2015.9.4 「動きたい」

 入浴の日。思うように体が動かなくなった母は、珍しく、「お湯につかっている間は、浮力があるから楽だわ」と嬉しそうにしてした。

 入浴後、仙骨付近に貼ってあるフィルムを交換する。床ずれの初期段階である発赤と擦り傷を悪化させないよう、看護師が貼ったものだ。

 床ずれは、一般的には「体を動かさずにいて、同じところに体重がかかり続けるからできる」と考えられている。けれど、母の様子を日々観察していると、全く逆だと感じた。

 何かのために体を動かしたいが、思うように動かない。それでもなんとか動こうとする。頑張る力が、ある一点に集中する。だから床ずれになる。床ずれは、「動きたいけど動けない」本人からのSOSなのだと思う。

 柔らかいマットレスを体にフィットさせて、集中する体重を分散させるという方法がある。しかし、母の場合、スライディングシートを敷いて摩擦を減らし、小さい力で動けるようにする方が良かった。母は「動きたい」のだから。