水底

水底

かめのべ工房
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夏の日の午後 一人 裸で泳ぐ僕を
君は木陰で 見ていた

僕は手を振り 一つ 大きく息を吸って
水の扉を 開くよ

ああ 僕の身体は
水の中へと 溶け込むように 落ちてゆくよ
揺らめきながら 光と共に 幾千の泡になって

蒼い世界の底に ねそべりながら
はるか高みの空を 見ていた

眠り続ける時計 歌を知らない魚
みんなが やさしかったよ

「もう 返らなくちゃ」と
誰かの声が 聞こえたような気がして
浮かび上がって 君の姿を確かめたけれど

ああ「君の笑顔を 忘れないよ」と言った
僕の言葉だけだね
岸辺に立った僕の記憶に残されたものは

(© 1993/2013 かめのべ工房)

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