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『「介護時間」の光景』(226)「焼肉パーティー」。9.30.

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。

(※この「介護時間の光景」シリーズを、いつも読んでくださっている方は、よろしければ、「2002年9月30日」から読んでいただければ、これまでとの重複を避けられるかと思います)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。

 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、私自身が、家族介護者として、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的で、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2002年9月30日」のことです。終盤に、今日「2024年9月30日」のことを書いています。

(※この『「介護時間」の光景』では、特に前半部分は、その時のメモをほぼそのまま載せています希望も出口も見えない状況で書かれたものなので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば、幸いです)。

2002年の頃

 個人的で、しかも昔の話ですが、1999年に母親に介護が必要になり、私自身も心臓の病気になったので、2000年に、母には入院してもらい、そこに毎日のように片道2時間をかけて、通っていました。妻の母親にも、介護が必要になってきました。

 仕事もやめ、帰ってきてからは、妻と一緒に、義母(妻の母親)の介護をする毎日でした。

 入院してもらってからも、母親の症状は悪くなって、よくなって、また悪化して、少し回復して、の状態が続いていました。
 だから、また、いつ症状が悪くなり会話もできなくなるのではないか、という恐れがあり、母親の変化に敏感になっていたように思います。

 それに、この療養型の病院に来る前、それまで母親が長年通っていた病院で、いろいろとひどい目にあったこともあって、医療関係者全般を、まだ信じられませんでした。大げさにいえば外へ出れば、周りの全部が敵に見えていました。

 ただ介護をして、土の中で息をひそめるような日々でした。私自身は、2000年の夏に心臓の発作を起こし、「過労死一歩手前。今度、無理すると死にますよ」と医師に言われていました。そのせいか、1年が経つころでも、時々、めまいに襲われていました。それが2001年の頃でした。

 2002年になってからも、同じような状況が、まだ続いていたのですが、春頃には、病院にさまざまな減額措置があるといったことも教えてもらい、ほんの少しだけ気持ちが軽くなっていたと思います。

 周りのことは見えていなかったと思いますが、それでも、毎日の、身の回りの些細なことを、メモしていました。

2002年9月30日

『友人と電話をして、その家庭のトラブルのことを話す。

 その重さが移って、自分も憂うつになる。

 お菓子を買っていく。
 結構重い。
 全部で6000円くらいになった。

 午後4時50分頃に病院に着く。

 母親が、心配そうな顔をして、言った。

「カゼをひいたかと思ったのよ」。

 3日前には、次に来るのは3日後だけど、何か調子が悪いわけではないから、大丈夫と伝えたはずなのだけど、2日開けると忘れてしまうのかも、と思う。

 夕食は45分かかる。調子が少し良くなってきたとしても、食べるのが早くなるわけではないようだ。

 テレビに、箱根のポーラ美術館が映る。

 珍しく、母がすぐに「行きたい」と言うので、そのうちに行けるかも、とは思う。ここから箱根だったら、ギリギリ日帰りで間に合うかも、だけど、母の体力がちょっと心配かも、といったことを何秒かで思う。

 午後7時に病院を出る』。

焼き肉パーティー

 送迎バスに乗った。

 先に乗っていた乗客が隣同士に座り、話をしている。やや暗い表情をしている30代くらいの男性と、元気そうな50代くらいの男性。

 若い人が「精神病院しか入ったことないです」と言うと、歳が上の男性が、少し声をはって「オレも長いよ、7年くらい」と答えてから、さらに言葉が続く。

「独房に半年くらい。それから開放へうつった。洗濯してもらってた。○○円だから、安いよ。でも、月に2回、焼き肉パーティーがあって、骨付きでうまいんだよ」。それから、ずっと絶え間なくしゃべり続けていた。

                   (2002年9月30日)

 それからも、その生活は続き、いつ終わるか分からない気持ちで過ごした。
 だが、2007年に母が病院で亡くなり「通い介護」も終わった。義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、妻と二人で在宅介護をしてきた義母が103歳で亡くなり、19年間、取り組んできた介護生活も突然終わった。2019年には公認心理師の資格も取得できた。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。


2024年9月30日

 急に秋らしくなってきた。

 9月は、もう夏と言ってもいいのでは、と思うくらい気温が高い日が続いていたのだけど、雨が続いたせいか、明らかに涼しくなってきた。

 ただ、洗濯物が乾かない。

 昨日、洗濯したのだけど、曇りだったり、あとは雨が降ってきて、部屋の中で干すしかなくて、でも、今日、妻が朝方に、外へ洗濯物を出してくれた。

 だけど、まだ6割くらいしか、乾燥していない、とも言われ、干す場所がないから、今日は洗濯物をあきらめる。

 そうこうしているうちに、また雨が降ってきて、あわてて、また部屋に入れる。

 あれこれしているうちに時間が経った。

柿の実

 庭に柿の木がある。

 もう随分と長く生きている樹木になって、毎年のように、伸びている枝をかなり伐採しているのに、それでも葉っぱは生えて、今もうっそうとしている。

 見上げると、気がついたら、まだ真っ青だけど、柿の実がふくらんできた。

 ずっと渋柿だけど、それでも、ここから色づいてくると、うれしい。

電話相談

 臨床心理士になって10年が経つ。公認心理師の資格取得からは5年を過ぎた。

 家族介護者への心理的支援は細々とながら、幸いにも11年目を迎えられた。

 それと並行して、少しずつ、さまざまな相談や面接にも関わって来られたし、電話相談もさせてもらうようになった。

 電話での相談は、最初は、声だけでは難しいのではないか、と思っていたが、経験を積んでいくと、相談を受ける側の力次第では、かなり意味がある関わりができると思うようになった。

 若い世代では、電話をかけること自体にすでに抵抗があるようだけど、それでも、何か困ったり不安になったりした時は、電話相談(今はチャットでの相談もあるようです)などは利用していただきたいと、自分が関わるようになってから、より思うようになった。

特殊詐欺

 時々、家の外を「区役所です」という録音された言葉から始まる注意喚起をする小さなバンが走っていく。

 その中で、詐欺に関する話題は、多いように思う。

 今は、特殊詐欺と言われるようになった、最初は「オレオレ詐欺」と名付けられた電話を使った詐欺の被害者は高齢者が多いと言われている。

 この本を読むと、「特殊詐欺」をいわれるグループが、すごく考えられ、ある意味で鍛えられた組織なのがわかる。 

 高度に発達した現代の詐欺店舗は、まるで会社のように運営されている。

(『老人喰い』より)

 そして、「研修」のようなシステムで、モチベーションも高めている。

 いつの時代も存在する「豊かな同世代に対する経済的ルサンチマン」を抱える貧しい若者を取り込み、それを「社会の上層で金を溜め込む高齢者に対する経済的ルサンチマン」にシフトさせたという構図が読み取れる。

(『老人喰い』より)

 この書籍は2015年だから、約10年前で、その後「特殊詐欺」はさまざまに変化して、高度化しているとも言われているから、誰でもだまされる可能性があると思う。

詐欺の「2次被害」

 そういえば、この前も、詐欺の前段階と思われる怪しい電話があり、ガラガラな声で「誰だかわかる」という話し方のリズムが、知り合いにそっくりで、お金の話は出なかったけれど、この状態でどこの病院に行けばいいかを聞かれた。

 怪しいとは思いつつも、カゼなどの可能性が高いので、まず内科へ行ってください、それでも治らなければ、耳鼻咽喉科で診てもらってください、などと言っていたから、詐欺にあう一歩手前だったのかもしれない。その後は、その電話はなかった。

 ここ10年でも、こうした「特殊詐欺」にあってしまう人の話は、間接的にでも聞くことが多くなった。そうしたときに気になるのは、その被害にあってしまった後のことだ。

 高齢者が被害に遭ってしまった場合。詐欺によって現金などをだまし取られたこと自体のショックがある。さらには、報道などで知ったのは、その被害に対して、周囲が「どうして騙されたのか」とつい責めてしまうことがあるらしい。

 その責められたことで、さらに気持ちのダメージが大きくなり、元々、認知症である場合は、より症状が重くなったり、また、健康であっても、うつになったりする「2次被害」といっていい状況があると言う。

 それだけに「特殊詐欺」は、より罪が重い犯罪だとは思う。

 ただ、周囲がつい責めるような言葉を言ってしまうのは、自分は騙されない、という気持ちがあってのことだろうし、仕方がないのかもしれないが、まず、今の「特殊詐欺」は、その方法も高度になっているから、誰でも詐欺にあうかもしれない、という前提を持ってほしいも思う。

 それに、身近で、もしくは自分自身が、特殊詐欺の被害にあってしまう可能性を考えにいれていれば、少なくとも「2次被害」を防げる可能性は高まるのではないか。

 そんなようなことを、道路から「特殊詐欺」の注意喚起の録音された声が聞こえてきた時に、思ったりもする。


(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。