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「自分を好きになる方法」本谷有希子
本谷有希子が描く女性は、どれもトガっている印象があった。
実際そんな人が傍にいたら疲れるだろうな……とか思って。
この本に出てくる「リンデ」はそんな印象とはちょっと違う、穏やかな感じの女性だった。
その「リンデ」の人生のいろいろな年代をほんの一瞬だけ切り取って連ねている。本当に一緒に居たいと思えるひとを求めて生きる姿に、心を打たれた。
彼女のほんの一瞬ずつしか覗き見ていないのに、そんな彼女
「きつねのはなし」森見登美彦
京都を舞台に、大学生、古道具屋……ときたので、この作者の他作品の学園ドタバタもののコミカルな展開を想起して読みすすめた。
しかし、何となく繋がっている4編とも、京都の陰翳を活かした怪奇小説のような仕立てになっていて、意表を突かれ面白かった。
この陰翳を使った効果は古都ならでは。今の京都もこんな謎めいた佇まいなのだろうか。
この作者の小説を読むと、京都に住んでみたいなと思えてくる。
よく聞
「しょうがの味は熱い」綿矢りさ
妻と暮らすようになって20年くらい経つ。
二人とも未熟だったせいか、私たちもいろいろとぶつかり合いながらやってきた。
この小説の男女に対し、お互いもっと歩み寄っていけばいいのにと思う一方、なかなかうまくいかない二人の姿に自分と妻を当てはめてみたりする。若い頃はなかなか思うようにならないものだよなと。
今でも妻を大切に思うが故、若い頃の時間をもっと大事に生きていたら……と思うこともある。
「透明な迷宮」平野啓一郎
人を愛するということはどういうことか。
双子の人が居たとして、その二人が見分けがつかない程似ていたとしたら、どうだろうか。
人を好きになったり、一緒に居たいと思うのは、その人の容貌が好きだとか、その人の性格が好きだとか……それはきっかけや理由付けに過ぎなくて、本当はその人と一緒に過ごしてきた時間の積み重ねに対する想いが大きいのではないかなと思っている。
では、見分けがつかない双子……見た目
「取り替え子」大江健三郎
実在の人物をモデルにして書かれた小説をモデル小説というらしく、この作品もそのモデル小説なるものであるようだ。
……というか、大江健三郎と伊丹十三が義兄弟とは知らなかった。。。
読み進めるうちに、あれ、そういえばヤクザに襲われた映画監督がいたなぁ……みたいに連想した程度で。
モデル小説云々という話も、そういうことを掘り下げたい人々の言葉であって、これはAさんを模して書いた小説なんですよ~と世に送り出
「死神の浮力」伊坂幸太郎
死神シリーズ3作目……1作目、2作目とも面白かったと思うけれど、どんな話だったかなーと、記憶がない……たぶん年齢のせいですか……でも、読み進めるうちに死神のキャラクターが記憶に蘇ってきた。
一人娘がサイコパスに殺されてしまった夫婦が死神のターゲット……という重苦しい設定で始まる。
けれど、死神と犯人を追いかけていくうちに何となく楽しくなってくるのが面白い。
人と人とのちょっとした繋がりが、いざと
「苦役列車」西村賢太
私小説様に、日雇いの貧しい生活を描き、また風俗出入りを当たり前のように語る……こういう作者の在り方に、読前距離を感じていた。
私自身、そういう生活はなかなかできないという気持ちから……けれど、そうであれば尚更、その生活から見えるものはとても貴重なものなのかも知れない。
近代文学の私小説を読んでいて思ったのは、よくこんなものが金になったなということ。だけれど、この「苦役列車」は評価され、世に出ること
「何もかも憂鬱な夜に」中村文則
死刑についての議論でよく耳にするのは、それが犯罪の抑止力になるかということ。私自身、死刑に対して何の持論もなく申し訳ないが。
むしゃくしゃしたので、見ず知らずの人を殺して全て終わりにしよと思った……みたいな事件をよくニュースで耳にするけれど、ではそんな犯人に対して、死刑が抑止力になっているのかというと疑問である。
そしてこの本を読み、自分自身が犯罪を犯さない理由は、自分自身の社会的な立場を守ること
「吐きたいほど愛してる」新堂冬樹
裏表紙の紹介文には「暗黒純愛小説」と書いてあって、よく考えずに読んだけれど後悔している。
これって嫌ミスの類かな……と思えるくらい、後味の悪い読後感が残る話ばかりだった。
大団円で終わったりするのは深みがないと言われ、その反対であれば深みがあるかのような思い込みがあり、その延長線上にあるのが嫌ミスなのかな、と勝手に思っている。
嫌ミスの存在を否定したりしないが、日常の嫌なことなどから離れて文物を楽
「QED 六歌仙の暗号」高田崇史
このQEDシリーズを読むのはこれで4冊目。
実は第一作を読んだとき、かなりマイナスの印象だった。
けれど、それからも数冊手に取って読んでいるうちに、私の読み方(?)が間違っていたな~と気が付く。
このシリーズは古典や歴史を背景としたミステリ小説。従って、歴史+現代の各々の謎がどう紐解かれていくのだろうと期待しながら読む。
多少なりとも古典や歴史を齧っていると、そこに新たな解釈や新事実が出てくる
「鍵のかかった部屋」貴志祐介
こちらも防犯コンサルタント榎本が活躍するシリーズ。3冊目。
今作まであまり感じていなかったが、コンビ(?)を組む純子のボケが面白い。……ドライな名探偵とオトボケ美女の組み合わせと言えば、あの「謎解きはディナーの後で」を想起させる。
そういえば、テレビドラマでは、ボケの担当は弁護士事務所の所長:佐藤浩市だったような。
と考えていくと、昭和の名ドラマ・江戸川乱歩の美女シリーズでは、荒井注が浪越警部役で
「狐火の家」貴志祐介
一時期、うちの妻がアイドルグループの「嵐」にハマっていた時にこのシリーズのドラマをDVDで見た。
大野クンがオタクっぽい怪しげな探偵役を見事に演じていたのが印象深く、こうして読んでいても、大野クンや戸田恵梨香が演じているシーンが何となく脳裏に再現される。
実際このように映像化されている作品を先に観てしまうと、イメージが固定化されてしまうのでいけない……とはいいつつも、まあ、そこまで目くじら立てず楽