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「教団X」中村文則

 カルト教団というと、オウム真理教の事件を思い浮かべる。
 かつての彼らの自分勝手な行動を思うと、宗教なんて怪しいものだなと警戒してしまうが、では宗教とは何ぞや……と考えると、この本の松尾が語っていることが納得できる回答だと思えた。
 神に祈ること自体、別に悪いことでも変なことでもない。私たちのご先祖が自然物に畏敬の念を感じて祈っていたことと何ら変わりはない。体系化したそれは、誤解を招くものであるし、実際に変な形になってカルト教団化している物もあるが、一般的に穏やかな宗教は生きやすい世の中を作る哲学のようなものだと私は思っている。
 若いときはエネルギーに溢れていたので、神に頼るより自分の力を信じようと嗤っていたが、こう老いさらばえ弱ってくると、宗教の考え方を自分の生き方の中に取り入れたら楽になれるだろうか、とか考えてしまう。

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