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『「介護時間」の光景』(220)「親子」。8.19。

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。

(※この「介護時間の光景」シリーズを、いつも読んでくださっている方は、よろしければ、「2002年8月19日」から読んでいただければ、これまでとの重複を避けられるかと思います)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。

 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、私自身が、家族介護者として、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的で、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2002年8月19日」のことです。終盤に、今日「2024年8月19日」のことを書いています。

(※この『「介護時間」の光景』では、特に前半部分は、その時のメモをほぼそのまま載せています希望も出口も見えない状況で書かれたものなので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば、幸いです)。

2002年の頃

 個人的で、しかも昔の話ですが、1999年に母親に介護が必要になり、私自身も心臓の病気になったので、2000年に、母には入院してもらい、そこに毎日のように片道2時間をかけて、通っていました。妻の母親にも、介護が必要になってきました。

 仕事もやめ、帰ってきてからは、妻と一緒に、義母(妻の母親)の介護をする毎日でした。

 入院してもらってからも、母親の症状は悪くなって、よくなって、また悪化して、少し回復して、の状態が続いていました。
 だから、また、いつ症状が悪くなり会話もできなくなるのではないか、という恐れがあり、母親の変化に敏感になっていたように思います。

 それに、この療養型の病院に来る前、それまで母親が長年通っていた病院で、いろいろとひどい目にあったこともあって、医療関係者全般を、まだ信じられませんでした。大げさにいえば外へ出れば、周りの全部が敵に見えていました。

 ただ介護をして、土の中で息をひそめるような日々でした。私自身は、2000年の夏に心臓の発作を起こし、「過労死一歩手前。今度、無理すると死にますよ」と医師に言われていました。そのせいか、1年が経つころでも、時々、めまいに襲われていました。それが2001年の頃でした。

 2002年になってからも、同じような状況が、まだ続いていたのですが、春頃には、病院にさまざまな減額措置があるといったことも教えてもらい、ほんの少しだけ気持ちが軽くなっていたと思います。

 周りのことは見えていなかったと思いますが、それでも、毎日の、身の回りの些細なことを、メモしていました。

2002年8月19日

『2日休んで、母の病院へ行く。

 母の病室の入り口付近が、なんだかトイレのにおいが今日は強い。

 横になっている母からのにおいかと思ったら、違っていた。

 午後4時50分。

 台風が近づいていて、風が強い。

 母は特に変化はない。

 たぶん、ないんだと思う。

 夕食40分くらいで終わる。

 雨がまだ強い。

 何か、私自身の集中力が薄いまま、時間がたった。

 午後7時に病院を出る。

 本当に雨が降っていると思う』

親子

 駅のホーム。
 短い坊主頭の髪にスジを入れた小さい男の子。
 その母親らしき若い女性。
 さらに、その母親らしい中年の女性。
 3人がいる。

 電車のドアが開くと、降りてくる人をまったく無視して、車内に乗り込み、空席にとびつくように座った。動物みたいな動きだった。

                    (2002年8月19日)


 それからも、その生活は続き、いつ終わるか分からない気持ちで過ごした。
 だが、2007年に母が病院で亡くなり「通い介護」も終わった。義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間、妻と一緒に取り組んできた介護生活も突然終わった。2019年には公認心理師の資格も取得できた。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。

2024年8月19日

 毎日、暑い。

 汗をかいて着替える回数が多いから、思った以上に洗濯物がたまる。

 昨日も2回洗濯をしたけれど、今日も洗濯カゴがいっぱいになっている。

 洗濯をして、洗濯物を干す。

 今日も気温は高いから、洗濯物もすぐに乾くと思う。

相談

 今日は、夕方から仕事がある。

 相談業務をするたびに、世の中には困難なこと、理不尽なことが思った以上に多いのではないかと思う。さらに、こういう言い方は安直だとしても、個人的には、優しい人ほど、そうした理不尽なことや、困難なことを受け止めているような印象がある。

「頭がいい」とはどういうことか

 こうしたテーマは、ずっと語られてきた。

 ただ、時代が進めばさまざまな研究が進んで、いろいろなことが明らかになるはずだから、新しいほど重要な情報が書かれている確率が高いと思っている。この書籍は2024年4月に発行されているから、まだ新しいと言っていいはずだ。

 この中の、例えば「第8章のまとめ」として、こうした項目が並んでいる。

⚫︎ 脳の中には、長らくその機能が見過ごされてきた神経膠細胞(グリア細胞)が存
 在し、これらは脳の情報処理や健康な機能維持に重要な役割を果たしている。
⚫︎ アストロサイトと呼ばれるグリア細胞は、脳の老廃物除去や脳内環境の維持、情
 報処理への積極的関与など多様で重要な役割を担っており、脳の健康と機能にお
 いて不可欠な存在である。また、頭脳の発達や知性の進化において重要な役割を
 担っている可能性があり、IQが高い人の脳にはアストロサイトの数が多いことが
 示唆されている。

(『「頭がいい」とはどういうことか』より)

 これだけではなく、このアストロサイトに興味が持てたのは、アルツハイマーという単語も出てきたからだった。

 体細胞では、老廃物を洗い流す仕組みにリンパ液を使うことができますが、脳にはリンパ管に相当する機能する構造が見つかっておらず、長年医学上の謎でした。二〇一二年にはアメリカで行われた研究で、脳表面を流れている脳脊髄液が脳組織の中に浸透していって、脳細胞の隙間に蓄積している老廃物を洗い流していると解明されました。アルツハイマー病と関連するとも言われているアミロイドベータと呼ばれるタンパク質は、実は若い人の脳でも作られるごくありふれた老廃物ですが、これをしっかりと排出できていれば、病気にならずに済むのかもしれません。
 実は、この脳脊髄液が脳組織内に染み込んでいくための駆動力を生み出しているのがアストロサイトではないかと考えられているのです。

(『「頭がいい」とはどういうことか』より)

 つまり、アルツハイマー病を、「本当に」予防や治療する可能性があるとしたら、そこに関係するのがアストロサイトと呼ばれるグリア細胞ならば、そうしたことが本当に解明されれば、アルツハイマー病の治療さえ可能になるかも、と思ってしまった。

 本当にそうなったら、介護は変わってくると思う。それが薄い望みとわかっていても、なんだか願ってしまうような思いに、少しなってしまった。



(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。