見出し画像

フェデ・アルバレス『エイリアン:ロムルス』重力=地面/落下/下降から逃れる戦いの記録

大傑作。フェデ・アルバレス長編四作目。ケイリー・スピーニーが順調に出世してるのとても嬉しい。太陽の見えない採掘惑星で、穏やかな生活を求める若い入植者たちが突然やって来た放棄された宇宙ステーションに忍び込む話。とにかく上昇/下降が強調されているのは、自由になるためには重力から逃れる必要があり、それは落下/下降から逃れることと等しいからだろう。入植者たちは重力によって地面に捕らえられ、主人公レイン("雨"もまた地面に降ってくるものだ)はその度に上昇を続ける。序盤でエイリアンの死体が頭上に配置され、その下に深く穴が穿たれている構図が登場するのは、やはり重力を逃れて上昇するためにはコイツを倒さねばならないという暗示としてとても上手く機能している(エイリアンはだいたい人間の上にいるので)。だからこそ無重力での戦いは人間とエイリアンを対等存在として正面からガチンコ勝負できる舞台なのだ。とはいえ、あまりにも性器すぎるので誕生シーン等は面白さの方が勝つ。あと、使い捨てられそうになるポンコツアンドロイドを黒人が演じているというのは皮肉がキツすぎる。イケイケ白人に小突かれるオドオドした黒人という構図は、デフォルメした社会の縮図という感じで、しかしだからといってハイパーエリートになって人間性を失うのもまた違っていて、"白人主人のため"ではなく"(黒人も含めた)我々のため"に生きよ、とする流れに繋ぐのは上手い。レインが"最下層"まで戻るのも、そういった社会構造からアンディを救い出そうとしている決意をしたということだろう。ちなみに、予告編でほぼ全員の死亡が示唆されているのはもうお約束ということになったんだろうか?『ファイナル・デスティネーション』かよ。

・作品データ

原題:Alien: Romulus
上映時間:119分
監督:Fede Álvarez
製作:2024年(アメリカ)

・評価:90点

この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!