その日々 「あぁ、帰って来た」

 実家の家族が母なしで生きていけるように生活を立て直すこと。母の療養のために様々な手配をすること。タスクを背負い、家族を想い、過去を悔い、ひりひりと心が痛む日々だった。

 実家での1日を終え、母におやすみと告げると、首都高速横羽線を羽田に向かう。今日できたこと、できなかったこと、明日すること。運転しながら整理する。大きなトラックの後ろを同じスピードで走り続けていると、ふと思考がとまる。「このまま吸い込まれてしまえば楽になるのだろうな。」と思い、思った自分に驚く。

 途中、昭和島ジャンクションから湾岸線に向かう。視界が大きく広がり、遠くにスカイツリーと東京タワーがキラキラと輝いて見える。「あぁ、東京に帰ってきた」と思う。子供たちの顔が浮かんでくる。勉強は進んでいるかな。学校見学はどうだったかな。今日もお夕飯に間に合わなかったな。夕飯を作って待ってくれている夫を思う。さっきの思いを振り切るように息を吐く。私がいつもの私に戻る瞬間だった。