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“ドイツ・ロマン派のポエジー”って?
今日、さる文藝評論家氏と話していて何かの拍子に“ドイツ・ロマン派のポエジー”という言葉を使ったのだが、自分の言葉ながら「それっていったい何なのかしらん?」とひとしきり首をひねってしまった。
もちろん「ドイツ・ロマン派の美学的定義とは」なんていう話に入り込む気は元より私にはなくて、自分が「ああ、これぞドイツ・ロマン派!」と感じる表現の質や人間的属性とは何なのだろう……ということでしかないのだが
「バッハはこうだ」という揺るぎない感覚
とある雑誌の編集作業が追い込みで、普段怠け者の小生が珍しくも労働させられて疲労困憊だったが、大詰めの難所を突破したところで今日はエアポケットのように何もすることがない時間が取れた。それで聴いているのがこれ。ランドフスカのバッハ《ゴルトベルク変奏曲》1933年録音。
誰も知らなかった、あるいは存在は知っていても聴いたことは一度もなかったバッハの秘曲を蘇らせ、世界に紹介した最初の録音として名高い
《本物》の「バイロイトの第九」
今年も、YouTubeのマイチャンネルで年末恒例「フルトヴェングラーの第九祭り」を開始。その一環として、バイロイトの第九の最初期盤の一つである東京芝浦電気/エンジェル・レコード HA1012/1013から収録した音声を公開した。昭和三十一年二月、我が国では最初のリリースで、昨年の暮れに幸運にも入手できた《重要文化財》クラスのレコードである。
この最初版レコードには、後年のLPやCDに聞かれる
《忘れられた》初録音
フルトヴェングラーが手兵ベルリン・フィルを率いて独ポリドール社との初めての録音セッションに臨んだのは96年前の今日、1926年(昭和元年)10月16日のことである。この録音時、40歳という若さですでにトスカニーニと並び称されるスーパースターとなっていたフルトヴェングラーが満を持してレコード・デビューを果たす機会。しかも吹き込む曲目はドイツ音楽の真骨頂、ウェーバー《魔弾の射手》序曲とベートーヴェン
もっとみる“ブラームスはお好き?”――いえ、もう沢山です
私は若い頃からブラームスが好きで、あれこれの曲をさまざまな演奏、録音で聴いてきた。今もそうなのだが、若い頃と比べると(当たり前のことだが)聴きたい曲の趣味・嗜好が幾分変わってきたように思う。
昔好んでよく聴いたのは、交響曲第1番、2番、4番、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第2番、ヴァイオリン・ソナタ第1番、2番、ピアノ・トリオの1番といったところだろうか。ご覧の通りその大半が通俗とは言わな
ビジュアル・リリックプレゼンテーション「春風」
拙詩集『ソナタ/ソナチネ』収録の作品「春風」を素材に、動画クリエイターの橋本美千夫さんが素晴らしいビジュアル・プレゼンテーションを制作して下さった。
「ビジュアル・リリックプレゼンテーション」なる覚えにくい名称はどなたも初耳だろうが、ただの私の思い付きである。
このまるでセンスのないネーミングはともかく、詩作品を立体的に表現する試みとして、オリジナルの《文字》そのものが持つ表現力と、人間
「ルガーノのフルトヴェングラー」復刻顛末記
このところ多事多端で音楽を聴く時間もその意欲もない索漠たる日々が続いていたが、それもようやく一段落し、私のささやかな趣味であるアナログレコード(LP盤やSP盤)の復刻をこのところいくつか手掛けている。
今回ご紹介するのは日本Cetra SLF 5017/8「ルガーノのフルトヴェングラー」という音盤。1954年5月15日にフルトヴェングラーとベルリン・フィルがスイスのルガーノで行ったコンサート
架空の終曲~リパッティのブザンソン告別リサイタル
(*筆者より――このエッセイは、筆者が以前やっていた音楽ブログ「夜半のピアニシモ」に掲載した、2012年8月24日の記事からの再掲です。現状に適合しない記述も一部ありますが、訂正は施していません。)
前回に続きリパッティの音源を公開する。今回は有名すぎるくらい有名な、1950年9月16日ブザンソン告別リサイタルの実況録音。この年代としてもいちじるしく音質が貧しいことで知られているが、何度も版を
覚書
詩が書けるようになる秘訣に、何も特別なことはありはしない。
言葉の気持が分るようになるまで、徹底して言葉に親しみ、言葉と付合い続けることだ。
言葉は決して己の思い通りになどなりはしない。
言葉の思いとこちらの思いが調和し、一致するようになるまで言葉と付合った末に詩は生まれる。
”大時代”の演奏~ギーゼキング、メンゲルベルク、アムステルダム・コンセルトヘボウのラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
私はピアノ協奏曲ではブラームスとラフマニノフが大好きで、モーツァルトやベートーヴェンよりも好んできく。チャイコフスキーの1番などは五分もきいていると退屈してきて「もう、よくわかったからさっさと次に進んでくれ」という気分になるのだが、ラフマニノフならいつまででもその音楽の中に身を委ねていたくなる。
残念なのは、満足の行くレコードが少ないこと。この曲はLP時代にアメリカで流行っていたようでやたら
”マドモワゼル・ルフェビュールの曲”~ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲
20世紀前半を代表するベートーヴェン演奏の大家で、ドイツ・ピアノ界の至宝と言える名人だったヴィルヘルム・ケンプが「あなたはどうして《ディアベリ変奏曲》を弾かないのか」とあるインタビューで尋ねられた際、こう答えたそうである。「ああ、あれはマドモワゼル・ルフェビュールの曲だよ」。
このところフランスの大女流ピアニスト、ルフェビュールの名演を紹介しているが、この女傑はラモー、クープラン、ドビュッシ
モーツァルトの”衝撃”――ルフェビュールとカザルスのニ短調ピアノ協奏曲
フランスの大ピアニスト、イヴォンヌ・ルフェビュールが弾いたモーツァルトのピアノ協奏曲第20番といえば、前回ご紹介したフルトヴェングラーとの共演があまりにも有名なのだが、こちらはほとんど知られていない。かなり以前にCBSソニーからCDが出ていたが、とうに廃盤になっているし話題になることもない。そのCDは実に酷い代物で、過剰なノイズフィルターで楽音が完全に潰れ、全く死んだ音になっていて、これでは演奏
もっとみるルフェビュールとフルトヴェングラーのモーツァルトK.466
その筋のファンにはあまりにも有名な演奏だが、フルトヴェングラーがフランスの大女流イヴォンヌ・ルフェビュールと共演したモーツァルトのピアノ協奏曲K.466を私のYouTubeチャンネルに公開した。1954年5月15日、スイスのルガーノでのライブで、フルトヴェングラーが残した最高のモーツァルト演奏と評価されているもの。
フルトヴェングラーとベルリン・フィルが戦後に残した録音の中では、ヴィ―スバー