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「超一流の会話力」を読んで

 というわけで、今回はちょっと最近読んで驚いた本について。
 それは2020年以降何かと話題のアンジャッシュ渡部建の『超一流の会話力』。これ、2022年に刊行された書籍で過去のグルメ関連の書籍より売れたらしい。続刊にあたる「世界一わかりやすいコミュニケーションの教科書」も1万部以上売り上げているとか。
 アンジャッシュ渡部といえばエンタの神様以降、鼻につく物知り芸や食レポで有名で、べつに有吉などのようにトークを主体に笑いを取っていくタイプではないと思っている。
 そしてまたひな壇的な場所にいるイメージもない。なんなら、スキャンダル後の自粛前までは、音楽番組などで司会をやっているスマートな大人というイメージで、べつにとくに面白い芸人というイメージはなかったし、最近のラジオでも「お笑い芸人としての仕事はほとんどなかった」といっている。
 でも、復帰して以降、プレイヤーとしてスポットが当てられていてどの番組でもめちゃくちゃ無双している。
 なんなら、ちゃんとした司会→スキャンダルを起こした悪い印象の人となってしまっていて、巧みな話術の持ち主というイメージの弱い芸人だが、実はラジオを10年以上やっていて、定評もあったアンジャッシュ渡部だが、そんな芸人による話術に関する書籍ということで、ちょっと気になって読んでみた。

 タイトルは大げさで、中身はコミュニケーションに特化した本。べつにタイトルから想像するような、アンジャッシュ渡部が「超一流の話術を誇るおれがお前らに会話について教えてやる」というわけではなくて、実は「一流の芸能人に囲まれる中で学んだ、実はコミュニケーションに話術を持つ必要はないよ」という優しい本。

 とはいっても、本書にて語られるのは、よくあるような「いい聞き手になれ、会話をする必要はない」という本ではなく、どうやれば相手に気持ちよく話してもらえるか、などがすごくわかりやすく書いてある本。
 いい聞き手になれ、とはいっても、そもそも相手が自分に話してくれなければいい聞き手になるチャンスもないわけで、それはラジオのパーソナリティー歴10年の経験から学んであろう技術が具体例とともに、惜しげもなく披露されている。
 「いい聞き手になるのに、話していいの?」という疑問に「誘い水として自己開示をする」など、ひたすらいい聞き手になれという以上の具体例が語られている。
 うんうんと話を聞くだけではなく、独自に編み出した「縦横前後」の質問テクニックを駆使しながら、よく笑いリアクションを取り、オウム返しをする。こういった基本的な技術と芸人として行っていた技術がバランスよく書かれており、こういう書籍を何冊か読んだことある人にも、コミュニケーション本の1冊目としても優れた本になっている。

 基本的な内容としては「縦横前後」以外はどこかで聞いたことのあるような方法ではあるけれど、ここまで具体的にわかりやすく書いてある本は珍しいと思うし、こういった類のハウツー本を1冊だけ読むなら「超一流の会話力」ほど最適なものはないと思う。
 どんなテクニックが大量に書かれている本を読んで技術を知ったところで突然聞き方や話術があがるわけもなく、それならこういう基礎を知るほうが圧倒的に近道であることは間違いない。
 これだけいうと話術を簡単にまとめただけの本なんじゃないかと思うかもしれないけれど、普通きれいごとを並べたりするところ、「相手が自分にだれかの悪口を言っている間は、徳を積んでいると思って聞く」といった、なんならちょっと性格悪いんじゃないか(笑)と思ってしまうようなアンジャッシュ渡部らしいタッチも随所に見られて、ここの所読んだ本の中で、ある意味いちばんためになった本かもしれない。

 ぼくは海外在住ってこともあり、知らない人、なんなら別の国から来た知らない人と会話をする機会も多い。となると、現在自分の住んでいるお国柄上、英語が苦手な人と会話することさえある。つまり、ただの初対面ではなく、英語が苦手だなと感じている相手との会話になるわけで、それは相手がシャイだった場合通常よりさらに高い障壁になってしまう。
 そんな相手と会話するとなると、相手が話しやすくなるように誘導していかなくてはならない。
 そんな時に「縦横前後」のテクニックは実際すごく役に立ったし、会話が苦手な人こそこのテクニックは知っておくべきなんじゃないだろうか。
 海外生活をするうえで、やっぱりその国の言葉が流暢にしゃべれないとなると、コミュニケーションに影響が出てくるのは必至。そんな際に、この本を読んで挑むと、きっと気楽になることは間違いない。

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