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すぐ辞める若者 「短期コミット」時代

会社をすぐ辞める若者ーーという話題は、聞き飽きた感じがするが、最近の若者の「辞めやすさ」は、少し新次元のようだ。

さっき朝起きてコーヒーを飲みながらYouTubeを見てると、日テレがやはりその話題をやっていた。

新入社員の転職志向が高まっており、いまの会社で「定年まで働きたい」のは約2割しかいないという。


【転職まとめ】転職志向高まる 新入社員の約2割「定年まで働きたい」 / “2週間で800人以上の依頼”「退職代行」サービスに届く声とは? など(日テレNEWS LIVE 4月23日)


背景には、国内の人手不足、労働側の売り手市場がある。つまり、辞めてもすぐ次の就職先があるという事情があるという。

企業としては、新入社員に会社に合わせてもらうのはあきらめて、会社が新入社員に合わせなければならない、ということだ。


しかし、これは日本だけの話ではないらしい。

おとといはシンガポールのCNA(Channel NewsAsia)が、日本、中国をふくめた東アジア全般で、若者の「労働文化」が変わったという話をしていた。

若者は、より「ライフ・ワークバランス」を重視するようになり、ここでも短期的に仕事を変える傾向を指摘していた。

Work cultures in East Asia: Why do more young people choose to 'lie flat'?(CNA 4月22日 英語)


番組に登場する日本の若者は、度重なる地震やパンデミックの経験を通じて「長期的な予想ができない」ことを学んだから、「いま自分にふさわしいことをやる」という人生観をもっている、と言っている。


同じような傾向が、「売り手市場」や「ライフ・ワークバランス」など、複数の概念で説明されている。


資本主義の変化



しかし、「すぐ会社を辞める」傾向は、「すぐ結婚を辞める」という離婚率の上昇や、「すぐ恋愛を辞める」という非婚化傾向とも、共通しているのかもしれない。


そして、それらには共通して、同一の、もっと深い理由があるのかもしれない。


慶応大学の小幡績教授(経済学、行動ファイナンス)が、東洋経済の「なぜ人々は21世紀に一段と結婚しなくなったのか」で、それは「資本主義の必然の結果」だと書いていた。


現在、もはや将来予測はできない。その理由は、前述の流動化・変化が20世紀初頭までは生産者側の競争によるものだったのが、それ以後、消費者側の変化、消費者の気まぐれにより経済社会が変化するようになったからである。(中略)

離婚率の上昇も、これとまったく同じ構造である。現代社会は、経済の影響を受けて、変化が速くなった。一生のことは約束もできないし、変化は当然だ。結婚も衣替えが必要だ。そして、それはお互いわかっている。だから、21世紀の離婚は、泥沼もあれば、「離婚後も良い友達」もあるのである。

つまり、結婚という投資を短期に回収するようになり、一定期間の幸せを得て、投資の回収が終われば、次の投資に移っていくのは合理的な選択肢となりうるのである。だから、離婚率の21世紀におけるさらなる上昇も、資本主義発展の必然の帰結なのである。

(東洋経済オンライン 4月20日)


企業において、20世紀には「長期にコミットすること」が競争優位をもたらしたが、現在は、2年で投資を回収するような短期コミットでないと、消費者に追いつけなくなっている、という。

こういう話も、むかし聞いた気がするが、それはともかく。

企業も社員も、そういう「短期コミット」が合理的で利益になるのなら、双方それで問題ないことになるだろう。

企業だって、あまり同じ社員にずっと居座られては困る。消費の変化に合わせて、どんどん社員が入れ替わってくれたほうがいい。


「短期コミット」社会のゆくえ



しかし、「結婚」や「家族」も、あるいは「国家への帰属」も、それと同じになるのは、正しいことなのだろうか。

「日常」が、スマホのアプリやストリーミングサービスのように、いくらでも目移りしてもいいような、なんであれ「長くコミットするのは愚かしい」というような文化におおわれていいものか。

子供を育てる、なんて「長期コミット」は、だれもやらなくなる。それでいいのか。

ーーという「保守的」な意見も出てきそうだ。


いまのところ、この件に関して、わたしにとくに意見はない。

もう引退したわたしには関係ないしね。

みんな勝手にやれや、と思う。






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