行方不明になった右手
今朝、妙な感覚を得た。
手が、ない。
右手で自分に毛布をかけようと思ったその手が、行方不明になったのである。
どこに行った?
起きて間もない私はぼんやりしつつ、スマホを無くしたとき自宅電話から音を鳴らしてスマホを見つけたやり方で、指をパラパラ動かして音がしたらいいなと思いつつ指令を出した。
指よ、動け。
頭の上の方で、畳の上に小さなビー玉がたくさん転がるようなパラパラ音がした。
指が5本、何か別の生き物のように動いていた。
あった!
頭の上の方に転がっていた。
右手の感覚が少しずつ戻っていく。
どうやら寝返りを打ったとき体の下敷きになって、右手が痺れ、完全に麻痺していた。その状態で上にバンザイする格好で、移動していた。
だから腕を動かそうにも全く動かず、かろうじて指だけが生きていた。
私は戻ってきた右手をじっと見つめ、しばらく動けなかった。
そこに在ることが当たり前で、ものを取る、持つ、移動させる、字や絵を書く、鍵盤をたたく、パソコンのキーボードを打つことが至極当然のように思えていたものが突然できなくなるかもしれないと感じた怖さ。
同時に、こうして今、私の目の前にあって希望通りに動き、願いを叶えてくれる不思議な奇跡。
隣で眠っている子供に、そっと毛布をかける。
私の手よ、ありがとう。
今日もよろしく…!
と小さく呟いた。
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