2015.9.8 「教えていただきました」

 母が息を引き取ったあと、訪問医に連絡をした。30分も経たずに、駆けつけてくださった。ふと時計を見ると、日付が代わっていた。

 丁寧に死亡確認をし、診断書を書いてくださった。母と共に暮らしていた叔母の往診から始まったご縁。叔母のため、家族のために頑張る母の姿を知っていて下さる先生だった。

 ぽつぽつと言葉を選びながら、母のことを話してくださり、父を励ましてくださった。最後に「骨折した、食欲がないという訴えから胃がん転移を疑うケースがあるのだと、教えていただきました。」とおっしゃった。骨折の診察も、食欲不振の診察も、別の医院で行ったのだ。先生に検査データが届いているわけではない。叔母の往診に来た時に、横に座る母の様子を垣間見、世間話をしただけなのだ。それなのに、自分にできることがあったのではと振り返ってくださる。頭が下がる思いとはこのことだった。(あぁ、この先生に出会えて、自宅で看取っていただいて、本当によかったな)と思った。