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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年3月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#137

第七章 東京、笑って!きららホワイト劇薬3

悟は聡介から聞いた住所をメモに記して電話を切るとすぐに、自らが経営する不動産会社「KS不動産」に勤める秘書、福嶋くんの携帯に連絡を入れた。

「ああ僕だ、仕事中悪いんだけどね。今から言う住所とカナメという会社について調べて欲しいんだ」

かたかた、とパソコンのキーボードを打つ音が受話器から聞こえる。

「あー、うちが所有する第3葦ビルに本社がありますね

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電波戦隊スイハンジャー#138

第七章 東京、笑って!きららホワイト劇薬4

部屋の中央に油絵のパレットのような流線形テーブルと革のチェアーがせり上がる。

当然のようにウカは、モニター前の「議長」の席に座った。

戦隊と忍びたちが着席し終えると、彼女は起立して厳かに宣言した。

「今回の作戦の目的は、香港マフィア『花龍』日本支部の壊滅です。

遂行したらここを足掛かりに結社『プラトンの嘆き』に挑みます。

隠の皆さんは健康食品

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電波戦隊スイハンジャー#139

第七章 東京、笑って!きららホワイト

two cube too hate1

都内某所にある製氷工場は24時間稼働の8時間3交替シフトである。

この工場では、濾過された水道水を満たしたアイス缶に空気を注入し48時間かけてゆっくりと凍らせていく。

2013年9月26日、

夜10時前にシフト入りした夜勤パート職員、麻生照代46才は製氷室の隣の倉庫でうず高く積まれた幅1メートル、横50センチ、厚

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電波戦隊スイハンジャー#140

第七章 東京、笑って!きららホワイトtwo cube too hate2

ボスの李は5つの杯に年代物の老酒を注いで部下である4人の幹部の男と、私に持たせて

「再見(ザイジェン・さらばだ)!」

と宣言して一気に杯の中身を飲み干した。

ばかめ。

私にとっては再見了(ザイジェンレ)、もう会うことは無い。だ。

男たちは間もなく苦しみだし、喉を抑えたり床を引っ掻いたりしながら次々に倒れていった。

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電波戦隊スイハンジャー#141

電波戦隊スイハンジャー#141

第七章 東京、笑って!きららホワイト

two cube too hate3

「ばかもの!」

と宙に浮かんだままうなだれる戦隊たちを叱咤したのはシルバーではなく、

シルバーの中にいるスサノオだった。

「このヒュードラーなる化物を倒す手立ては、すでにホワイトが教えてくれておるではないか!
お主ら一体、『どこ』で戦っておるのか?考えろ!」

え、あたし?ホワイトがシルバーに振り向いた時、彼女の

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電波戦隊スイハンジャー#142

電波戦隊スイハンジャー#142

第七章 東京、笑って!きららホワイト

静かの海1

戦隊たちがテレポートで飛ばされた場所は雲に抱かれた富士山を背景にした湖畔だった。

7人の若者は変身を解かれて普段着になっている。

小角だけが忍び装束のままで、右肩に先程の子烏(こがらす)を乗せている。

「ちょうど真ん中に富士が見える…ここは精進湖だ」とさすが地元っ子の悟が現在地を言い当てた。

湖を後ろにパワースーツを着たままのツクヨミと

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電波戦隊スイハンジャー#143

電波戦隊スイハンジャー#143

第七章 東京、笑って!きららホワイト静かの海2

あの「TOKIO,japan」と日本中が湧いた朝から3週間が経つのか。

と思いながら魚沼隆文は9月30日の夜7時、神田神保町にある「鮨や さぶらふ」の暖簾をくぐって

へい、らっしゃい!と声を張り上げる店主に「あのー、インドラさんの招待で来たんですけど…」と言うと

店主の奥さんらしき和服の女性が出てきて「ご予約のお客さんですね?座敷席の方へどう

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電波戦隊スイハンジャー#144 メメント・モリ

電波戦隊スイハンジャー#144 メメント・モリ

中つ章 メメント・モリあれはもう、3000年以上前のことでございます。

旗艦、天鳥舟の窓一面に浮かんだ小さな青い惑星を見つけた時、船内中歓声に包まれました。

あれが、太陽系第三惑星の地球…我々高天原族が唯一生存できる星か!と。

ユミヒコ王子ばんざい!オトヒコ王子ばんざい!の合唱が誰からともなく沸き上がり、

玉座の周りにいた女官たちも元老たちも、その場で泣き伏したり惑星をじっと見つめたりと…

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電波戦隊スイハンジャー#145 統率者「M」

電波戦隊スイハンジャー#145 統率者「M」

第八章 Overjoyed、榎本葉子の旋律統率者「M」

諸君、静粛に。

今からクラウス・フォン・ミュラーがベートーベンの第七番を振るのだよ。

この宝石のような40分間を一緒に愉しもうではないか。

はい「マスター」。

白タイを付けた燕尾服のミュラーがゆったり両腕を上下、そして左右に振ると

ぱあん!と最初の一音で完璧なオーケストラの調和で聴衆を圧倒させ心を鷲掴みにする。

見事だよ、クラウ

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電波戦隊スイハンジャー#146

電波戦隊スイハンジャー#146

第八章、Overjoyed、榎本葉子の旋律神在月、神々の宴1

2013年10月2日、
出雲大社拝殿前は「平成の大遷宮」の最中ということもあってかあまたの観光客が大注連縄の下でひしめき合っている。

若いカップル、新婚旧婚の夫婦や家族連れ、婚活に必死な独身者などが二礼四拍手一礼で

よいご縁に恵まれますように。

と祈願している様子を、一組の父娘が見ていた。

「やれやれ、結婚率の減少、離婚率の増

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電波戦隊スイハンジャー#147

電波戦隊スイハンジャー#147

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律神在月、神々の宴2

出雲大社拝殿入り口でクニヌシの検閲に引っかかった者は、宴会場に入る前に「些少の穢れ」を落とすために禊の湯に入る。

総檜で造られた大浴場には玉造温泉の白濁した湯が並々と注がれている。

「このようないいお湯、白衣つけたまま入るなんてもったいないわ」

とウズメははらっと身に着けていた白衣を床に落とし、豊満な裸体をさらしてんっんー、と伸

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電波戦隊スイハンジャー#148

電波戦隊スイハンジャー#148

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律神在月、神々の宴3

「それよりも元老長、100年に一度のおばあ様の転生が遅れているのは由由しき事態だと思わないか?」

と言ってニニギは、コヤネの隣の席に腰を下ろした。

「まさに私は、その問題提起に来たのです」

とコヤネはこの高天原族の若き王に微笑み返した。

タキシード姿の祥次郎がバイオリンを弾いて微笑んでいる遺影の横では、白いタマスダレの花が切子

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電波戦隊スイハンジャー#149

電波戦隊スイハンジャー#149

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律観音1

千手観音は白い産毛の生えた両の手のひらで空海の顔を包む。赤い複眼がじっと空海の眼を捉えた。

「私が恐いですか?真魚」

空海の心は湖面のように穏やかだった。

「いいえ、観世音菩薩さまと相対してなぜ心が揺らぎましょうや」と素直な言葉が出る。

そうでしょう、そうでしょうとも。と言って千手観音は空海の顔から手を離すと眉根を寄せて険しい顔つきになっ

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電波戦隊スイハンジャー#150

電波戦隊スイハンジャー#150

第8章 Overjoyed、榎本葉子の旋律観音2

「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし…」

と私が朗読している方丈記を、生徒たちは清聴しております。

校舎二階の音楽室からは他クラスの女生徒が歌う「大地讃頌」が聞こえて参ります。

授業中ながら秋の晴れた日にこの合唱を聞くと…

嗚呼、幼稚舎から女子大まで全参加の

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