かめのべ工房

頭が下り坂を転げ落ちている実感しきり。

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頭が下り坂を転げ落ちている実感しきり。

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立売ガールの結末

12月初旬のこと、友人から↓こんなLINEが入りました。 かめのべ♪のお話は 「冷たい風が頬を刺す」で始まり「また必ず会えると知っているから」で終わります。 https://sh

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墜落奇譚

世では「One Room Music」がそれなりに盛り上がっているとのことで、2月の初めの頃だったか、ふと思い立って自分も30年ぶりに楽曲を制作し始めてみました。かつては200万円…

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青天乃霹靂(弐)

10月7日、いよいよ手術前日、入院の日がやって来た。1週間以上の入院になる予定なのだが手術の後はICU(集中治療室)へ直行でそこには歯ブラシと電動ひげ剃りくらいしか…

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青天乃霹靂(壱)

 先々週の木曜日(9/19)の昼休みことである。  3連休が2週続くこともあってその数日仕事が重なってしまい、前々日はここ数年来という0時過ぎ、前日も10時近くまでの…

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らすとてちん

 東京医大の入学試験で、女子受験生の点数を減点調整して女子の入学者数を削っていたということが明らかになり、改めてこの国の女性差別の現実があからさまになりました。…

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映画「セッション」に思う

(Yahoo!映画に評をアップするために久々に^^;文章を書いたのでこちらにもアップしておきます) 辛い映画だった。 「音楽」をテーマとした物語であるのに登場人物の誰一…

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V字ジャンプ誕生秘話

 4月1日となり、桜も満開の春が巡ってまいりましたが、この冬日本のスキージャンプ陣は高梨紗羅選手のW杯総合優勝やレジェンド葛西紀明選手の最高年齢表彰台の更新など充…

哀切のライブビデオ

K宅の物置の奥から古いビデオテープが詰め込んであった段ボール箱が出てきた。 段ボール箱の中のビデオテープはそのほとんどがラベルの貼っていない、再生しなければ中に…

ウォーキング・タイムマシン

 2年前の10月の終わりのことである。  Kは久し振りに体重計に乗ってみた。ずーっと「どうもヤバいぞ」という自覚にモヤモヤしつつも現実を直視することから逃げていた…

Kの喜劇

船橋に超大型北欧家具店「IKEA」ができて10年ほどになるが、当時、開店早々に訪れたKは超激安の本棚を見つけて5セットほど購入、野放し状態だった蔵書を整理することとなっ…

水底

00:00 | 00:00

夏の日の午後 一人 裸で泳ぐ僕を 君は木陰で 見ていた 僕は手を振り 一つ 大きく息を吸って 水の扉を 開くよ ああ 僕の身体は 水の中へと 溶け込むように 落ち…

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シャボン玉ひとつ

00:00 | 00:00

夢をみたよ シャボン玉ひとつ 宇宙のふちを すべる夢 震えながら 太陽風に吹かれ 銀河の尾根を越えてゆく モノクロの宇宙に浮かぶ 小さな虹の玉 夢をみたよ シャボン玉…

無念ペンネーム

恥ずかしい話である。 Kが敬愛する作家の一人に泡坂妻夫氏というミステリ作家がいる(残念ながら数年前にお亡くなりになった。合掌)。「蔭桔梗」という小説で直木賞も受…

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家庭教師

Kの大学時代のお話である。 当時Kは某体育会運動部に所属していたのだが、ある時先輩から「家庭教師のアルバイトあるんだけど、やらないか?」と持ちかけられた。生徒とな…

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あーん、もう

2007年、伊勢の銘菓「赤福」の消費期限及び製造日・原材料表示偽装が発覚し、連日テレビのニュースを騒がせていた頃のことである。酒かチョコか?と問われれば躊躇なく「チ…

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贋説故事成語~【臥薪嘗胆】

【臥薪嘗胆】という故事成語がある。「がしんしょうたん」と読む、念のため。 〔「史記(越王勾践世家)」「呉越春秋」などから。中国の春秋時代、越王勾践(こうせん)に父…

立売ガールの結末

12月初旬のこと、友人から↓こんなLINEが入りました。

かめのべ♪のお話は
「冷たい風が頬を刺す」で始まり「また必ず会えると知っているから」で終わります。
https://shindanmaker.com/804548

何じゃこりゃ? と思ってリンク先を訪ねたら、有名な「診断メーカー」サイトの「こんなお話いかがですか」というページでした。

>>CP名や人物名を入れて遊んでください。小説、ま

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墜落奇譚

世では「One Room Music」がそれなりに盛り上がっているとのことで、2月の初めの頃だったか、ふと思い立って自分も30年ぶりに楽曲を制作し始めてみました。かつては200万円以上もかけて六畳間を埋めていたシンセサイザーやマルチトラックレコーダーといった機材が、今では10年もののMacintosh PowerBook 付属のGaragebandだけでことが足りてしまうというのは感慨深いものです もっとみる

青天乃霹靂(弐)

10月7日、いよいよ手術前日、入院の日がやって来た。1週間以上の入院になる予定なのだが手術の後はICU(集中治療室)へ直行でそこには歯ブラシと電動ひげ剃りくらいしか持ち込むスペースが無いとのことで、全くの軽装にて娘と病院へ向かう。(一晩だけなのにどちらも必要か?と思ったが何日も入り続ける患者さんもいるのだということを受けてのマニュアルだということが後に分かる)

手術前日とはいえもう検査も診察も

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青天乃霹靂(壱)

 先々週の木曜日(9/19)の昼休みことである。

 3連休が2週続くこともあってその数日仕事が重なってしまい、前々日はここ数年来という0時過ぎ、前日も10時近くまでの残業と流石に疲れがたまっており、昼食の仕出し弁当を食べ終わった後はウォーキングに出る気にもならず、パソコンでツイッターのタイムラインなどを眺めてボーッと頭をクールダウンさせていた。
 タイムラインを下から上へだらだらと流して眺めてい

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らすとてちん

 東京医大の入学試験で、女子受験生の点数を減点調整して女子の入学者数を削っていたということが明らかになり、改めてこの国の女性差別の現実があからさまになりました。この件についてツイッターでは「#私たちは女性差別に怒っていい」などのタグで数多くのツイートが投稿され、「実際にこんな差別を受けた」とか「こんな現実がある」など、怒りの声が雪崩を打ったように世に放たれました。

 そんな中で多く見られたのが「

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映画「セッション」に思う

(Yahoo!映画に評をアップするために久々に^^;文章を書いたのでこちらにもアップしておきます)

辛い映画だった。

「音楽」をテーマとした物語であるのに登場人物の誰一人として音楽を楽しんでいない。音「楽」ではなく音「苦」の物語。最後に救いがあるのかと思えばそうではない。監督・脚本であるディミアン・チャゼルの音楽に対するコンプレックスやトラウマ(←本人がそのようなことを述べているから間違いはな

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V字ジャンプ誕生秘話

 4月1日となり、桜も満開の春が巡ってまいりましたが、この冬日本のスキージャンプ陣は高梨紗羅選手のW杯総合優勝やレジェンド葛西紀明選手の最高年齢表彰台の更新など充実した成績を収めました。再三のルール改正などの逆風で一時不振を極めた日本のスキージャンプチームですが見事な復活を遂げつつあると言えましょう。

 ところで、今を去ること44年前の1972年に冬季札幌オリンピックが開催されまして、幼かった私

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哀切のライブビデオ

K宅の物置の奥から古いビデオテープが詰め込んであった段ボール箱が出てきた。

段ボール箱の中のビデオテープはそのほとんどがラベルの貼っていない、再生しなければ中に何が録画してあるのかがわからないブラックボックスのようなテープだったのであるが、

(あ、ここからホラー話が続けられるな、と一瞬思ったが、とりあえず今回はそういう話ではない。まあK本人にしてみればある意味「恐怖」かもしれないが……。しかし
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ウォーキング・タイムマシン

 2年前の10月の終わりのことである。

 Kは久し振りに体重計に乗ってみた。ずーっと「どうもヤバいぞ」という自覚にモヤモヤしつつも現実を直視することから逃げていたが、さすがに逃げ切れないと観念したのである。体重計に現れた数値は

 「75.7kg」

 そこまで来ていたか……というのが実感だった。

 実はその春頃からどうにかしたいな……とは思っていた(まあ例年薄着になりはじめる春先にはそう思う

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Kの喜劇

船橋に超大型北欧家具店「IKEA」ができて10年ほどになるが、当時、開店早々に訪れたKは超激安の本棚を見つけて5セットほど購入、野放し状態だった蔵書を整理することとなった。

あちこちの書棚にランダムに分散し、また段ボールの中に詰め込んで押入れや物置にしまい込んでいた本をあらためて著者別・ジャンル別に自分なりの分類で並べ直していったのだが、一通り揃えている著者の本など全冊並べるとやはり気持ちいい。

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水底

かめのべ工房

00:00 | 00:00

夏の日の午後 一人 裸で泳ぐ僕を
君は木陰で 見ていた

僕は手を振り 一つ 大きく息を吸って
水の扉を 開くよ

ああ 僕の身体は
水の中へと 溶け込むように 落ちてゆくよ
揺らめきながら 光と共に 幾千の泡になって

蒼い世界の底に ねそべりながら
はるか高みの空を 見ていた

眠り続ける時計 歌を知らない魚
みんなが やさしかったよ

「もう 返らなくちゃ」と
誰かの声が 聞こえたような気が

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シャボン玉ひとつ

かめのべ工房

00:00 | 00:00

夢をみたよ シャボン玉ひとつ
宇宙のふちを すべる夢

震えながら 太陽風に吹かれ
銀河の尾根を越えてゆく

モノクロの宇宙に浮かぶ
小さな虹の玉

夢をみたよ シャボン玉ひとつ
宇宙のふちで消える夢

美しすぎた シャボン玉ひとつ
命尽きて 消えてゆく

億千年の眠りの中で
一瞬触れた夢

一瞬触れた夢

(© 1993/2013 かめのべ工房)

無念ペンネーム

恥ずかしい話である。

Kが敬愛する作家の一人に泡坂妻夫氏というミステリ作家がいる(残念ながら数年前にお亡くなりになった。合掌)。「蔭桔梗」という小説で直木賞も受賞しているのだが今ひとつ一般的に認知度は低い作家であり「亜愛一郎シリーズ」や「奇術探偵曽我佳城シリーズ」など奇妙な論理の筋立てと一筋縄ではいかない個性的なキャラクターの登場する連作短編や「しあわせの書」のようなあっと驚く仕掛けを施した作品

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家庭教師

Kの大学時代のお話である。

当時Kは某体育会運動部に所属していたのだが、ある時先輩から「家庭教師のアルバイトあるんだけど、やらないか?」と持ちかけられた。生徒となるのは中学三年生の男の子で、ずっとその先輩が家庭教師をやっていたのだったが、先輩も教育実習やら卒論の準備やら忙しくなるということで、Kに交代の白羽の矢が立ったのである。もちろん年中無休で金欠症だったKにとっては渡りに船の話で、「やります

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あーん、もう

2007年、伊勢の銘菓「赤福」の消費期限及び製造日・原材料表示偽装が発覚し、連日テレビのニュースを騒がせていた頃のことである。酒かチョコか?と問われれば躊躇なく「チョコ」と答えるKは、繰り返し繰り返しニュース画面に映し出されるその商品映像に、どうしても「赤福」が食べたくて食べたくてもうたまらんという状態となっていた。しかしながら事件の影響から赤福の商品は回収され流通は途絶えている。

ああ、どこか

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贋説故事成語~【臥薪嘗胆】

【臥薪嘗胆】という故事成語がある。「がしんしょうたん」と読む、念のため。

〔「史記(越王勾践世家)」「呉越春秋」などから。中国の春秋時代、越王勾践(こうせん)に父を討たれた呉王夫差(ふさ)は常に薪(たきぎ)の上に寝て復讐の志を奮い立たせ、ついに仇を報いた。敗れた勾践は室内に胆(きも)を掛けてこれを嘗(な)め、そのにがさで敗戦の恥辱を思い出してついに夫差を滅ぼしたという故事による〕

ということか

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