【第1話】なにもない国。(ブルネイダルサラーム・バンダルスリブガワン)
「ブルネイ つまらない」 「ブルネイ 何もない」
Google検索で「ブルネイ」と入力すると、出てくるのが上のような字面だ。
「…行くしかない。」
直感的にそう感じた僕は、気がつくと航空券の決済を終えていた。
Skyscannerを眺めていて、たまたま見つけたブルネイという国。
往復で45,000円という値段に誘われ、調べてみると、日本から約6時間。成田空港からロイヤルブルネイ航空が直行便を運行している。(2019年かららしい)
基本的に旅行先を決めるときは”直感”なのだが、そのきっかけは大体が「周りが誰も行ったことない」であったり、「撮りたい景色がある」だったりする。
今回の国ブルネイも、もちろん周りには訪れたことがある人はおらず、「今度ブルネイ行くんだよね」と言っても「どこ、それ」と返されてしまう、そんな国だった。
それに加えて、天下のGoogle様が「つまらない」「なにもない」と予測変換に出してくるほどだ。日本人も年間に5000人しか訪れないらしい。
「めちゃくちゃ面白そう」そう思わざるを得なかった。
本当に何もないのか?どんな国なのか?つまらないのか?
僕の心の奥底に眠っていた好奇心ってやつが、ウズウズしているのが手に取るようにわかる。「早く行くぞ」と、急かしている。
そして2020年の2月末。僕は成田空港にいた。
いま考えると、この時すでにコロナウイルスのニュースが増えてきていて、1週間後には空港の検疫も強化される、そんな瀬戸際での出国だった。危ない。
ロイヤルブルネイ航空の機体。シンプル。
ブルネイはイスラーム国家なので、機内アナウンスでもコーランが流れたり、座席の画面表示も「メッカ」の方角が示されていたり。日本の航空会社にはない仕様となっている。
6時間のフライトのあと、ブルネイの首都、バンダルスリブガワンに到着した。空港内は整っていて、石油の影響なのか裕福な国であることふが見て取れる。(空港によっては整備が整っておらず、治安があまり良くないところもある。)
毎度のことながら、空港から市内へは公共バスを使って向かう。
タクシーだと2000円近く掛かるが、上のような”バス”だと80円でいけるのだ。
だいたい、どのガイドブックを見ても、おすすめされているのが「ホテルの送迎バス」や「タクシー」なので、こういった公共バスの情報は残念ながら乏しい。
椅子もところどころ破れ、空調も効いていない乗合バスで僕は市内に向かった。
バスの外観はこんな感じで、前方に記載されている数字がルート番号。
「BAS」って書いてあるのがなんだか面白い。
宿泊するホテル近くの道。
人通りはほとんどなくて、閑散としている。首都の中心地とは思えない。
この時点で「あ、本当に何もないのかもしれない」という気がしてきた。
ホテルに着いたのは夕方18時ごろだったので、街の夜景を撮るために身支度を整えてホテルを出る。
街に出てみても、観光客なんて歩いていないし、カメラをぶら下げている人なんて一人もいない。かといって”物騒な感じ”がするかというとそういうわけでもなく、「なにもない」感がビンビンと伝わってくる。
イスラーム国家でもあることから、お酒やタバコの販売もなく、飲食店も閑古鳥が泣いている。みんないったいどこにいるんだろう?と思ってしまうくらい。
そこら中に大きな公園やスタジアムがあったり、けど人はいない、みたいな不思議な光景。ただ温暖な気候のせいもあってか、旧ソ連国のような物寂しさはなく。
しばらく歩いていると、街のランドマークでもあるMasjid Omar Ali Saifuddienというモスクが見える通りに着いた。
もうこのモスクを眺めるために作られたような通り。
昼になるとこんな感じ。こういう、1つの宗教施設を中心に街が形成されているのって面白い。
モスクの近くには、恐らく「観光タクシー」的な乗り物の乗り場。
周りの暗色系のライトに似合わない、ギラギラした配色の乗り物にギャップを感じる。もちろん、乗ろうとする人はいなくて、運転手さんは暇そうにしている。そもそも観光客がいないのだけれど。
スーパーもやっていないので、大通りにあったカフェに入ることに。
本当に、人がいない。心配になるくらい。これで採算は合うんだろうか。
「LOCAL FOREVER」なドリンクを注文。甘いカフェラテ。
公用語はマレー語であるものの、普通に英語は通じるので注文に困ることはなかった。ちなみに、華系の人たちの間では中国語が話されているそうだ。
カフェからほど近くにある中心部にあるモールも、ほぼ人がいなかった。
「こりゃ、本当になにもないな」と、確信した。
日本人が年間5000人しか訪れない国、ブルネイ。
Googleでは「つまらない」と出てくる国、ブルネイ。
そんな国に来てしまった、社会人2年目のバックパッカー。
「よし、この際、なにもないを、しよう」
そう決めて、じとっとした汗をかきながら、ホテルに戻る。
2月に見合わない、ジメジメとした夜だった。
【第2話へ続く】
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