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「家族介護者の方へ」⑧「介護終了直後の虚脱期」

 いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。そのおかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

(※いつも、このシリーズを読んでくださっている方は「介護の終わり」からですと、繰り返しが避けられると思います)。

「家族介護者の方へ」

 このnoteでは、これまで介護者だった私自身の経験や、心理職として見聞きしてきたこと、学んだ事なども統合して、できるだけ一般的な事として、伝えることができれば、と考えて書いてきました。

 さらに、家族介護者の当事者というよりは、どちらかといえば、支援者や介護者の助けになりたいと考えている周囲の方々向けを意識してきました。

 それは、実際に介護をされている方々は、とても大変な毎日を送っていらっしゃるのは間違いないので、こうしたnoteの記事を読んでいる時間や余裕がないかもしれない、と思っていたからでした。

 ただ、実際にnoteを始めてみて、読んでくださるのは、当初に想定していた介護の専門家の方々もいらっしゃっるのですが、それと並んで、実際に今も介護をされている方々が読んでくださり、コメントをいただいたりすることに、気がつきました。とてもありがたいことでした。

 家族介護者には、こうしたnoteの記事を読むような時間も余力もないのではないか、という私自身の想定が間違っていたのが分かりました。こんな言い訳のようなことを書いて、失礼で申し訳ないのですが、やはり、実際に家族介護者の方へ直接伝える意識を持った記事も必要だと思うようになりました。

 これまでの内容と重複することも少なくないとは思うのですが、「介護の段階」によって、この「家族介護者の方へ」少しでも役に立つような記事として、書いていこうと思っています。

 8回目は、「介護終了直後の虚脱期」です。よろしかったら、その時期だと思っていただける家族介護者の方に、読んでいただければ、幸いです。

介護の終わり

 介護の終わりは突然やってきます。

 何度も危篤を告げられ、もしかしたら、このまま乗り切れるのではないか、と思った瞬間にご家族(要介護者)が急に亡くなったり、もしくは、ちょっと調子が悪いけれど、そんなでもないのではないか、と思っているときに急死されたり、さらには元気そうだったのに突然倒れることさえあります。

 人生の最期は誰にとっても分からないように、介護がいつ終わるかも、当たり前ですが、分かりません。

 それでも、亡くなってからは、今まで介護をしていて、それだけで消耗されている上に、もしかしたら、お通夜や葬儀だけでなく、その後にさまざまな書類の処理もあって、また休む暇もなく、時間が経っていくかもしれません。

 これまでとは全く違うのですが、それも「非日常的な時間」なのだと思います。

 それでも、他に誰もしてくれないとしたら介護に続いて、亡くなった後のさまざまな事務処理まで行わないといけません。

 こうした手続きに関して、もう少し負担が少なくなるようなことができないだろうか。そんなことも思いますが、今のところ、それが改善されるような気配も少ないようです。


 そして、そうしたことも何とか乗り切り、ふと、自分を取り戻すような感じになるのは、介護の終わりから1ヶ月、もしくは2ヶ月くらい経った頃かもしれません。

孤独感

 介護をされていたご家族(要介護者)を亡くされるのは、当たり前ですが、とても悲しく喪失感が大きいのだと思います。

 だけど、もしとまどうことがあるとすれば、場合によっては、悲しくない、とは言いませんが、涙もあまり出なかったり、どちらかといえば、介護を終えたほっとした気持ちの方が上回ることもあり、何しろ体に力が入らないような感覚になっている可能性もあります。

 そんなときに、ふと襲われるのが孤独感かもしれません。

 もちろん大事な方を亡くされたのですから、悲しさや喪失感と、さらには孤独感に襲われると思うのですが、それをさらに大きくしてしまうのが環境の変化でしょう。


 これまで在宅介護をされていたのであれば、多くの場合、介護サービスを利用されていると思います。デイサービスのように通われていたり、もしくは訪問のヘルパーなど、家に来てもらっていたかもしれません。

 どちらにしても、介護を家族だけで継続されていた方以外でしたら、介護中は、さまざまな人と会う機会が思ったよりも多かったはずです。

 それが介護が終わったら、当然ですが、そうした介護の専門家は来なくなります。専門家にとっては、他の仕事がありますが、でも、家族介護者にとっては、一気に人が去っていく感覚にもなり得ます。

 そうした環境の変化によって、孤独感が深まることもあります。

 そのことは、とても自然なことですので、まずは、そんな気持ちになってしまったご自分を、もっとしっかりしなくちゃ、といった励まし方を無理にしないようにしてもらえないでしょうか。

悲しさ

 もしかすると、想像以上に悲しくない。もしくは涙も出ない。そんな状況にもとまどっているかもしれません。

 それは、自分自身が冷たいということではなく、多くの場合は、まだ悲しむ余裕がない可能性があります。

 気持ちとしては、まだ介護が終わっていないかもしれません。それだけ、緊張感が続く毎日を送ってきたせいで、急に介護が終わったとしても、機械ではないのでスイッチを切るように次の状況に適応できるわけでもありません。

 もう少し時間が経ったら、何かをきっかけとして、改めて急に悲しみで胸がいっぱいになったり、自分でも意外なタイミングで涙が流れたりすることもあると思います。

 それは、そのときに、やっと悲しめるほど、心身の余裕ができた、ということではないでしょうか。

虚脱感

 様々な手続きなどが終わり、ちょっと立ち止まるような時期になったときに、思った以上の虚脱感に襲われることもあります。

 何もする気がしない。
 感情すら起こらない。

 極端にいえば、そんな状態になっているかもしれません。

 介護が終わったんだから、何とかしなくちゃ。もう負担も減ったのだから、しっかりしないと情けない。

 そんな気持ちになり、焦りながらも、心身の動きが鈍いこともあるかと思います。


 年数だけで介護の負担を計れるわけではないのですが、基本的には長い介護の日々で、心身ともに疲労している。そう思ってもらった方がいいのだと考えられます。

 介護が終わったし、少し時間も経ったし、そんなわけがないと思うかもしれませんが、介護をしているときは、ご自身の心身の疲労に対して、かなり鈍くなると言いますか、介護をされている方(要介護者)のことが優先され、自分の体調は二の次になりがちなので、介護が終わって、自分の疲労に対して、やっと自覚できるようになった、ということもあると思います。

 さらにいえば、介護の疲労は数ヶ月くらいで抜けないほど、重いものだと考えられます。

 何もできないような虚脱感がある場合は、まずは疲れていると思い、少しでも休養を多く取るようにしてもらえないでしょうか。

 そのうちに、少しずつ心身の力が蘇るのを待つ、というような感覚でいいのでは、と思っています。


 今回の孤独感や、悲しみの程度や、虚脱感は、こんなはずでないというような状況かもしれませんが、それは、突然、介護が終わったあとは、ある意味では自然な反応と考えていただき、大きなお世話かもしれませんが、ご自身を責めたり、叱咤激励することは避けていただければ、と考えています。

病院と相談

 この介護の後の時期に、何かしなくては、とあまり思わなくていいと思いますが、もし、何かしないと気が収まらない、といった状況であれば、まずは体のことを考えてもらえますか。

 もし、どこかちょっとでも調子が悪い場合は、そのための病院に行ったほうがいいと思います。さらには、しばらく健康診断を受ける余裕もなかった場合は、一度、健康診断を受けてみるのは、どうでしょうか。


 さらには、気持ちがずっと落ち込んだり、孤立感や虚脱感がとても強い場合や、もしくは、それから少しでも早く抜け出したいという場合は、このnoteでは、何度もおすすめしているのですが、電話相談などを利用されるのはいかがでしょうか。

 やはり、できれば公的な機関が行っている方が安心ですので、一度、電話をして、話をするのも、少しでも気持ちが楽になる可能性があります。


 今回は以上です。

 次回は「家族介護者の方へ⑨まだ介護が続いているような感覚の時期」の予定です。



(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。




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