いさお

マンガ(たまにアニメ)の感想やらレビューやらを書いてます。ぜひよしなに!

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マガジン

  • あのマンガ、世界史でいうとどのへん?

    様々な歴史ものマンガの魅力を、「世界史上の時代背景」という観点から紹介する記事シリーズ。筆者も高校世界史レベルの知識で書いていますのでノリはゆるいです。

  • マンガレビューなどなど集

    今まで書いたマンガのレビューなどなど。

  • アニメレビューなどなど集

    今まで書いたアニメのレビューなどなど。

  • 『進撃の巨人』論 ―本作が継いだもの、生んだもの、残すもの―

    『進撃の巨人』。コンテンツ史の特異点とも言える本作のテーマ性について、ゼロ年代の物語から継いだもの、10年代の物語にもたらしたもの、そして20年代の物語へ残していくものを検討する記事シリーズ。

記事一覧

【現代⑤】『東独にいた』~冷戦末期、斜陽の国家と行き止まりの恋~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『東独にいた』1巻表紙より  ヨーロッパ戦線におけるナチス=ドイツの降伏…

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2日前
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【現代④】『月と金のシャングリラ』~「中華」の復権とその影~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『月と金のシャングリラ』1巻表紙より  『満州アヘンスクワッド』のペー…

いさお
2週間前
6

【現代③】『戦争は女の顔をしていない』~「世界史」が掬ってこなかったもの~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『戦争は女の顔をしていない』1巻表紙より  世界が「英・仏・露」側と「…

いさお
4週間前
5

【現代②】『満州アヘンスクワッド』~「眠れる獅子」中国の受難~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『満州アヘンスクワッド』1巻表紙より  2つ前の記事『白い艦隊』で見て…

いさお
1か月前
5

【5/26(日)】コミティア148で本を出します!

コミティア148で本を出します!  内容は私が昨年からnoteにて定期連載をしております記事シリーズ『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』を一冊の本にまとめたもので…

いさお
2か月前
4

【番外編④】『軍靴のバルツァー』~反復する「戦争」の世界史~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『軍靴のバルツァー』1巻表紙より  本記事シリーズ4回目の番外編です。 …

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2か月前
6

医療保険とアドバイザー/プレイヤー

 先日、数年ぶりにとある知人と再会した。  子どももいないアラサー同士だと、久々の近況報告も残念ながら仕事のことが多くなってしまうもので、その知人との会話もそう…

いさお
2か月前
2

【現代①】『白い艦隊』~黒船の来航、そして「白船」の来航~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『白い艦隊』表紙より  様々な歴史ものマンガを世界史上の背景とともに見…

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2か月前
4

【近代・後⑤】『ふしぎの国のバード』~日本が「世界史」の舞台へ上がるとき~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『ふしぎの国のバード』1巻表紙より  前後編に渡った近世の章も今回で最…

いさお
3か月前
2

【近代・後④】『守娘』~中国最後の帝国の繁栄と、そこにあった社会不安~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『守娘』1巻表紙より  近代の章も、前後半番外編を合わせますとこれで12…

いさお
3か月前
6

『よふかしのうた』完結によせて ~異なる世界を見つめるそのまなざし~

※ サムネは『よふかしのうた』20巻(完)表紙より。 0. はじめに 『よふかしのうた』を全て読み終わりました。非常に見どころの多い、素晴らしい作品だったと思います…

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4か月前
14

【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『ハイパーインフレーション』1巻表紙より 1.市民革命、国家統一運動、…

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4か月前
5

【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『河畔の街のセリーヌ』1巻表紙より 1.フランス革命のその後1―1.漂…

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4か月前
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【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『エマ』1巻表紙より  英仏における市民革命と、前記事の『片喰と黄金』…

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5か月前
14

【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『片喰と黄金』1巻表紙より 1.近代前半・後半の境界線 本書はここから…

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5か月前
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【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。 ※ サムネは『第3のギデオン』1巻表紙より 1.権力の転々 「織田がつき 羽柴がこ…

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6か月前
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【現代⑤】『東独にいた』~冷戦末期、斜陽の国家と行き止まりの恋~

【現代⑤】『東独にいた』~冷戦末期、斜陽の国家と行き止まりの恋~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『東独にいた』1巻表紙より

 ヨーロッパ戦線におけるナチス=ドイツの降伏、そして極東戦線における日本の降伏をもって、第二次世界大戦は終結を迎えます。
 一定の交流こそあれ、かつては互いに独立して歴史の歩みを進めてきた各地域は、特に帝国主義の隆盛以降、欧米列強による植民地化によって欧米を中心とする世界へと溶け

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【現代④】『月と金のシャングリラ』~「中華」の復権とその影~

【現代④】『月と金のシャングリラ』~「中華」の復権とその影~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『月と金のシャングリラ』1巻表紙より

 『満州アヘンスクワッド』のページで見たとおり、19世紀前半のアヘンの導入以降、帝国主義の被害者として蹂躙されてきた中国。第一次世界大戦以降はその侵略国は日本に絞られ、1932年には日中戦争が勃発します。

 この頃一応中華民国の統治下にあった中国ですが、日本軍の侵略を

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【現代③】『戦争は女の顔をしていない』~「世界史」が掬ってこなかったもの~

【現代③】『戦争は女の顔をしていない』~「世界史」が掬ってこなかったもの~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『戦争は女の顔をしていない』1巻表紙より

 世界が「英・仏・露」側と「ドイツ・オーストリア」側に分かれて争った第一次世界大戦は、数千万人の犠牲の果てに、1918年に前者の勝利で終結します。この大戦の影響は凄まじく、これまで私たちが見てきた世界の在り様は、大戦前後で大きく変わることとなりました。

 まず一つ

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【現代②】『満州アヘンスクワッド』~「眠れる獅子」中国の受難~

【現代②】『満州アヘンスクワッド』~「眠れる獅子」中国の受難~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『満州アヘンスクワッド』1巻表紙より

 2つ前の記事『白い艦隊』で見ていた20世紀初頭の時代に視点を戻しましょう。
 これまで各地域で別々に発生していた戦争は、ヨーロッパにおいて主権国家の形成やナショナリズムを通してその規模を拡大。そしてついには、文字どおり世界を巻き込んだ「世界大戦」が勃発するに至るのです

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【5/26(日)】コミティア148で本を出します!

【5/26(日)】コミティア148で本を出します!

コミティア148で本を出します!

 内容は私が昨年からnoteにて定期連載をしております記事シリーズ『あのマンガ、世界史でいうとどのへん?』を一冊の本にまとめたものです。 今でも新しい作品が創られ続けている「歴史ものマンガ」というジャンル。この中でも、主に日本以外の地域を舞台とした作品を時代順にとりあげ、その世界史上の背景と作品の関係性を明らかにしていくシリーズです。

 歴史ものマンガはむろん

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【番外編④】『軍靴のバルツァー』~反復する「戦争」の世界史~

【番外編④】『軍靴のバルツァー』~反復する「戦争」の世界史~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『軍靴のバルツァー』1巻表紙より

 本記事シリーズ4回目の番外編です。

 これまでの番外編は、とりあげたい時代・地域について該当する歴史マンガが少ない場合に、類似のフィクション作品を紹介するものでしたが、今回は少し趣旨が違います。というのも、今回は特定の時代・地域の話をするのではなくて、ここまで追ってきた

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医療保険とアドバイザー/プレイヤー

医療保険とアドバイザー/プレイヤー

 先日、数年ぶりにとある知人と再会した。

 子どももいないアラサー同士だと、久々の近況報告も残念ながら仕事のことが多くなってしまうもので、その知人との会話もそういう話題になったのだが、聞くところによると彼は最近転職をしたらしい。転職先はファイナンシャルプランナー。個人のライフプランに基づいて、今どれくらいお金を貯め、あるいはどういうところにどれだけのお金を使うべきなのか、その人にアドバイスする職

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【現代①】『白い艦隊』~黒船の来航、そして「白船」の来航~

【現代①】『白い艦隊』~黒船の来航、そして「白船」の来航~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『白い艦隊』表紙より

 様々な歴史ものマンガを世界史上の背景とともに見ていく「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」。先史から始まった本書の長い旅は、28記事目にしてついに「現代」にたどり着きました。

 といってもいきなり21世紀に跳ぶわけではなく、本書では20世紀、すなわち1901年以降を「現代」とカテ

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【近代・後⑤】『ふしぎの国のバード』~日本が「世界史」の舞台へ上がるとき~

【近代・後⑤】『ふしぎの国のバード』~日本が「世界史」の舞台へ上がるとき~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『ふしぎの国のバード』1巻表紙より

 前後編に渡った近世の章も今回で最後です。

 長い中世を抜けて市民革命と産業革命を経たヨーロッパは大きく力を付け、19世紀の後半にもなると、そこには現代の生活にも似た「石油」と「電気」で支えられる華やかな消費活動が姿を現すほどになっていました。しかし、その生活はアジア・

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【近代・後④】『守娘』~中国最後の帝国の繁栄と、そこにあった社会不安~

【近代・後④】『守娘』~中国最後の帝国の繁栄と、そこにあった社会不安~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『守娘』1巻表紙より

 近代の章も、前後半番外編を合わせますとこれで12作品目です。

 特に近代後半の章ではここまで主に欧米の歴史を追ってきましたが、直前の『ハイパーインフレーション』の記事で、ようやく本書はこの時代の「欧米以外」のすがたに言及できたことになります。すなわち、近世の欧米は市民革命と産業革命

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『よふかしのうた』完結によせて ~異なる世界を見つめるそのまなざし~

『よふかしのうた』完結によせて ~異なる世界を見つめるそのまなざし~

※ サムネは『よふかしのうた』20巻(完)表紙より。

0. はじめに 『よふかしのうた』を全て読み終わりました。非常に見どころの多い、素晴らしい作品だったと思います。

 個人的にいわゆる「日常系」(死語・・・?)にあたるような作品を読むことがほとんどなく、少なくとも序盤は主人公・コウとヒロイン・ナズナの何でもない夜の日常を描くこの作品に対し、当初はあまり入れ込んでいませんでした。
 しかし、登

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【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~

【番外編③】『ハイパーインフレーション』~ナショナリズム、帝国主義、経済戦争~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『ハイパーインフレーション』1巻表紙より

1.市民革命、国家統一運動、ナショナリズム 本書3回目の番外編です。とりあげたい時代・地域に当てはまる歴史ものマンガが見当たらない場合、似たような舞台設定のフィクション作品を紹介する「番外編」によってここまで凌いできたわけですが、今回とりあげたいのは、19世紀末から

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【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~

【近代・後③】『河畔の街のセリーヌ』~革命後のフランスの混迷と成熟~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『河畔の街のセリーヌ』1巻表紙より

1.フランス革命のその後1―1.漂流するフランス 近世前半(近世)から後半への移行をもたらした「市民革命」。これを先んじて担ったのは、王を処刑し主権を市民へと移行させていったイギリスとフランス、そしてそのイギリスから独立し、初めから「王がいない国」として誕生したアメリカで

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【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~

【近代・後②】『エマ』~産業革命がもたらした新たな英国社会と、「身分差」の意味~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『エマ』1巻表紙より

 英仏における市民革命と、前記事の『片喰と黄金』で見た超大国アメリカ合衆国の誕生。
 これまで見てきた歴史上の世界は、例えば「王様」がいたり、農業が主な産業だったりとまさに「昔の世界」であったわけですが、この2つの大事件をもって、世界は急激に私たちのよく知るすがたへと変貌を遂げていくこ

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【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~

【近代・後①】『片喰と黄金』~アメリカ合衆国の幼年期、その光と影~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『片喰と黄金』1巻表紙より

1.近代前半・後半の境界線 本書はここから近代後半の章に入ります。

 近代前半の章の冒頭で、近代の前半を指す「近世」という言葉について説明しました。「中世が終わったらいきなり近代的な時代が生まれたのではなく、その移行期にもまた一つの独自性を持つ時代があったのではないか?」との主

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【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~

【近代・前⑥】『第3のギデオン』~「父殺し」としての市民革命~

※ 本記事は記事シリーズ「あのマンガ、世界史でいうとどのへん?」の記事です。
※ サムネは『第3のギデオン』1巻表紙より

1.権力の転々 「織田がつき 羽柴がこねし天下餅 座りしままに 食うは徳川」という有名な歌があります。

 16世紀、日本はそれまで国を束ねていた室町幕府が弱体化・崩壊し、長い内戦期に入ります(いわゆる「戦国時代」)。
 この分裂状態を最初にまとめにかかったのはかの織田信長で

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