の続編のような立ち位置にある。ある夏の暑い夜、取り壊しの決まったペストの古びたアパートに暮らす人々は、不確かな未来に直面しながら呪われた過去を落ち着きなく回想する。激動の戦間期、矢十字党の時代、スターリン時代、住民たちが経験した様々な記憶を"意識の流れ"のように連続的に紡いでいく。それはまるで死にゆくアパートの見た走馬灯のようでもある。カメラに語りかけるように非線形な記憶が並べら