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心象空間 エッセイ・小説

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エッセイは日常の出来事に触れ感じたことを心のままに、書き連ねています。 小説は頭の中のモヤモヤを言葉にする作業です。
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#日記

〈短編小説〉 私の中学生日記

〈短編小説〉 私の中学生日記

授業のチャイムが鳴った。
もう先生は教室に入ったかな、と頭の隅で考えつつ、今は目の前の昼食を選ぶことが私の優先事項だった。

パンが好き。
メロンパン、いちごクリームパン、牛乳パン、チーズパン、‥ああ。目移りしてしまう。けれどやっぱり大きなハム入りのサンドイッチだな。

売店のおばちゃんが「そろそろ授業始まるんじゃないの」というような目で私を見たけれど、私は知らんぷりした。

どうして大人の言うこ

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私にとっての絵と詩

私にとっての絵と詩

今月は、幾作品か絵を描き終えた。
ただ私の場合、絵を描き終えて「さぁ完成だ」とはならない。

絵に何か一言書き添えたくなって、早起きした朝は描いた絵と向き合い頭に浮かぶ言葉を書き留めていく。
それがいつも、「詩」という形で完結する。

詩は、描き終えた絵をぼーっと眺めながら心に浮かんだ言葉を紡いでゆく。
それはまるで、言葉の煌めく小さな星屑を組み合わせるかのよう。

広い集めては繋ぎ、外しては別の

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行方不明になった右手

行方不明になった右手

今朝、妙な感覚を得た。

手が、ない。

右手で自分に毛布をかけようと思ったその手が、行方不明になったのである。

どこに行った?

起きて間もない私はぼんやりしつつ、スマホを無くしたとき自宅電話から音を鳴らしてスマホを見つけたやり方で、指をパラパラ動かして音がしたらいいなと思いつつ指令を出した。

指よ、動け。

頭の上の方で、畳の上に小さなビー玉がたくさん転がるようなパラパラ音がした。

指が

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