ヴェロニカ・フランツ&セヴリン・フィアラ『デビルズ・バス』オーストリア、追い詰められた女たち
2024年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。2025年アカデミー国際長編映画賞オーストリア代表。ヴェロニカ・フランツ&セヴリン・フィアラ長編三作目。二人は叔母と甥で、フランツは製作のウルリヒ・ザイドルの妻とのこと。舞台は1750年の北オーストリア、主人公アグネスは山の向こうの村から嫁いできた。結婚式では主賓なのに誰も知り合いが居ないので所在なさげで、全財産叩いて購入した新居をノリノリで見せてくるわりに初夜を拒絶する夫は近所に住む母親とばかり会話していて、この義母もとにかく小言が多くて…といきなり八方塞がりな状況に直面し、幸せに暮らすべく模範的な妻となる唯一の突破口としての"子供"を狂気的に求めるようになる。明確な敵がいないまま窒息していく様を描くことから、雰囲気とビジュアル重視で言葉足らずな部分も多く、悲しいかなそれが悪く影響して浅薄で散漫な印象を受ける。一つ一つの描写それ自体は上手いのがまた勿体ない(特に森の不気味さ)。というか、そもそも監督たちがアグネス自身には興味なさそうなのが透けて見えるのがなんとも。終盤では円環として冒頭に戻り、祝祭的空間で二度目の主人公となったアグネスには衝撃を受けた。死にてえけど天国にも行きたい人向けのバグ技じゃん、そんなのありかよ。という感じで終盤は終盤で面白かったけど、前半との接合が悪くて話がブレてる感じもしなくもない。特にラストの字幕…いる?…まぁいるか…
・作品データ
原題:Des Teufels Bad
上映時間:120分
監督:Veronika Franz, Severin Fiala
製作:2024年(オーストリア)
・評価:50点
・ベルリン映画祭2024 その他の作品
★コンペティション部門選出作品
3 . アブデラマン・シサコ『Black Tea』広州のアフリカ系移民街に暮らす人々の物語
5 . ヴェロニカ・フランツ&セヴリン・フィアラ『デビルズ・バス』オーストリア、追い詰められた女たち
8 . ブリュノ・デュモン『The Empire』フランドルの"スター・ウォーズ"は広義SF映画のカリカチュア
10 . マルゲリータ・ヴィカーリオ『グローリア!』音楽を理論や楽譜や権力や階級から解放する映画
14 . ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス『Pepe』ドミニカ共和国、カバのペペの残留思念が語る物語
15 . ミン・バハドゥル・バム『Shambhala』ネパール、シャンバラへゆく者
★エンカウンターズ部門選出作品
5 . ルート・ベッカーマン『ウィーン10区、ファヴォリーテン』オーストリア、イルカイ先生の教室
13 . Nele Wohlatz『Sleep with Your Eyes Open』ブラジル、"翻訳している相手のことを本当に理解してる?"
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