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小説「夢で会いましょう。」(完全版)
夢で会いましょう。
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お雑煮の匂いが、部屋中に立ちこめた。昔ながらの匂い。食欲をそそる匂い。優しい母の匂い。幼くして母を亡くした俺にはよく分からなかったが、母の存在をいくぶん洋子に重ねていた。お雑煮なんか母は作ってくれる人物だったかどうかは分からない。だがいつも、愛情を込めて洋子は俺に作ってくれた。
「できるよ。そろそろ」いつもの彼女の声が消え
短編小説「Donuts Boy?」part1
私はラクーン警察署に勤める何の変哲もない警察官レヴィット・ルーシーだ。その晩は、警察署のトイレで奇妙な男の子に出会うことになる。
何の前触れも無く、私の目の前に現れた少年。 奇妙な少年。
1
闇は私を包容する。最近ラクーンは忙しい。慌ただしい。警察の仕事はまるで迷宮だ。やってもやっても罪人たちが目の前に現れる。だがそれもいい。罪人には罪を名付ければいい。それだけのことだ。情けは人の為
連載小説『ロックバンド・バラード』①
ロックバンドのツアーに参加した。
私が髪の長いその男に恋をしたのは、2ヶ月ほど前だった。マイクを手に、自分を表現する様は、私にとって天使だった。男だが、白いドレスが似合うほど、キュートな天使が私の目には映っていたのだ。
人は生まれた時から、透明人間だ。そんな役割を負っている。
『CUBE BEAR』と名付けられた彼のバンドは、混沌とした時代にねじ込まれたテディベア(良い言い方をすれば)なのだろう。
短編小説「ジェニーは幽霊」②(全⑤話予定
バーボンの匂いが鼻につく。甘い蜂蜜の匂いは、この娯楽室には残っていない。なんという事だ!ミアとは、先月別れたばかりだが、あの日記帳だけは、見ておきたいのだ。ミア。
喋れもしない化け物が、何百箇所も蜂に刺され、なお生きてるジェニーは俺の向かいにいる。お口チャックな神様はどれだけ俺を、困らせる?もううんざりだ!!
「早く鍵を渡せ」俺は怒っていた。
「ミアと関係を持ってるのは、いいとしてまだお前からあの