最近の記事
- 固定された記事
- 再生
墜落奇譚
世では「One Room Music」がそれなりに盛り上がっているとのことで、2月の初めの頃だったか、ふと思い立って自分も30年ぶりに楽曲を制作し始めてみました。かつては200万円以上もかけて六畳間を埋めていたシンセサイザーやマルチトラックレコーダーといった機材が、今では10年もののMacintosh PowerBook 付属のGaragebandだけでことが足りてしまうというのは感慨深いものです。歌唱も自分自身のへっぽこボーカルに忸怩たる思いをしていたものだから、全く音程もリズムも外さないで歌ってくれる初音ミク嬢の存在は夢のよう。 30年前もそうでしたが、世界には素晴らしい楽曲が星の数ほどあって、今さら自分ごときが何か創る余地があるのかしら? という思いは常にあり、はて、自分が創れる自分らしいもの…っていったいどういうものなんだろ? を考えた先がこの楽曲になっています。どうもすみませんm(__)m…って謝ってどうする(笑)。 それにしても、うん、とりあえず、ふと思い立ってよかった。 『墜落奇譚』 ぐるぐると回る青空と 迫るアスファルト ビルの谷間を僕は落ちてく 足すべらせたんだっけ 誰かに突き落とされたんだっけ それとも 自分から飛び降りたんだっけ 重力加速度の9.8m/毎秒毎秒は 逃れられないから もうすぐ大地に叩きつけられちゃうな あれ? 主人公が死んじゃったなら 物語が終わっちゃうね そんなはずないよね その時翼がはえるはず 背中に翼がはえるはず すべての終わりを迎える瞬間 翼をひろげて 大空目指して翔べるはず どこでも自由に行けるはず あの日あの時に 通り過ぎた道からやり直そう 好きだったあの子に告白をしなくちゃ 観たかった映画も観よう 今年は見られなかった桜も来年は 絶対二人して見に行くんだ そういや僕の生まれた日は 今日のような晴れだったと 母さんが言っていたな 長いこと帰らなくてゴメンね 明日はきっと会いに行くよ 背中に翼がはえるなら どこでも自由に行けるなら あの日あの時の 間違っちゃった答えを 全部 全部 全部 全部 消しゴムで消して ぐるぐると回る青空 迫るアスファルト ぐるぐると回る青空 迫る その時翼がはえるはず 背中に翼がはえるはず すべての終わりを迎える瞬間 翼を広げて 大空
- 再生
哀切のライブビデオ
K宅の物置の奥から古いビデオテープが詰め込んであった段ボール箱が出てきた。 段ボール箱の中のビデオテープはそのほとんどがラベルの貼っていない、再生しなければ中に何が録画してあるのかがわからないブラックボックスのようなテープだったのであるが、 (あ、ここからホラー話が続けられるな、と一瞬思ったが、とりあえず今回はそういう話ではない。まあK本人にしてみればある意味「恐怖」かもしれないが……。しかしいつか物置の奥から古いビデオテープが出てくるところから始まるホラー話を書いてみたいものである) その中に手書きの文字でこんな書き込みのあるテープがあった。 「ヘブンズ Live at Adm vol.3」 それは、20数年前、Kが参加していたバンドの池袋のライブハウスでの演奏を撮ったテープだった。 と、ここで、以前書いた「緊迫のセッション」の後日譚を書いておかねばならない。 (「緊迫のセッション」 https://note.mu/kamenove/n/n2195180e0f83 ) かのヘビメタくんは結局バンドに参加することになった。オーディションセッションでのガチガチにこわばった棒立ち演奏に多少不安はあったが、まあそれは初顔合わせの緊張感から来るものだったであろう、何よりも外見こそハードに突っ張っていたが、セッションにあたって真面目に曲を覚えて来てくれていたというのが好感を持てたし、本人もバンドに参加したいという熱意があり、とにかくギターがいなければ曲作りも練習もLIVEもできないわけで、晴れてヘビメタくんはヘブンズ(仮名)の新ギタリストとして迎え入れられることとなったのであった。 いよいよ地味系軟弱バンドだったヘブンズ(仮名)に華のあるハードなギタリストが加入したことでバンドも新しい境地に漕ぎ出せるか……とKをはじめ旧メンバーも期待に胸を膨らませたのであったが、まあそう簡単にはいかないのがバンド活動というものである。逆にヘブンズ(仮名)は大きな停滞期に突入してしまったのだった。というのは、新加入のヘビメタくんがどうしても「オリジナル曲」を演奏することができなかったのである。 完全オリジナル曲バンドだったヘブンズ(仮名)の曲作りは、リーダーのマツがギターのコードとメロディーだけで上げてきたデモをドラム・ギター・ベースそれぞれが自分のパートを考えてスタジオでセッションしながら合わせて作り上げていくという形だったのだが、残念ながらヘビメタくんは自分でリフやフレーズを考えることが出来なかったのだ。そして致命的だったのが、ギターの最大の見せ場である間奏のソロが……ダサかった。悲しい言い方をしてしまえば、センスが無かったのである。ヘビメタくんとは半年ほど一緒にやってみたが、やはり新曲もままならずライブも出来ないということは困った事態で、バンド活動も行き詰まり、再びヘブンズ(仮名)はギター探しを行わなければならなくなったのだった。 そして、ヘビメタくんと同じく地元のバンド野郎だったアキちゃんが加入することになったわけだが、このアキちゃんは今度こそ「いい」ギタリストだった。マツの簡単なデモ曲をきれいなフレーズとリフでふくらませ、旧曲にも新アレンジで新たな息吹を吹き込み、ソロはメロディアスで、カッティングにもキレがあった。彼が加入してからは練習で「いいじゃん、それ」という言葉が行き交うことが格段に増えたものだった。 かくしてリーダー&ボーカルのマツ、ドラムのりゅーちゃん、ギターのアキちゃん、そしてベースのKというメンバーになったヘブンズは新曲を携えて念願のライブに打って出ることになり、そしてようやく冒頭のビデオテープに話は戻る。 そこに録画されていたのはこのメンバーの時期のライブだったのであるが、あらためて視て(聴いて)みてKがしみじみ思ったのは、 《もっとベースががんばってればいいバンドだったのに》 だった。そして 《せっかくベースやらせてもらっているのだから、もっともっと色々と弾けばよかった》 《もっともっと弾きようがあったんじゃないか?》 という忸怩たる思いも今さらながら痛感したのだった。 切ないものである。 何はともあれ1曲貼っておく。ライブ曲の中でとりあえず一番ベースががんばっていると思われる曲だ。それが冒頭の動画である。