かめのべ工房

頭が下り坂を転げ落ちている実感しきり。

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立売ガールの結末

12月初旬のこと、友人から↓こんなLINEが入りました。 かめのべ♪のお話は 「冷たい風が頬を刺す」で始まり「また必ず会えると知っているから」で終わります。 https://shindanmaker.com/804548 何じゃこりゃ? と思ってリンク先を訪ねたら、有名な「診断メーカー」サイトの「こんなお話いかがですか」というページでした。 >>CP名や人物名を入れて遊んでください。小説、または漫画の書き出しと書き終わりが日替わりで指定されます。創作にどうぞ。 とのこ

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      墜落奇譚

      世では「One Room Music」がそれなりに盛り上がっているとのことで、2月の初めの頃だったか、ふと思い立って自分も30年ぶりに楽曲を制作し始めてみました。かつては200万円以上もかけて六畳間を埋めていたシンセサイザーやマルチトラックレコーダーといった機材が、今では10年もののMacintosh PowerBook 付属のGaragebandだけでことが足りてしまうというのは感慨深いものです。歌唱も自分自身のへっぽこボーカルに忸怩たる思いをしていたものだから、全く音程もリズムも外さないで歌ってくれる初音ミク嬢の存在は夢のよう。 30年前もそうでしたが、世界には素晴らしい楽曲が星の数ほどあって、今さら自分ごときが何か創る余地があるのかしら? という思いは常にあり、はて、自分が創れる自分らしいもの…っていったいどういうものなんだろ? を考えた先がこの楽曲になっています。どうもすみませんm(__)m…って謝ってどうする(笑)。 それにしても、うん、とりあえず、ふと思い立ってよかった。 『墜落奇譚』 ぐるぐると回る青空と 迫るアスファルト ビルの谷間を僕は落ちてく 足すべらせたんだっけ 誰かに突き落とされたんだっけ それとも 自分から飛び降りたんだっけ 重力加速度の9.8m/毎秒毎秒は 逃れられないから もうすぐ大地に叩きつけられちゃうな あれ? 主人公が死んじゃったなら 物語が終わっちゃうね そんなはずないよね その時翼がはえるはず 背中に翼がはえるはず すべての終わりを迎える瞬間 翼をひろげて 大空目指して翔べるはず どこでも自由に行けるはず あの日あの時に 通り過ぎた道からやり直そう 好きだったあの子に告白をしなくちゃ 観たかった映画も観よう 今年は見られなかった桜も来年は 絶対二人して見に行くんだ そういや僕の生まれた日は 今日のような晴れだったと 母さんが言っていたな 長いこと帰らなくてゴメンね 明日はきっと会いに行くよ 背中に翼がはえるなら どこでも自由に行けるなら あの日あの時の 間違っちゃった答えを 全部 全部 全部 全部 消しゴムで消して ぐるぐると回る青空 迫るアスファルト ぐるぐると回る青空 迫る その時翼がはえるはず 背中に翼がはえるはず すべての終わりを迎える瞬間 翼を広げて 大空

      • 青天乃霹靂(弐)

        10月7日、いよいよ手術前日、入院の日がやって来た。1週間以上の入院になる予定なのだが手術の後はICU(集中治療室)へ直行でそこには歯ブラシと電動ひげ剃りくらいしか持ち込むスペースが無いとのことで、全くの軽装にて娘と病院へ向かう。(一晩だけなのにどちらも必要か?と思ったが何日も入り続ける患者さんもいるのだということを受けてのマニュアルだということが後に分かる) 手術前日とはいえもう検査も診察も無いので、病室に収まり、パジャマに着替えて陰毛チェック(今回鼠蹊部からカテーテル

        • 青天乃霹靂(壱)

           先々週の木曜日(9/19)の昼休みことである。  3連休が2週続くこともあってその数日仕事が重なってしまい、前々日はここ数年来という0時過ぎ、前日も10時近くまでの残業と流石に疲れがたまっており、昼食の仕出し弁当を食べ終わった後はウォーキングに出る気にもならず、パソコンでツイッターのタイムラインなどを眺めてボーッと頭をクールダウンさせていた。  タイムラインを下から上へだらだらと流して眺めていると、ふと気になる記事の引用が目に留まった。確か「丸亀製麺は実は香川県とは無縁云

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        立売ガールの結末

          らすとてちん

           東京医大の入学試験で、女子受験生の点数を減点調整して女子の入学者数を削っていたということが明らかになり、改めてこの国の女性差別の現実があからさまになりました。この件についてツイッターでは「#私たちは女性差別に怒っていい」などのタグで数多くのツイートが投稿され、「実際にこんな差別を受けた」とか「こんな現実がある」など、怒りの声が雪崩を打ったように世に放たれました。  そんな中で多く見られたのが「結婚や出産をした時に仕事をやめなければならない」「やめるのが当たり前」という前提

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          映画「セッション」に思う

          (Yahoo!映画に評をアップするために久々に^^;文章を書いたのでこちらにもアップしておきます) 辛い映画だった。 「音楽」をテーマとした物語であるのに登場人物の誰一人として音楽を楽しんでいない。音「楽」ではなく音「苦」の物語。最後に救いがあるのかと思えばそうではない。監督・脚本であるディミアン・チャゼルの音楽に対するコンプレックスやトラウマ(←本人がそのようなことを述べているから間違いはないだろう)は十分過ぎるほど伝わってきたが、音楽を愛好する人間にとっては根本的に容

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          V字ジャンプ誕生秘話

           4月1日となり、桜も満開の春が巡ってまいりましたが、この冬日本のスキージャンプ陣は高梨紗羅選手のW杯総合優勝やレジェンド葛西紀明選手の最高年齢表彰台の更新など充実した成績を収めました。再三のルール改正などの逆風で一時不振を極めた日本のスキージャンプチームですが見事な復活を遂げつつあると言えましょう。  ところで、今を去ること44年前の1972年に冬季札幌オリンピックが開催されまして、幼かった私もTVにかじりついて初めて見る冬季競技に夢中になったものです。その時には70m級

          V字ジャンプ誕生秘話

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          哀切のライブビデオ

          K宅の物置の奥から古いビデオテープが詰め込んであった段ボール箱が出てきた。 段ボール箱の中のビデオテープはそのほとんどがラベルの貼っていない、再生しなければ中に何が録画してあるのかがわからないブラックボックスのようなテープだったのであるが、 (あ、ここからホラー話が続けられるな、と一瞬思ったが、とりあえず今回はそういう話ではない。まあK本人にしてみればある意味「恐怖」かもしれないが……。しかしいつか物置の奥から古いビデオテープが出てくるところから始まるホラー話を書いてみたいものである) その中に手書きの文字でこんな書き込みのあるテープがあった。 「ヘブンズ Live at Adm vol.3」 それは、20数年前、Kが参加していたバンドの池袋のライブハウスでの演奏を撮ったテープだった。 と、ここで、以前書いた「緊迫のセッション」の後日譚を書いておかねばならない。 (「緊迫のセッション」 https://note.mu/kamenove/n/n2195180e0f83 ) かのヘビメタくんは結局バンドに参加することになった。オーディションセッションでのガチガチにこわばった棒立ち演奏に多少不安はあったが、まあそれは初顔合わせの緊張感から来るものだったであろう、何よりも外見こそハードに突っ張っていたが、セッションにあたって真面目に曲を覚えて来てくれていたというのが好感を持てたし、本人もバンドに参加したいという熱意があり、とにかくギターがいなければ曲作りも練習もLIVEもできないわけで、晴れてヘビメタくんはヘブンズ(仮名)の新ギタリストとして迎え入れられることとなったのであった。 いよいよ地味系軟弱バンドだったヘブンズ(仮名)に華のあるハードなギタリストが加入したことでバンドも新しい境地に漕ぎ出せるか……とKをはじめ旧メンバーも期待に胸を膨らませたのであったが、まあそう簡単にはいかないのがバンド活動というものである。逆にヘブンズ(仮名)は大きな停滞期に突入してしまったのだった。というのは、新加入のヘビメタくんがどうしても「オリジナル曲」を演奏することができなかったのである。 完全オリジナル曲バンドだったヘブンズ(仮名)の曲作りは、リーダーのマツがギターのコードとメロディーだけで上げてきたデモをドラム・ギター・ベースそれぞれが自分のパートを考えてスタジオでセッションしながら合わせて作り上げていくという形だったのだが、残念ながらヘビメタくんは自分でリフやフレーズを考えることが出来なかったのだ。そして致命的だったのが、ギターの最大の見せ場である間奏のソロが……ダサかった。悲しい言い方をしてしまえば、センスが無かったのである。ヘビメタくんとは半年ほど一緒にやってみたが、やはり新曲もままならずライブも出来ないということは困った事態で、バンド活動も行き詰まり、再びヘブンズ(仮名)はギター探しを行わなければならなくなったのだった。 そして、ヘビメタくんと同じく地元のバンド野郎だったアキちゃんが加入することになったわけだが、このアキちゃんは今度こそ「いい」ギタリストだった。マツの簡単なデモ曲をきれいなフレーズとリフでふくらませ、旧曲にも新アレンジで新たな息吹を吹き込み、ソロはメロディアスで、カッティングにもキレがあった。彼が加入してからは練習で「いいじゃん、それ」という言葉が行き交うことが格段に増えたものだった。 かくしてリーダー&ボーカルのマツ、ドラムのりゅーちゃん、ギターのアキちゃん、そしてベースのKというメンバーになったヘブンズは新曲を携えて念願のライブに打って出ることになり、そしてようやく冒頭のビデオテープに話は戻る。 そこに録画されていたのはこのメンバーの時期のライブだったのであるが、あらためて視て(聴いて)みてKがしみじみ思ったのは、 《もっとベースががんばってればいいバンドだったのに》 だった。そして 《せっかくベースやらせてもらっているのだから、もっともっと色々と弾けばよかった》 《もっともっと弾きようがあったんじゃないか?》 という忸怩たる思いも今さらながら痛感したのだった。 切ないものである。 何はともあれ1曲貼っておく。ライブ曲の中でとりあえず一番ベースががんばっていると思われる曲だ。それが冒頭の動画である。

          哀切のライブビデオ

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          ウォーキング・タイムマシン

           2年前の10月の終わりのことである。  Kは久し振りに体重計に乗ってみた。ずーっと「どうもヤバいぞ」という自覚にモヤモヤしつつも現実を直視することから逃げていたが、さすがに逃げ切れないと観念したのである。体重計に現れた数値は  「75.7kg」  そこまで来ていたか……というのが実感だった。  実はその春頃からどうにかしたいな……とは思っていた(まあ例年薄着になりはじめる春先にはそう思うのであるが)。しかし夏は、暑い。動きたくない。ビールが美味い。そしてKはどんなに

          ウォーキング・タイムマシン

          Kの喜劇

          船橋に超大型北欧家具店「IKEA」ができて10年ほどになるが、当時、開店早々に訪れたKは超激安の本棚を見つけて5セットほど購入、野放し状態だった蔵書を整理することとなった。 あちこちの書棚にランダムに分散し、また段ボールの中に詰め込んで押入れや物置にしまい込んでいた本をあらためて著者別・ジャンル別に自分なりの分類で並べ直していったのだが、一通り揃えている著者の本など全冊並べるとやはり気持ちいい。仁木悦子や天藤真の文庫も段ボールの底でよれよれになっていたものを蔵出しし、また長

          水底

          夏の日の午後 一人 裸で泳ぐ僕を 君は木陰で 見ていた 僕は手を振り 一つ 大きく息を吸って 水の扉を 開くよ ああ 僕の身体は 水の中へと 溶け込むように 落ちてゆくよ 揺らめきながら 光と共に 幾千の泡になって 蒼い世界の底に ねそべりながら はるか高みの空を 見ていた 眠り続ける時計 歌を知らない魚 みんなが やさしかったよ 「もう 返らなくちゃ」と 誰かの声が 聞こえたような気がして 浮かび上がって 君の姿を確かめたけれど ああ「君の笑顔を 忘れないよ」と言った 僕の言葉だけだね 岸辺に立った僕の記憶に残されたものは (© 1993/2013 かめのべ工房)

          シャボン玉ひとつ

          夢をみたよ シャボン玉ひとつ 宇宙のふちを すべる夢 震えながら 太陽風に吹かれ 銀河の尾根を越えてゆく モノクロの宇宙に浮かぶ 小さな虹の玉 夢をみたよ シャボン玉ひとつ 宇宙のふちで消える夢 美しすぎた シャボン玉ひとつ 命尽きて 消えてゆく 億千年の眠りの中で 一瞬触れた夢 一瞬触れた夢 (© 1993/2013 かめのべ工房)

          シャボン玉ひとつ

          シャボン玉ひとつ

          無念ペンネーム

          恥ずかしい話である。 Kが敬愛する作家の一人に泡坂妻夫氏というミステリ作家がいる(残念ながら数年前にお亡くなりになった。合掌)。「蔭桔梗」という小説で直木賞も受賞しているのだが今ひとつ一般的に認知度は低い作家であり「亜愛一郎シリーズ」や「奇術探偵曽我佳城シリーズ」など奇妙な論理の筋立てと一筋縄ではいかない個性的なキャラクターの登場する連作短編や「しあわせの書」のようなあっと驚く仕掛けを施した作品などが少数のマニアックなファンから愛されている。もし未読で興味をお持ちの方がおら

          無念ペンネーム

          家庭教師

          Kの大学時代のお話である。 当時Kは某体育会運動部に所属していたのだが、ある時先輩から「家庭教師のアルバイトあるんだけど、やらないか?」と持ちかけられた。生徒となるのは中学三年生の男の子で、ずっとその先輩が家庭教師をやっていたのだったが、先輩も教育実習やら卒論の準備やら忙しくなるということで、Kに交代の白羽の矢が立ったのである。もちろん年中無休で金欠症だったKにとっては渡りに船の話で、「やります、やります!!」と飛びついたKに、先輩は「道順はここに書いておいたから」と一枚の

          あーん、もう

          2007年、伊勢の銘菓「赤福」の消費期限及び製造日・原材料表示偽装が発覚し、連日テレビのニュースを騒がせていた頃のことである。酒かチョコか?と問われれば躊躇なく「チョコ」と答えるKは、繰り返し繰り返しニュース画面に映し出されるその商品映像に、どうしても「赤福」が食べたくて食べたくてもうたまらんという状態となっていた。しかしながら事件の影響から赤福の商品は回収され流通は途絶えている。 ああ、どこかに「闇赤福」とか、裏ルートで流通してないであろうか……。 **********

          あーん、もう

          贋説故事成語~【臥薪嘗胆】

          【臥薪嘗胆】という故事成語がある。「がしんしょうたん」と読む、念のため。 〔「史記(越王勾践世家)」「呉越春秋」などから。中国の春秋時代、越王勾践(こうせん)に父を討たれた呉王夫差(ふさ)は常に薪(たきぎ)の上に寝て復讐の志を奮い立たせ、ついに仇を報いた。敗れた勾践は室内に胆(きも)を掛けてこれを嘗(な)め、そのにがさで敗戦の恥辱を思い出してついに夫差を滅ぼしたという故事による〕 ということから「敵を討とうとして苦労し、努力すること。目的を達するため苦労を重ねること。肝を

          贋説故事成語~【臥薪嘗胆】