24.ぜんぜんスローじゃなかったスローフード活動
経済的にも時間的にも落ち着いたおだやかな時間が続くと思われましたが、またしても面白そうだという興味に抗えず新たな道を選んでしまいました。
留学から戻ってすぐ声をかけられていたイタリア関連のプロジェクトが、ついに本格始動することになったのです。
条件は来夏の長期休暇
スローフードをテーマにした広告展開を担当していた縁でイタリア留学までしたわけですが、今度もまたスローフードつながりで働くことになりました。
NPO法人スローフードジャパンの東京事務所です。
NPO法人なので会社員とも違う不思議な立場です。
サラリーマン時代とやることはほぼ変わりませんが、とにかく人が少ないので会議も社内ネゴシエーションも不要。
スローフードに特化した仕事だけに専念できるのでやりがいがありました。
ただし、月給は安いしボーナスもありません。
そのため働く条件として、年に1度のイタリア滞在しかも長期滞在を申し入れました。
まずは1年後の夏、ビザなし3ヵ月のイタリア滞在です。
ずいぶん強気なオファーだなと自分でも思いましたが、ダメなら派遣がありますから。
そして、長期休暇の許可が出たので正式に働くことになりました。
派遣会社との契約がまだ残っていたため、しばらくの間は派遣の仕事が終わった後と週末だけオフィスへ顔を出し、契約満了後はフルタイム勤務に。
たしか10時から19時が定時だったと記憶しています……定時に帰れるわけがないのは分かっていましたけれど。
まずは会報誌の創刊から
日本にはイタリアのようなスローフード協会本部がなかったので、「支部」を作るにはイタリアの国際本部に直接連絡をして認可を得てスローフードの支部として認められる、という手順を踏むことになっていました。
コミュニケーション手段は英語です。
それを日本語で済ませることができれば、もっと支部も増え活動の輪も広がるでしょう。
日本での協会本部設立に向けて強力な一手となったのは、スローフード理念に共感してくれた東北福祉大学でした。
2004年ごろ、学内の一角をオフィスとして提供、職員まで用意してくれるという万全のフォロー体制が整い本部として正式にスタートします。
スローフード活動を下支えするのはコミュニケーション活動です。
イタリアでもともとスローフードを始めた人たちはジャーナリスト集団。
得意の出版分野で啓もう活動を行い、それが功を奏し大きな成功を収めたとも言えます。
会員にはもちろんそうした会報が送られてきますがイタリア語、または英語版。
日本で日本語のスローフード会報誌を出版するのはある意味、活動の輪を広げるのに欠かせない重要なツール、悲願でもありました。
そこで東京事務所が設立され、出版やイベントといった広報活動を行うことになったわけです。
ぜんぜんスローじゃない
当時のブログを見ていたら10月半ばに「雑誌の編集を52ページ分、ほぼ一人でやって、やっと来週納品の見通しが確実についてほっと一息」なんて書いています。
しかもこの時はまだ派遣の仕事も続けているので、夜と土日で作業していたということをいま思い出しました。
ぜんぜんスローじゃない仕事スタイルです。
好きでやっているので仕方ないというか、夏の長期休暇が控えているので文句も言わずせっせと仕事に励んでいたのだと思います。
会報誌と並行して、スローフードイベントの開催も視野に入っていました。
イタリアでは「サローネ・デル・グスト」と呼ばれる世界中のスローな食材を体験できるイベントを隔年で、「テッラ・マードレ」と呼ばれる世界中の生産者を集めての会議を隔年で行っていました。
日本でも同じようなイベントを日本の食材、生産者を集めて開催しようということです。
2009年秋の実施を目指していました。
この時点で開催まで2年ありますが、なんせ大規模イベントなので時間がぜんぜん足りません。
イベント開催の資金集めからしないといけないので、企画を練るのですが開催場所のめどすら立っていない状況です。
ただ、メディアや行政規模の手ごろさに加え、当時の日本ではコミュニケーション活動においてスローフード協会の横浜支部が大きくリードしていたので、東京ではなく横浜で開催することだけはこのころ決定されたような記憶があります。
スポンサー集めと行政へのネゴシエーションと場所の確保と何をやるのかということをすべて並行して進めるのです。
あやふやな状態のまま突き進むので、変更が出て当たり前の世界。
こういうのって、日本人の仕事スタイルにもっとも合致しません。
誰に何をどこまで話して、そこから何が変わったのかを伝えて意向をうかがい、さらに関係各社に決定事項を伝え、そこからまた変更が出て……これが延々と繰り返されます。
スローという言葉とは似ても似つかないハイスピードで仕事をこなしていく日々でした。
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