
「ノエル」道尾秀介
童話と現実とが交互に入り混じる構成。現実のほうのお話はややシビアなもので、母のおなかの中の子供を殺してしまっては、とか、結ばれてほしくない二人が夫婦なのかとか、ハラハラとさせられる。
そこにちょっとした仕掛けを入れてくれて、我々を軽やかに騙してくれ、いい結末に導いてくれ、とてもさわやかに読み終われた。読書というものの性質をよくとらえた、本当に軽やかな仕掛けに、ああ、この作者は前にもこんなふうに騙してくれたな、と思い当たった。
物語を読むということは、本当に楽しいことだと思わせてくれる本だった。