Kの喜劇

船橋に超大型北欧家具店「IKEA」ができて10年ほどになるが、当時、開店早々に訪れたKは超激安の本棚を見つけて5セットほど購入、野放し状態だった蔵書を整理することとなった。

あちこちの書棚にランダムに分散し、また段ボールの中に詰め込んで押入れや物置にしまい込んでいた本をあらためて著者別・ジャンル別に自分なりの分類で並べ直していったのだが、一通り揃えている著者の本など全冊並べるとやはり気持ちいい。仁木悦子や天藤真の文庫も段ボールの底でよれよれになっていたものを蔵出しし、また長年日陰者の身だったエラリー・クイーンの文庫本もキレイに並べられて(本の状態は酷いものだが)ちょっとうれしいKであったが、並べてみて気がついた。なんとクイーンの代表作の一つ『Xの悲劇』の文庫が3冊あるではないか。

(左から創元推理文庫・新潮文庫・講談社文庫)

これは別にマニアックに版元や訳者別に買いそろえようとしたとかいうわけではなく、ただ単に、読みたいなと思った時に前に買った本が見つからず、ついまた買ってしまった……ということが重なっただけで、要は単なる大ボケである。

ところでKは本の扱いが粗雑である。入浴しながら本を読むことが多いので、文庫のカバーを取り外して風呂場に本体を持ち込み、入浴後もそのまま布団で読み続け、いつの間にかカバーと本体がはぐれてしまう……などは日常茶飯事で、結果、「いつか照合するからとりあえずここにまとめておこうカバー」が本棚の一隅に山となっており、かたや裸のまま寒々と本棚や段ボール箱に放置されていた文庫本が家中に散在していたわけである。

ということで、そう、ようやくその「いつか」の日がやってきたのであった。裸だった文庫本と孤独なカバーが再び巡り会い、収まるべき場所に次々に収まって行く。気持ち良いことこの上なし。

……と。

おや?

このカバーは?

いやはや。

『Xの悲劇』である。

しかも「創元推理文庫」版、さっきのと全く同じ奴。

無事(?)裸の本体の方もあって……。

ああ、せっかくなら「ハヤカワ」の『Xの悲劇』ならよかったのに、と思ったKである……もちろん買いはしないが。

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