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河合正澄
2024年5月23日 10:14
真夏の昼下がり、主人公は四つ年上の女性と母校の高校野球の観戦に向かう。 野球場の席に腰を下ろした時、彼はふと今隣に座る女性と参加した、花火大会の夜に見た光景を思い出す。 あるビルの屋上から、外国人の幼い少女が夜空に咲き乱れる花火に向けて手を振り、大声に叫んでいる姿があった。 成人した後まで、彼女はこの夜のことを覚えているだろうか、と彼は考える。大人になった彼女は、花火のことは覚えていても、
2024年5月12日 10:05
聖人が世に生まれる時、伝説の聖獣である「麒麟が現れ、天には和楽の音が聞えて、神女が天降った」という。 その聖人こそ、本作の主人公孔子だった。 旅の途上で彼は衛の国に立ち寄り、その君主霊公と治世について語り合う。 霊公は、孔子の教えにより理想の政治について心を傾け始めた。 けれど、霊公の南子夫人は贅を尽くした料理や酒、宝玉や稀少な香、また酷刑を施される罪人の姿により孔子を惑乱させようとする
2024年5月7日 20:00
誰も彼もが外見の美しさを求め、「すべて美しい者が強者であり、醜い者は弱者であった」時代の物語。 美を追求するあまり、人は自らの肌に絵の具を注ぎ込むまでになった。つまり刺青だ。 主人公の清吉は、腕ききの刺青師で、奇警(=奇抜)な構図と妖艶な線とで名を知られていた。 そして彼は、客が肌に針を刺される時に呻き声を発するのを聞いて、「云い難き愉快」を感じる嗜虐趣味の持ち主だった。 その清吉には、