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エッセイを書きたかったけど、書けずに、行き着いた場所。

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2023年7月の記事一覧

ウチは、占いをバカにしているはずだった。

ウチは、占いをバカにしているはずだった。

ウチは占いをバカにしている。1ミリも信じていない。もし占いを見てしまったら、なんとしてでも占いが外れるような挙動をとり、「ほら、見たことか」と謎な悪意をぶちまける。

でも、占いを信じている頃もあった。

あれは、小学校のとき。朝のテレビで「今日の運勢」というコーナーが流れていた。それは星座占いで、ランキング形式で毎日発表されるものだった。

今日、最も良い運勢は、みずがめ座のあなたです。

今日

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自然に帰りたい。

自然に帰りたい。

 都会の喧騒から離れた生活が続いた。川に入って魚釣りをしたり、森へ入ってヘンテコな虫を捕まえたり。夜は、家族や友達と一緒にBBQ。みんなで準備をして、みんなで片付ける。当たり前のことを、当たり前のように行い、スマートフォンを開くときは、Googleマップをみるときだけ。もちろん、SNSなども全てシャットアウト。仕事や時間に追われる日々から抜け出した生活だった。

 大自然と接して、初めてボーッとす

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矛盾を許容していきたい。

矛盾を許容していきたい。

 東京の都市部と郊外では、その景色がまるで違ったりする。中心地は高層ビルが立ち並び、コンクリートジャングルが広がっているが、電車で1時間ほど離れてしまえば、緑豊かな森のジャングルに囲まれる。キレイとキタナイが同居しているような矛盾をはらんでいる気がする。

 それは東京に限った話ではない。コンクリートジャングルまで極端な例は少ないかもしれないが、人も、街も、国も、それなりの矛盾を抱えている。

 

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歯痛から教わった、分かろうとする気持ち。

歯痛から教わった、分かろうとする気持ち。

 不安とか恐怖の原因は、「わからない」ことなんだと思う。だから経済への不安と、オバケ屋敷の恐怖が抱えているものの本質は似ているのかもしれない。「わからない」から不安を抱くし、恐怖を感じるのだ。

 この前、体調を崩した。原因不明の歯痛だった。上顎の奥歯が痛かった。突然の痛みで、特に頭を下げると激痛が走った。歯医者に駆け込もうにも、休日のため行くことができない。ウチは不安に襲われた。

 虫歯は治療

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印象を武器にしたい。

印象を武器にしたい。

 「印象」って、やっぱり大事なのかもしれない。第一印象という使われ方をされたりもするが、ザックリいうと「人にどんな影響を与えるのか」ということだと思う。

 世の中は、意外と勝手な想像で話が進んでしまったりする。「この人は、こういうこと言い出しそうだから、会議メンバーから外そう」とか。「この人は、こういうことをしてくれそうだから、今度の飲み会誘ってみよう」とか。

 深い仲になっていたら話は別だけ

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人生の勝者って、なんだろう。

人生の勝者って、なんだろう。

 アメリカにいると、アメリカの大きさに驚いてしまう。だって、同じ国なのに時差があるんだもの。日本にいる感覚だと考えられらない。平気で3時間とか時差があるから、やっぱり大きな国なんだと思う。

 北海道から沖縄に移動しても、時計の針は変わらない。でも、正確には1時間くらいの時差らしいから、そう考えると日本も大きな国だよね。

 住んでいる場所が離れているほど文化が変化する。これは、なんとなくイメージ

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「いい子」をやめる。

「いい子」をやめる。

「あんたってさ、いつも『いい子』であろうとするよね」

 友達は罠でも仕掛けるときみたいに、ニヤリとしながら言った。顔はほんのりと桜色に染まっている。耳の後ろから髪の毛の束が顔にかかり、やけに色っぽかった。

 友達の前に置かれたワインボトルは、半分以上なくなっていた。ウチは何杯飲んだんだろうか。自分の頬に手の甲をあて、体温を確認する。顔は火照っていた。耳の奥のほうで、ゴーッと飛行機が通過したよう

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強豪校は、弱小チームを相手にしない。

強豪校は、弱小チームを相手にしない。

 サッカーがものすごく上手い友達がいた。彼は本気でプロを目指していた。海外進出まで視野にいれ、朝から晩までサッカーに明け暮れる日々を送っていた。でも、彼はプロにはなれなかった。彼はいまだに社会人サッカーを続けている。

 彼とサッカーの話をしていると、そのコミュニティや人脈に驚かされる。「サッカー友達が・・・」と当然のように話を切り出すのだが、聞いてみると、その友達もその昔、プロを目指していたとい

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家が広いと心も広くなる。

家が広いと心も広くなる。

 アメリカに住む友人は、バカでかい家に住んでいた。家には家族以上の部屋が並び、広い庭では犬が駆け回っている。りんごの木や、育てた野菜が太陽に反射し、キラキラとその葉を光らせていた。

 ガレージは秘密基地のように改造され、車だけでなく、トレーニングマシーンやDIY用の木材など、趣味の道具が詰まっている。映画で見たことのある風景が日常としてそこにあった。

 思わずウチは「大きい家に住んでるねえ」と

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自分を飛び出すこと。

自分を飛び出すこと。

 旅行をすると、自分の生活がやけにクッキリして見えることがある。ホテルや旅館で生活をしていると、料理も掃除も全てやらなくて済むから、余計に現実味を覚えるのかもしれない。

 「こんなに小さな家に住んでたんだっけ?」と思うこともしばしば。外に出て、あらゆるものを見て知って、比べる対象が生まれるからこそ、自分の家を俯瞰できるんだと思う。

 海外旅行をすると、さらにその視野は広くなる。自分の家のみなら

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情熱の行き先を失った大人。

情熱の行き先を失った大人。

 夕方。電車の中で、英単語を必死に覚えている男子生徒がドアに寄りかかっていた。ときどき前髪が目に入るのか、かったるそうに頭をふって髪の毛をどけていた。かと思うと、右手で前髪を撫でて、ガラスに反射する自分の姿をチラチラと気にしている。前髪は邪魔で、でも、必要らしかった。そして、また、単語帳に目を落として、赤いシートを上下左右に動かし始めた。

 ふと奥を見ると、参考書を開くメガネの女子生徒が座ってい

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見たいものしか見ない虫と、人。

見たいものしか見ない虫と、人。

 電車に乗って移動することが多い。細長い箱に大量の人が流れ込んでくる光景は、見ていて面白い。虫を眺めているときと似た気持ちになる。

 なんでそんな色をしているの?
 どうしてそんな動きをするの? 
 なにを考えてるの?
 なにが目的なの?
 

 虫にも人にも同じことを思う。

 だから面白い。

 ウチは別に虫が好きなわけではないんだけど、嫌いでもない。久しぶりにバッタを捕まえたときは、ちゃん

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マスクと想像力。

マスクと想像力。

 体に服がはりついた。毛穴からはベタベタする汗が出る。顔がテカテカして、ときどき獣みたいな匂いが自分から香ってくる。たぶん、鼻のまわりの脂の匂いだ。

 すっかり、春が過ぎ去った。でも、完全なる夏ではない。梅雨も抜けた。夏至も過ぎた。でも、夏というには朝晩が涼しい。春夏秋冬、どの名前も付けられない時期がある。服装に悩む季節。それが、今だ。

 街を歩くと、人の姿が変わったと思った。ここ数年は誰を見

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