2016年9月の記事一覧
数日後 「花を絶やさずに」
余命宣告を受けたあと、病状の進行に従い、近しい人から順に母の命がわずかなことを知らせていた。お見舞いをとの申し出もいただいたが、母は会いたくないと言った。
母が長年手紙をやりとりしていた高校時代の友人にも連絡をとるべきではないかと考えた。だがそうすれば、母に残された時間が短いことを突きつけてしまうようで、踏み出せなかった。
結局、母が亡くなってから、手紙で知らせた。すぐにお電話をくださっ
その日々 「あぁ、帰って来た」
実家の家族が母なしで生きていけるように生活を立て直すこと。母の療養のために様々な手配をすること。タスクを背負い、家族を想い、過去を悔い、ひりひりと心が痛む日々だった。
実家での1日を終え、母におやすみと告げると、首都高速横羽線を羽田に向かう。今日できたこと、できなかったこと、明日すること。運転しながら整理する。大きなトラックの後ろを同じスピードで走り続けていると、ふと思考がとまる。「このまま
その日々 「今日はどうだった」
嵐のような毎日だった。例えて言うなら、複雑に絡み合い締め付け合った糸の塊を解きほぐすようだった。時間が迫ってもハサミで切り刻むことは許されなかった。緊張のなか、頼り甲斐のある笑顔の娘でなければならなかった。
忙しさのあまり、受験を控えた二人の子供達に手も目もかけられないことが心苦しかった。
そんな苦しい毎日を支えてくれたのは夫だった。家事や子供の世話をしてくれたのはもちろんのこと、何より
あれから半年 「お墓参りに行ける?」
うららかな春の陽射しのなかで、長女が中学校を卒業した。息子の卒業式も間もなくである。
「もう半年なんだね。早いね。」と息子がポツリと言う。小学校6年生の息子には、死にゆく母と向き合うことは難しかったと思う。怖くてどうしていいかわからなかったのではないだろうか。それでも心のどこかで母を想っている。
春休みをのんびりと過ごす娘に「明日、おじいちゃんの家に行くけれど、一緒に行く?いろいろあって忙