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読書の記録(ごく一部)
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#本

【原田マハ】楽園のカンヴァス

【原田マハ】楽園のカンヴァス

いつまでも続くような物語が好きです。

小説の最後、「で、どうなったの?」が分からない作品が好きです。
彼女はどこまでも歩き続けられる気がした、とか見上げると青い空が広がっていた、とかとにかく、その後どうなったかを読者に任せるような、そんな結末の、物語が好きです。

久しぶりに小説を読んだなと思って、そうじゃなくて久しぶりに面白い小説を読んだんだと気が付きました。ページをめくりたくて、でもめくるの

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【柚木麻子】その手をにぎりたい

【柚木麻子】その手をにぎりたい

私はバブルを知りません。私が生まれた時から今まで、華やかな好景気は訪れていません。聞こえる言葉はリーマンショック、不景気、就職難。
だから、私はバブルが実際にあったことという感じがしなくって、どこか夢物語のようにも感じてしまいます。

けれど、バブルの時代に生きた青子と高級寿司店「すし静」の物語である、柚木麻子さんの『その手をにぎりたい』を読んで、初めてバブル時代が身近に感じられました。
物語の中

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【坂木司】夜の光

【坂木司】夜の光

星を見るのが、昔から好きです。
月と星の、大きいはずなのに小さく見える距離。遥か昔から届く光。
自分がちっぽけだと思い知らせてくれる、とてつもなく大きなものを見ると安心してしまうのは、なぜなのでしょう。大きな未来には、怖れを感じてしまうというのに。

夜空を見上げる高校の天文部で、4人のスパイは、それぞれがそれぞれの事情と感情を抱え、行き場のない夜を共有します。
坂木司さん『夜の光』。

「『むし

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【伊坂幸太郎】火星に住むつもりかい?

【伊坂幸太郎】火星に住むつもりかい?

伊坂幸太郎さんの「火星に住むつもりかい?」をご存知でしょうか。
最近私が読んだ本の中で一番ショックだったというか影響を受けたというか、とにかくすごい引力を持つ作品でした。
一言で感想を述べると、怖い、です。
一文だと……、こんな国になったらと思うと怖くて眠れない、です。

読後感は正直悪すぎ。
ですが、こんなテーマで読後感が良い方が怖いですね。おそらく、狙った通りの受け止められ方、で合っているので

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【柚木麻子】嘆きの美女

【柚木麻子】嘆きの美女

大学の友達のMちゃん、ものすごく美人なんです。もう、とんでもなく。間違いなく、私が今まで見たことのある人類の中で一番美人です、彼女。
そのMちゃん、先輩に贔屓されてるとか優遇されて当然と思ってるとか、先生に取り入ってるとかそんな類の噂が私の耳にも入ってました。
そこまで言わなくても……と思うような。人の裏側を見てしまったような。そんな類の噂ばかり。
どんなに真剣にやっていても、美人だというだけで他

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