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ひとり旅行記

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世界約30ヶ国。ひとり旅の記録です。
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記事一覧

【第1話】なにもない国。(ブルネイダルサラーム・バンダルスリブガワン)

【第1話】なにもない国。(ブルネイダルサラーム・バンダルスリブガワン)

「ブルネイ つまらない」 「ブルネイ 何もない」

Google検索で「ブルネイ」と入力すると、出てくるのが上のような字面だ。

「…行くしかない。」

直感的にそう感じた僕は、気がつくと航空券の決済を終えていた。

Skyscannerを眺めていて、たまたま見つけたブルネイという国。

往復で45,000円という値段に誘われ、調べてみると、日本から約6時間。成田空港からロイヤルブルネイ航空が直行

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【最終話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

【最終話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

山の天気は変わりやすい。午後は、空気中の水蒸気が雲になってしまうため、天気が崩れることが多い。そんな、うわっつらの知識しかないまま、僕は標高1700mを越えている、カズベキという小さな村にいた。

途中で、予想外の土砂崩れによる足止めを食らったものの、なんとか着いた村。時刻は16時過ぎ。空を見上げると、雲間には青い空が顔を出していた。雲も色は薄く、雨の心配はなさそうだ。

「これは。」と思い、近く

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【第4話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

2時間以上、駅で足止めされたものの、やっと出発してくれたカズベキ村行きの車。

相乗りタクシー、時間通りに発車しない車、飛び交う異なる言語。それら全てが「旅」を演出してくれていて、自分が間違いなく非日常にいることを実感させてくれる。日本じゃ絶対あり得ない体験。それに取り憑かれたように、ヨーロッパとアジアの境目であるジョージアに、いま僕は訪れている。

カズベギ村までは軍用道路をひたすら北に車で約3

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【第3話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

【第3話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

ジョージア弾丸旅の2日目。

お目当てのツミンダサメバ教会に向かうべく、まずは地下鉄の駅を目指す。ジョージアの地下鉄はとても深いところに建設されていて、下が見えないくらいの長さのエスカレーターをひたすら下っていく。

ちなみに、日本のエスカレーターの2倍はあるんじゃないかってくらいに、速い。乗った瞬間に体がぐわっと持っていかれてしまいそうな、そんな感覚になるくらいだ。

海外の、こういう、ちょっと

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【第2話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

【第2話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

ジョージアに到着して、数時間。

普段見慣れないグルジア語に囲まれながら、街を歩く。

トビリシの街は、極端だった。バスが通る大通りを抜けて一本路地に入ると、レンガや石造の家屋が並んでいる。目に見えるところは整っていて、少し外れると一気に生活感が増す。街灯もほとんどなく、夜になると真っ暗になる、そんな通りが多かった。

「チナ?チナ?コリア?」

路地を歩いていると、小さな子どもが自分を指差して叫

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【第1話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

【第1話】天国に一番近い教会を目指して(ジョージア)

社会人になって初めて、4連休が取れた。今までの最高は3連休。

3連休のときは、タイのバンコクとアユタヤに行って、現地では1泊。文字通りの弾丸旅行だった。

さて、4連休だとどこまで行けるのだろうか。全く想像がつかない。

早速、GoogleMapを開いて旅先を探し始める。先に申し上げておくと、自分の旅はだいたいGoogleMapを眺めるところから始まる。

「トルコって行けるのかな」

そう思っ

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【最終話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

【最終話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「これがオーロラ?」

空に浮かぶ、グレーの靄のようなものがオーロラということに気がついたときは、なんとも言えない気持ちになった。ずっと憧れていた人が、実は自分の思ったような人ではなくて、みたいな。

けれど、太陽活動が活発な時に起こる『オーロラ爆発』であれば、期待しているようなモノが見られると知り、そのチャンスを窺っていたが、ついにその日が来た。

個人ツアーに申し込み、やり取りをする。夜の天気

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【第3話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

イエローナイフに着いてから一晩が明けた。目覚めた場所は、ホームレスの方々向けのシェルターだった。オーロラを求めて降り立ったこの街は、予想外の形で自分を迎えてくれた。

無事にAirbnbで予約した宿に着き、宿主のマルセラさんに出迎えてもらった。昨日の夜の出来事を話すと、「本当に大変だったね…」と慰めてくれた。それと同時に、ホームレスのシェルターで寝た旅人は初めてじゃないかな、と笑っていた。

マル

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【第1話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「死ぬまでに一度は見たい景色」

主に北極圏で見られるこの自然現象、オーロラは多くの人々を虜にして離さない。かくいう自分もその中のひとりだった。

小さい頃から天体観測が好きだった。両親に買ってもらった天体図鑑のページを捲っては、空のどこかにあるキラキラした景色に胸を躍らせていた。

いわゆる都市郊外のベッドタウンで育った僕は、「満点の星空」とは縁がなく、小学3年生のときに買ってもらった天体望遠鏡

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【第2話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「ホームレス用のシェルターがあるから、そこへ連れてくよ」

想像すらしていなかったその提案に驚きはしたものの、「No」と言えるはずもなく、極寒の地に放り出されるよりはマシだと、その提案を受け入れた。

車内には、深夜1時に似つかないブラックミュージックが流れていた。その音楽にゆらゆらと揺れる運転手は、ミラー越しに僕のことをチラッと見て尋ねてきた。

「どこから来たんだい?中国人かい?」

「違うよ

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