河合正澄

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河合正澄

日々本と触れ合う中で、想ったこと、感じたことを書いていきます。 https://twitter.com/KawaiMasazumi 何卒よろしくお願い申し上げます。 無断転載は禁じております。

マガジン

  • 図書館司書の短編小説紹介

    図書館司書として多く本を扱って来た中で、一人でも多くの方と楽しみや感動を共有したいと感じた短編小説を紹介しています。

  • 読書感想・随想

    本を読んだ感想、あるいは本を読んで思い出したことなどを書いています。

  • 昭和的感覚の随筆・エッセイ

    昭和生まれの氷河期世代が令和の今をなんとなくの感覚でつかみ取った、あるいはつかみ損ねた事柄をつらつらと書き綴ります。

最近の記事

「行ったり来たり」光岡明著:読書感想文

地方へ旅行に行った時に、史跡の説明や町や村の成り立ちを書いた案内板を見るのが好きだった。 特に、それが神話と結びついていたり、鬼や精霊が登場するものだった場合一層興味が増す。 このような文章を短編小説として作り上げたのが、光岡明の「行ったり来たり」だ。 水が豊富で、水神を祀る多土半島という地における過去の伝承から現代までを綴る。 源為朝や修験者、鬼やキリシタン大名などの、いかにも教科書に出て来そうな素材が散りばめられているかと思いきや、現代の選挙における生々しい実情なども描か

    • 「貧乏性」井伏鱒二著:図書館司書の短編小説紹介

       子供の頃、父からもらった「リンセン」こと「ちょっとしたお小遣い」の使い道を考えるのが楽しかったという記憶から、手元に小金が入ると落ち着かなくてすぐに使ってしまうという現在までの話を書く。  短篇ながら、他にもいくつかの挿話が込められており、中でも興味深かったのは鯨の話だ。  著者が尋常小学校(今の小学校の四年生までの学校といったところか)に通っていた時、学校に流れの商売人である香具師(やし)が鯨を見せに来たという。  もちろん死んでいて、大八車に載せられたものだけれど、校長

      • 氷河期世代の司法書士挑戦 8

        ただ町を散歩しているだけで、全身汗みずくになる暑さ。 一昨年くらいから日傘を差すようになったけれど、これでずいぶん楽になる。 が、この異様な暑さだと空気がすでに熱い。暑いじゃなく、熱い。 日光を避けられても、息するだけで疲れが溜まっていくのがわかる。 命の危険を感じるのだけど、こんななかで今年も高校野球が行われるのだろうか。 試合の中盤で休憩を取るようになったとか聞いたけど、休む程度で回復しないダメージを受けそうな暑さなのだけど。 もっと時期をずらしてもいいのではないかと思う

        • 氷河期世代の司法書士挑戦 7

          梅雨明け宣言が出ていないのに、夏が全力を出してきている今日現在。 引き続き司法書士の勉強中。 会社法を進めつつ、民法の復習も並行して実行中。 こうあるけれど、この所在不明共有者はどこから出て来たのかと。 所在不明なのに、その人から時価相当額の支払いを請求されるとは一体? テキストを見ても、その説明はなかったような。 つまりは、所在不明者が所在不明じゃなくなった時=姿を現した時に、かつて共有していた分のお金を渡さなければいけないということ、なのか? それは所在不明になってい

        「行ったり来たり」光岡明著:読書感想文

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          7本

        記事

          氷河期世代の司法書士挑戦 6

          引き続き会社法の学習。 不動産登記法の時と同じで、会社法でも登録免許税を知っていることを前提に参考書の記述が進んで行く。 もしかして、司法書士受験生にとって登録免許税を覚えることって基礎中の基礎だったりするのだろうか。 それともオートマシステムを読む前に、その前提となる本があるのか。 不安になりながら、都度登録免許税がいくらか調べつつ参考書を読んでいる。 これが独学の弱み。 自分が進んでいる方向が合っているのかどうか判断できないという。 自分と同じようなところで彷徨っている受

          氷河期世代の司法書士挑戦 6

          氷河期世代の司法書士挑戦 5

          司法書士の試験勉強を四月から始めて、そろそろ三か月が終わる。 これまではオートマシステムでひたすらインプットをして来たけれど、そろそろアウトプットをしてもいいかなと。 過去問が収録された問題集を買おうとしたけれど、自分が試験を受ける来年度用のそれは、今年の十月くらいから出版が始まるらしい。 それならば、重要項目を凝縮させたらしい伊藤塾の「うかる! 司法書士 必出3300選」で頭を整理させておこうと思って購入。 見開きの左に問題、右に解説が載っているのだけれど、その問題のレベル

          氷河期世代の司法書士挑戦 5

          氷河期世代の司法書士挑戦 4

          会社法をこつこつ進めている。 委員会等設置会社や監査等委員会設置会社といった、「等」の位置を統一して欲しいと何度も思う箇所に差し掛かっている。 アメリカ式の会社を真似て作った仕組みのようだけれど、日本に根付かないのがよくわかる。 これらの委員と付く会社には、経営と業務とを切り離そうという合理的な考えが垣間見える。 日本の会社は家族的な経営なので、そういう合理性とは相容れないものがあるよう。 どちらがいいとも言えないと思う。 国柄もあるし、価値観も人生観も違う哲学を持っている

          氷河期世代の司法書士挑戦 4

          氷河期世代の司法書士挑戦 3

          オートマシステムで、不動産登記法をひと通り読み終えたけれど、著者は登録免許税については皆知っているものだとの前提で書いているよう。 が、私は知らない。 調べればすぐにわかるけれど、一覧は一頁に載せられると思う。 これは載せて欲しかった。 一般常識というわけではないと思うし。 司法書士の勉強を始めるまで、もっと言えば不動産登記法に入るまで、登録免許税の存在すら知らなかったのだから。 不満とまではいかないけれど、ちょっとした要望としてそう感じた。

          氷河期世代の司法書士挑戦 3

          氷河期世代の司法書士挑戦 2

          四月くらいから司法書士試験の勉強を始めて、もうすぐで三か月。 進展はきっと遅いのだと思う。 早稲田経営出版の『オートマシステム』を教材にして勉強しているのだけど、結構レベルが高い。 ある程度法律の知識がないと、読み通すのも難しいと感じる。 行政書士の勉強をしたからどうにか読めるけれど、その経験が無かったらかなり苦労したと思う。 現在、『オートマシステム』の民法三冊、不動産登記法二冊を読み終えたところ。 読んだだけで身に付いているかはわからない。 ただ、不動産登記法については

          氷河期世代の司法書士挑戦 2

          「雛」幸田文著:図書館司書の短編小説紹介

           人を動かすには理詰めで説き伏せるのと、情に訴え掛けるのと、どちらが有効なのだろう。  「できる上司」の心構えが書かれた自己啓発書にありがちなテーマだけれど、本作を読んでまず考えたのがそのことだった。  主人公の女性は、一人娘のためにできる限りの、いや身の丈を過ぎるほど精一杯に贅を尽くした雛祭りを行いたいと決意する。  そのために分不相応なほど高価な雛人形を買い求め、子供用の座布団やお膳やお椀、重箱の一式も揃える。  さらにそれだけでは飽き足らず、雛壇の周りを飾る幕すらも

          「雛」幸田文著:図書館司書の短編小説紹介

          『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ著

           町で一番の天才少年であったハンスが、試験によって選抜された各地の才子たちと神学校の寄宿舎で過ごすようになった。  本作の前半では、そこで起こった青少年期特有の友情に基く葛藤、幼い利己心からのぶつかり合い、個性の伸長とそれを枠に抑えようとする規律との闘争などが描かれている。  車輪の下という言葉は、ドイツ語で「落ちこぼれ」を意味する。この車輪が何に由来するのかは諸説あるようだ。 その中で注目したいのは、ローマ神話の女神フォルトゥーナが司っているのが運命の輪であり、この輪のこと

          『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ著

          氷河期世代の司法書士挑戦

          氷河期世代の人たちは、今どう生きているのか。 自分の周りでは、うまく生きている人とそうでもない人の割合が半々程。 私自身は、きっと後者。 この先もうまく生きられないままなのか、と暗い気持にもならなくなってきた。 達観というか。 でも、どうにかしたいという気持ちはあって、大きな資格を取ってみようと思った。 Twitterで電験三種を取れば食いっぱぐれないとの呟きがあったので、早速参考書を買って読んでみた。 というのを。 いや、わからん。全然わからん。 サインコサインとか

          氷河期世代の司法書士挑戦

          『文体練習』レーモン・クノー著

          読書の楽しみは、流麗な文体で書かれた内容の濃い物語を読むことにあると思う。 が、その真逆を行く本がある。 しかも、面白い。 本の名前は『文体練習』、著者の名はレーモン・クノー。 原文はフランス語で書かれている。 本書で描かれる内容というのは、上記のものだけだ。 それを、脚本体、客観体、主観体、論文体、女子高生の会話体、田舎者の感想体、老人の愚痴体、枕草子体、漢文体、英語かぶれ体等々、実に99もの文体を使って書き分けていく。 同じ韻を踏んだラップのような文章や、「あのー」が連

          『文体練習』レーモン・クノー著

          「痴人の愛」谷崎潤一郎著:図書館司書の短編小説紹介

           少女を引き取り、自分の理想通りの女性に仕立て上げる。女権論者からすれば、発狂ものの筋書きである本作。  そういった支配欲というか、いびつな父性愛というか、その種のものを持っていない(と思う)私には、二十八歳の主人公河合譲治の言動に感情移入することはできなかったが、一風変わった恋愛劇について興味深く読むことができた。  カフェのウェイトレスとして働いていた十五歳のナオミは、その名の通り顔立ちも西洋的であったと描写される。  が、「ナオミ」はそれほど西洋的であろうか。確かにナオ

          「痴人の愛」谷崎潤一郎著:図書館司書の短編小説紹介

          「昼の花火」山川方夫著:図書館司書の短編小説紹介

           真夏の昼下がり、主人公は四つ年上の女性と母校の高校野球の観戦に向かう。  野球場の席に腰を下ろした時、彼はふと今隣に座る女性と参加した、花火大会の夜に見た光景を思い出す。  あるビルの屋上から、外国人の幼い少女が夜空に咲き乱れる花火に向けて手を振り、大声に叫んでいる姿があった。  成人した後まで、彼女はこの夜のことを覚えているだろうか、と彼は考える。大人になった彼女は、花火のことは覚えていても、ビルのある東京の町のことは記憶の中に残っていまいと。  野球場で強い日差しに照ら

          「昼の花火」山川方夫著:図書館司書の短編小説紹介

          氷河期の首席

          大学三年の時、本屋でアルバイトをしていた。 確か、時給は700円台。県の最低時給だった。 その割に仕事は多かったし、責任も大きかった。 けれど辞めなかったのは、居酒屋でもコンビニエンスストアでも待遇は大して変わらなかったし、人間関係が良かったから。 大学生のアルバイトが五人くらい、パートのおばちゃんがやっぱり五人くらい。 それに、店長と社員の12人ほどで店を回していた。 強制もないのに、飲み会にはその全員が参加していたし、アルバイト同士では日帰り旅行に行ったりもしていた。 店

          氷河期の首席